saison de karo 47

てのひらの上で土筆は苦しめり 上月章

つくし

つくし尽くし・・・つくしフルコース

つくし7

つくしの酢の物


今年の春も、夏美からツクシ摘みに行こうと誘いがかかった。
もうスーパーで軍手やビニール袋も買い揃えたので、次の土日くらいはどうだろうと張り切っていた。
メンバーはいつもの顔ぶれ。



つくし10

つくしの卵とじ




福岡市内を抜けると山地へ入った。
山はどこも春の色に着替えてふわふわと浅緑の皮をかぶっている。
柔らかな絨毯の襞を滑って車は走った。
折重なるようにかぶってくる山がときどき真っ黒に焦げている。山焼きをしたのだ。
春風に焼きおむすびみたいな山がごろんごろんころがって、焦げ目の隙間から青い草が噴き出している。もうしばらくするとワラビやゼンマイが生えてくるのだ。
ワラビ、ゼンマイは採りはじめると欲が出てきりがなくなるので、一泊二日のドライブを兼ねた遊びには向かず、わたしたちにはせいぜいツクシが手頃だった。
通りはコブシの木が一斉に白い花を咲かせているが人通りはほとんどない。


こぶし

わたしたちの車だけがコブシ通りをゆっくり登っていった。この一瞬、ここにあるツクシは全部自分たちのものだ
というあさましい喜びが湧く。

「ツクシ、見えないわねえ。」
例年ならもうそこらじゅうツクシの集会がはじまっているところだ。
作物には裏年というのがあって、ツクシにも当てはまるが、それにしても一本も見当たらないのはどうしたことか・・・。


斜面の下のほうで夏美のかかんでいる姿が見えた。少しはツクシを見つけたのだろう。手にしたビニール袋へ入れている。登志子も雪子もたまに手を動かしている。なんとか明朝の味噌汁の実になるくらいのツクシが採れていた。

夕方、台所で夏美はヒレステーキを焼き、わたしはツクシの卵とじの代わりにほうれん草のごま和えを作った。雪子が蜆の味噌汁を作る。登志子は向うのテーブルで明日の朝の味噌汁に入れるわずかなツクシのハカマを取った。
ハカマを取ったツクシを洗って沸騰した湯の中に入れた。たちまちパッと鍋の中が濃い緑色に変わる。一握りに満たないのに毒薬のような凄い色である。

つくし4

 つくしのお寿司       つくし9つくし3

つくしのパスタ



その晩はツクシこそ食卓にでなかったが、みんな山の夜の静けさに身を投げ出すようにしてくつろいだ。

雪子が持ってきたワインをグラスに注いだ。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「何かあったの?・・・」
夏美はすすり泣いた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



翌朝。
朝食は夏美と雪子が作った。ツクシの味噌汁と眼玉焼きとサラダ、それに途中で買ってきた魚の干物を焼いたのがテーブルに乗った。
食事がすむと帰り仕度になる。
台所の片づけや掃除、布団カバーの洗濯などをすませないといけない。
私は庭の掃除をするためにサンダルを履いて外へ出た。

夜露に湿った草の上にふつふつと浮いて見えるものがある。

ツクシ
だった。
昨日は一本もなかった庭土にびっしりとまるで魔法をかけたようにニョキニョキと頭を出していた。ツクシたちは朝日の下に何か神々しいような針みたいな細い影を流している。

「ツクシの大軍よ!!」

みんな信じられないような顔をして外へ出てきた。

「外の通りはどうかしら。」

舗装路の端にもツクシの頭が並んでいた。

無人の家の玄関や軒下、窓の下の地面にも小さな頭が集まっている。

「何だか、私、拝みたくなってきたわ。」

「何を拝むの。」

「それがわからない。」


                      村田喜代子『土筆女』




つくし8

つくしの砂糖づけ

おなかいっぱい

つくし2
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