saison de karo 24

瀬に下りて目玉を洗ふ雪女郎 秋元不死男

雪


顔にさつと雪があたつたのに驚いて、巳之吉は目を醒ました。知らぬうちに、戸口が無理に押しあけられてゐる。ふと見ると、雪明かりに、一人の女が小屋の中に立つてゐるのである。女は白装束をしてゐる。・・・巳之吉はこゑをたてようとしたが、どうしたのかこゑがでない。白い女はだんだん巳之吉の上に屈んできて、もう少しでその顔がふれさうになつた。女は暫くじつと見入つてゐたが、やがてにつこりと笑つて、こんな事を囁いた。
「なんだかたまらなく可愛さうになつて来たよ。・・・お前は可愛い子だね。もう悪戯はしないよ。・・・今夜お前が見たことは誰にも言つてはいけない。言ふとちやんとわたしに分かるよ。さうしたら、わたしやお前を殺してしまうよ。いいかえ、わたしの言ふこと、よく覚えてお置き。」
女はもうどこにも見えなかつた。
ただ雪が烈しく小屋の中へ降りこんでゐるばかりである。
          
 小泉八雲  「怪談」

雪の結晶2




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