saison de karo 35

女星から光りはじめて哀れなり 田中竹南

夜空2

かく言ふほどに、七月になりぬ。
七日、すきごとどもする人のもとより、織女、彦星と言ふことどもあまたあれど、目も立たず。かかる折りに、宮の過ごさずのたまはせしものを、「げにおぼしめし忘れにけるかな」と思ふほどにぞ、御文ある。見れば、ただかくぞ、

思ひきや七夕つ女(め)に身をなして天の河原をながむべしとは

とあり。
「さは言へど、過ごし給はざるめは」と思ふもをかしうて、

ながむらん空をだに見ず七夕に忌(い)まるばかりのわが身と思へば

とあるを御覧じても、なほえ思ひはなつまじうおぼす。

                                   「和泉式部日記」

和泉式部


恋人の宮さまからの便りも滞りがちのまま、七夕の日を迎えた。
つまらない男たちからはくさぐさの挨拶が寄せられたが、肝心のあの方からは何の音沙汰もない。こうした折りには心のこもったお手紙を下さったものなのに、もう私のことは忘れておしまいになったのかしら・・・。と思っていたところに、待ちに待った便りが着いた。
そこには、一首のみ、

私の心持ちは織姫のようです。なかなかお会いできない身の悲しさを夜空を仰いで嘆くばかり・・・。

と書いてあった。
「忘れてしまっておられた訳ではないのだわ」・・・嬉しい。お返しの歌に

空さえ見えませんわ。年の一度の逢瀬もかなわず、あなたからは嘆かれる身なのですもの。お待ちするだけの私を哀れとおぼしめして・・・。

と書いて託した。

あの方はきっと、私から離れ難く思ってくださるに違いない。              カロ訳


七夕2

式部さんの純情と思い込み、御見事。

この日の空は晴れていたのか、曇りか雨だったのか、何も記してありません。 カロ

竹の秋



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