FC2ブログ
 
  カロ歳時記

        saison de karo 95


                          滅びへの音がどこかに花の闇    山上樹実雄                           

                                       桜の園01
        



          トロフィーモフ  領地がれようとれまいと、同じことじゃありませんか。

                    あれは、もう、とっくに縁が切れて、いまさら元へは戻りません。

                     昔のですよ。

                      気を落ちつけてください。

                       奥さん、いつまでも自分をごまかしていないで、せめてでも、

                         をまともに見ることです。


                                             チェーホフ 『



                          チェホフ2

                                 アントン・チェーホフ            

           

            桜の園9



                  桜の園0



          ラネーフスカヤ  

                         そりゃあなたなら、どれが真実でどれがか、はっきり見えるでしょうけれど、

                         わたし、なんだか眼がんでしまったみたいで、何ひとつ見えないの。

                   あなたはどんな重大な問題でも、勇敢にズバリと決めてしまいなさるけれど、

                   どうでしょう、それはまだあなたがくって、

                         何ひとつ自分の問題をしみぬいたことがないからじゃないかしら?

                         ・・・・どうぞ、わたしをに見てちょうだい。



                     桜の園4




              だってわたしは、ここでまれたんだし、

                   お父さんもお母さんも、お爺さんも、ここに住んでいたんですもの。
 
                       わたしはこの家がしんから好きだし、のないわたしの生活なんか、

                  だいいち考えられやしない。

                     どうしてもらなければいけないのなら、

                        いっそこのわたしも、庭と一緒にってちょうだい。
    
                                                『


 

                          桜の園2


                                                     桜の園5
                                                     
                       サモワール ロシア風お茶はとっても濃い・・・




              「」は、チェーホフの代表的な戯曲。

                  地主のラ―ネフスカヤは、のまま年老いたような女性。

                      領地の管理に失敗し、破産に瀕しても、彼女が考えているのは、

                          パリに残してきたのこと。          カロ


                                                    


                           桜の園3

                        『忘れえぬひと』  クラムスコイ



                 桜の園02



        夫人のアーニャは大学生トロフィーモフに惹かれつつ、

        「自分がしっかりしなくちゃ。」と母を抱えた自活を模索。


              農奴から身を起こしたロパーヒンは、金の力でを買い取り、時代のとなりますが、

              夫人の養女ワーニャとのはすれ違うばかり。




                          桜の園01


                          ティー ジャムをいれて香り高く・・・




                    桜の園05

            


        小間使いドゥニャーシャはパリ仕込みの従者ヤーシャにかれ、

        彼女を心からしてくれる事務員エピホードフの気持ちに気付きません。


             愛してわれない人、愛しているつもりの人、

             挫折をれる人、挫折に気付かない人・・・。

        
                   ロシア人名がする物語の中、

                      登場人物すべての気持ちはかみ合わず、行き違います。



                  桜の園03




                          桜の園7

                    おなじみボルシチ

        

                    一人幸せになれる者はなく、

                       買い取られた土地の美しい桜の木が伐採されてゆく音の中、

                         が下ります。
                                                 カロ

                                  

                                         桜の園4


                           は見ることができなかった夢なのです。
                                                     チェーホフ                             桜の園1
                                       
                                         
カロ歳時記

    saison de karo 94


                                    ひえびえと人を見ている桜かな   中村克子


                 桜満開5




      近頃はの木の下といえば人間がより集まってを飲んで喧嘩していますから、

         陽気でにぎやかだと思い込んでいますが、

            の花の下から人間を取り去ると怖ろしい景色になります・・・。


                                             坂口安吾  『の森の満開の下』



                          桜満開3


                         

                       、鈴鹿峠も旅人がの森の花の下を通らなければならないような道になっていました。

                    の季節になると、旅人はみんな森のの下で気が変になりました。




                 さくら2


                 やがての森は街道を外れて人の子一人通らない山の静寂へとり残されてしまいました。


                  満開 業平 中将
                          

                       


                      さくら


                                                 

