Chat du mois 今月の

Chat avril 四月のねこ

夢のはじめも夢のをはりも花吹雪
 渡辺恭子

蹴鞠8

御階の間にあたれる桜の蔭に寄りて、人びと、花の上も忘れて心に入れたるを、
大殿も宮も、隅の高欄に出でて御覧ず。

ねこ 桜


唐猫のいと小さくをかしげなるを、すこし大きなる猫追ひつづきて、にはかに御簾のつまより走り出づるに、人々おびえさわぎてそよそよと身じろきさまよふけはひども、衣の音なひ、耳かしがましき心地す。

ねこ あかちゃん


綱いと長く付けたりけるを、物に引きかけまつはれるを、逃げんとひこじろふほどに、御簾のそばいとあらはに引き開けられたるを、とみに引きなほす人もなし。

すこし入りたる程に、袿姿にて立ち給へる人あり。紅梅にやあらむ、濃き薄きすきずきにあまた重なりたるけぢめ花やかに、草子の端のやうに見えて、桜の織り物の細長なるべし。

100パーセント2

御髪の裾までけざやかに見ゆるは、糸をよりかけたるやうになびきて、裾のふさやかにそがれたる、いとうつくしげにて、七、八寸ばかりぞ余り給へる。
御衣の裾がちに、いと細くささやかにて、姿つき、髪のかかり給へるそばめ、言ひ知らず貴にらうたげなり。

わりなき心地の慰めに、猫を招きよせかき抱きたれば、いとかうばしくて、らうたげにうち鳴くもなつかしく思ひよそへらるるぞすきずきしや。
                               源氏物語『若菜』


蹴鞠1



櫻のはらはらと散る昼下がり、宮中では貴公子たちが集って蹴鞠の宴が催された。姫君、女房方も帳の影から、お目当ての殿方の御姿を一目見ようと縁近くまでお出ましになる。


蹴鞠10


と、その時、唐渡りの仔猫と、その後を少し大きな猫が追って、二匹が御簾のなかから走り出た。

ねこ 桜2


女官たちは驚いて右往左往、さわがしい衣ずれの音が聞こえてくる。
猫の首にかけられている長い紐が何かに掛かって、御簾の端が持ちあがってしまったのだ。室内の女人方の様子は丸見えだが、皆逃げ回るばかりで、誰も直そうとする人はない。

蹴鞠6


蹴鞠衆のひとり太政大臣の子息柏木の君がふと見ると、御簾の陰に袿姿で立っておられる女人がある。お召しになった内衣は紅梅色の濃淡、紙を色とりどりに重ねた草紙を横から眺めているよう。上着は模様を織り込んだ櫻色、その花やかなこと。


蹴鞠4


髪は身の丈より七、八寸も長く、ふさふさと切り揃え、糸をより合わせたように豊かに垂れている。お召し物の端が余るほどに小柄でほっそりとした容姿、髪のはらりとかかった横顔も、言いようもなく気高く可憐である。

源氏の君の年若い奥方にちがいない・・・・。

やがてその方はそっと奥へ入っていってしまわれた。

蹴鞠11




・・・・・もう一度お顔が見たい。
柏木はぼんやりと立ちつくす。

気がつくと、先ほどの猫が紐を解かれ、足もとにいるではないか。やるせない心を紛らそうと猫を抱きあげれば、よい匂いがして、ひとなつこく鳴くのも、まるであの方ご本人のような気がして、手放し難く思うばかり。

                                        カロ訳


蹴鞠9

お騒がせしました・・・・。ねこ


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こんにちは from ovni | URL | 2012/04/13 Fri 18:32 [EDIT]
わたくしごとですが、昨年ほぼ1年かけて源氏の原文を読了しました。

面白かったです。もう2,3回読みたいとおもっているところです。

カロさんは、仏語も、古文も、すごいですねえ~
源氏物語讃 from カロ | URL | 2012/04/13 Fri 22:31 [EDIT]
ovniさま

 源氏物語が好きです。

 夕顔が死ぬところがオカルトで好き。

 空蝉に拒絶されて苦しむところがリアルですごい。

 若宮が生まれ、産褥の葵の上と夫婦らしい言葉を交わすところも
 
 いじらしい。葵はすぐに亡くなってしまいますが・・・。

 源氏のお話もいろいろしたいですね

                           カロ

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