      この山に一人のが住み始めましたが、

         このはずいぶんむごたらしい男で、街道へ出て情容赦なく着物をはぎ人の命も断ちましたが、

            こんな男でもの森の花の下へくるとやっぱり怖ろしくなって気が変になりました。




                  満開3


         の下では風がないのにゴウゴウが鳴っているような気がしました。

            そのくせ、がちっともなく、一つも物音がありません。

               自分の姿と足音ばかりで、それがひっそり冷たいそして動かないの中につつまれていました。

            
                       満開2
                


       始めはひとりだった女房がもう七人にもなり、

       八人目の女房を又、街道からの亭主の着物と一緒にさらってきました。

       の亭主は殺してきました。



                     満開1



           を恋いました。

            「お前が本当に強いなら、私をへ連れて行っておくれ。

              そして私にシンから楽しい思いを授けてくれることができるなら、お前は本当に強いなのさ。」

           「わけのないことだ。」

              へ行くことに決めました。

                ひとつだけ気にかかることは、まったくに関係のない別なことでした。

                   それはの森でした。


                         満開5



                      
         二日か三日の後に、の満開が訪れようとしていました。

           今年こそ、彼は決意していました。

              の森の盛りのまんなかで、身動きもせずジッと坐っていてみせる。

                  あと三日、彼は出発を急ぐに言いました。




                     増女


               女はをよせました。

               「じらさないでおくれ。が私をよんでいるのだよ。」
   
               「それでもがあるからね。」

               「お前がかえ、この山奥にした誰がいるのさ。」

               男はがつけなくなりました。


                                能面



                   「の花が咲くのだよ。」

                       「の花としたのかえ。」

                           「の森の下へ行って見なけらばならないからだよ。」

                               「なぜ、行ってみなければならないのよ。」

                   「が咲くからだよ。」


                                                                  桜満開1
                   

             男は、の花の下へ歩きこみました。

                       あたりはひっそりと、だんだんたくなるようでした。

                             彼はふと、女の手がたくなっているのに気が付きました。


                       般若


                      に不安になりました。

                         とっさに彼は分りました。

                     であることを。

                  突然どっという冷たいが花の下の四方の涯から吹き寄せていました。



                                               『の森の満開の下』


                                満開6

カロ歳時記

 saison de karo 93

                      指に移る切符のインク雁帰る  川島謙一               

        
             自由1

         


                久しぶりに新幹線の切符を買いに

                ぶらぶら駅まで出かけたが

                希望する日の指定席は売り切れなので

                自由席を求めた

                                            暮尾淳  『自由席』





                    自由5



                        自由席とはいっても

                        満席の場合には

                        立ちんぼで行く自由だが



                         東京駅2



               

           自由12これ                       



                    自由10




          自由9




                        制限なしのなど

                        この世にはないことを知ったのは

                        広い空を自在に飛ぶ鳥も
   
                        に降りると重たげに歩く

                        その心もとない姿を見ながら

                        人気のない海辺

                        り考えた十五のときで




                             自由2

                  




               自由13





                しかやりたくないことは

                               できるだけしないできよう




                      自由3




                     そんなちっぽけな自由

                     次第に失職や世間の目にえて

                     貫くことはできなかった




              自由1




                      指定の上にはグリーン席がある

                      つましい生活の習いで

                      そのことを亡失していたおれは


                      翌日また駅にでかけ金を払い

                      自由席を手放した


                                                  『自由席』





                   自由5






 
   カロ歳時記

       saison de karo 92


             
                        花束に埋れ罪障なきに似る 三谷昭
  


                       花束1

               



         日曜日に玄関のチャイムが鳴って、近所の将棋仲間だろうと思ってドアを開けたら、

           花束を持った外国人の若いが立っていた。

              その男が、

                 「こんにちは、ぼく、ミチコの友達、アントニオです。よろしく。」

                    と、たどたどしい日本語で言って手を出した。




                          花束12





           私はを呼びました。

             家内が出てきて、

              「あら、アントニ君ね、はじめまして。ミチコがいつもお世話になってます。」

                 私の知らないの名を親しげに呼ぶのです。


                    彼は家内に、
 
                       「これ、お母さんに。」

                          と花束を差し出しました。
   


                     おめでとう



         すると家内は、
 
            「あらまあ、私に?」

               今まで聞いたこともないようなやかな声で言ったんですよ。

                  ミチコがゆっくりとでてきました。

       
             は、子供の頃の病気で、片脚を切断しまして義足を着けていましてね、

                      くのが不自由なのです。



                           花束9





       「ミチコ、今日はいい天気だ。散歩に行こう。」と彼が言いますと、

          「ちょっと上がったら。」

             「そうよ、せっかくいらしたんだから、どうぞどうぞ。」

                家内は、私の意向を確かめもせずに言うのです。

                   これは俺のだ、とは申しませんが、少なくとも、私のでもあるわけです。



  花束7




                         花束6




        ミチコは自分の作ったケーキを出しました。

        彼はまだ甘いものを食べたい盛りの子供のように、コーヒーをミルクと砂糖をたっぷり入れて、

        ケーキもふたつ食べて、おいしいおいしいと、ほめそやすのです。


                        花束8


            はイタリア人で、電子技術の勉強をするために日本に来て、近くのビルの夜警をしながら、

             専門学校へ通っていました。

               ステッキをついて歩くミチコと道で会って、

                 のほうから声を掛けて、一緒に歩くようになったのだそうです。




                                 花束3





         それから、とミチコは散歩に出かけました。

              「あのふたりはどんな関係なんだ。」

                私はふたりが出ていった後、家内に言いました。
 
                  「ご覧になった通りでしょ。」

                     「お前、心配じゃないのか。」

                        「あなた。」

                    家内は私の顔をじっと見ました。

         「日本の男の子なら安心?日本の良い家の男の子なら、ミチコせにしてくれると思うの?」




              ガーベラ2




           ある日、私が会社から帰ってくると、が家にいて、ミチコと二人で台所をやっているんです。

           家内はテーブルに肘をついて、

           「若い男の子が料理しているのを見たことがないから面白いわ。」



                          花束5





       何という料理だったか、西洋風炊き込みご飯のようなもので、なかなか旨かったです。


       皿洗いも、はまるで当家の息子のように、

       ミチコと妹のチカと三人兄妹のようにやって、コーヒーを飲んだら帰るかと思っていたら、

       「今日、ぼく泊まります。」

       私に言うのです。



                         花束10
                     




           「今日アントニオ休日なの。泊めてあげていいでしょう。」とミチコ

           「歯ブラシ、タオル、持ってきました。」これはアントニオ

           「泊まりますと言っても、、家の娘はなんだよ。」

           私が言いますと、

           「の娘なんていないよ。」

           チカがにやにやして言いました。


              「イタリアでは、よく友達の家に泊まります。」
  
              「ここは日本だよ。」


                 「あなた、ちょっと。」

                 家内が私を隣りの部屋へ連れて行きました。

         「ミチコはね、彼とくようになってから、ステッキなしで外をけるようになったんですって。

          ミチコと同じよいうにゆっくりいてくれて、苛立ちもしないし、ミチコも安心してやっていけるんですって。」



         その夜、は我が家に泊まりましたが、

         私は夜中に二度、トイレに起きて、居間のソファにアントニオが寝ているのを確かめました。



                           花束11




       アントニオは専門学校を卒業して、イタリアへ帰りました。

       ミチコはイタリア語の勉強をしています。

       文通も続いているようです。



                           花束




       「アントニオに会いたいのか?」

       ミチコに聞いてみました。

       「うん、会いたいけどさ。」

       は湿り気のない声で言いました。

       「アントニオみたいな人が育ったって、どんなところか、行ってみたいんだ。

        私ね、ゆっくりしかけないでしょ。

        なんだか、早くけない理由を説明するためにステッキにすがっていたような気がする。

        でも今はね、ゆっくりけばいいんだって、それでいいんだって、思えるようになったの。

        アントニオが自然にそういうことを私に教えてくれたのよ。

        そういう人が育つへ行ってみたいんだ。」

                                      干刈あがた 『花束』



        
           闃ア譚滂シ農convert_20140116002836




                                      ねこ草


                                はまだかニャ
  カロ歳時記

      saison de karo 91



          雛の軸おぼろ少女と老女寝て 原裕



                           ひな4



                            ただぎにぐるもの。

                            かけたる舟。

                            のよはひ。

                               

                                              『枕草子』



                  っと言う間にぎるもの。
                                  
                                 船。齢。季。



                              ひな3

                                                  
                     時間経つのってホントに早いワ   





        うつくしきもの。二つ三つばかりなるちごの、急ぎて這ひ来る道に、いと小さきのありけるを

        目ざとに見つけて、いとをかしげなるにとらへて、大人などに見せたる、いとうつくし

        頭は足そぎなるちごの、目にのおほへるを、掻きはやらで、うち傾きて、物など見たるも、うつくし



                              


                 ひな7




        の調度、の浮葉のいと小さきを、池より取り上げたる。


        何も何も、さきものは皆うつくし


                                  


               ひな2




        かわいらしいもの。二、三才の子供の、急いで這ってくる途中、小さな塵を見つけ、に取って、

           大人に見せたりするのは、とってもかわいい。

              い子が、のあたりで切りそろえたが、目にかぶさるのを掻き上げもしないで、

                 首をかしげて、ものを見ているのも、かわいい



                          人形2



            雛のお道具、蓮の小さな葉を水面からすくいあげたもの、小さいものはみんなかわいい・・・。





                   ひな8




                   ひな5




               くるしげなるもの。

               泣きといふわざするちごの乳母。

               思ひ人二人もちて、こなたかなたふすべらるる

               わりなく物疑ひするに、いみじう思われたる

                                                     『枕草子』


                   享保雛6



                         つらそうなもの。

                         夜泣きするあかんぼうの乳母。

                         愛人がふたりいて、双方からやきもちをやかれる男。

                         い深い男に、心底思われた女。


                         ひな1




              ひな6

                          伝 納言  『枕草子絵巻』                   





                              ひな9