カロ歳時記
saison de karo 193
摘み足してみても淋しき野菊かな 黒川悦子
yonyosama
まアきれいな野菊。 政夫さん、・・・私ほんとうに野菊が好き。
僕はもとから野菊が大好き。 民さんも野菊が好き。
私なんでも野菊の生まれ返りよ。
野菊の花を見ると身振いの出るほど好もしいの。 どうしてこんなかと、自分でも思うくらい。
民さんはそんなに野菊が好き・・・道理でどうやら民さんは野菊のような人だ。
土田麦僊
民子は分けてやった半分の野菊を顔に押しあてて嬉しがった。
政夫さん、私野菊の様だってどうしてですか。
さアどうしてということはないけど、 民さんは何がなし野菊のような風だからさ。
それで政夫さんは野菊が好きだって・・・・。 僕大好きさ。
伊藤左千夫 『野菊の墓』
野菊、野菊、野菊がいっぱいの素朴な文章、いいですね。
野菊の墓。 題名を聞くだけでうるうるしてくる明治の初恋物語は、
アララギの歌人であった伊藤左千夫の残した佳作です。
ご存知民子と政夫、いとこ同士のふたりですが、
政夫が中学の寮に入っているうちに、二歳ばかり年上の民ちゃんに縁談が・・。
死産のすえに彼女は命を落とします。 涙。
千葉県、例の矢切の渡しなども登場するお話の中には、
日本のやさしい自然描写もいっぱいです。
これは、ふたりで山へ綿摘みに行った際の楽しそうな様子・・。
plalor
民さん、ここまでくれば、清水はあそこに見えます。 これから僕がひとりで行ってくるから、
ここに待っていなさい。僕が見えていたらいられるでしょう。
ほんとに政夫さんの御厄介ですね。 そんなに駄々を言ってはすまないから、
ここで待ちましょう。 あらア野葡萄があった。
僕は水を汲んでの帰りに、水筒は腰に結いつけ、
あけび四、五十と野葡萄を採り、
竜胆の花の美しいのを見つけて帰ってきた。
あけび。 いただきもの。 山形より。
通草の実青きは空に置いてくる 池谷秀子
通草はあけび。 なんときれいなむらさき色。
あけびの中はこんな感じ。 形はナマコ風。 ゼリーのようなやさしい味でした。
kotobank
民子は竜胆の花を手に採って、
こんな美しい花、いつ採ってお出でなして。 竜胆はほんとうによい花ですね。
わたし、急に竜胆が好きになった。
・・・やがて、何を思い出したか、ひとりでにこにこ笑い出した。
民さん、何です、そんなにひとりで笑って。 政夫さんは竜胆のような人だ。
どうして。 さアどうしてということはないけど、 なにがなし竜胆のような風だからさ。
民子は言い終わって顔をかくして笑った
komeri
それでさっきの仇討というわけですか。 口真似なんかおそれいりますナ。
しかし民さんが野菊で僕が竜胆とは面白い対ですね。
僕はよろこんで竜胆になります。
それで民さんが竜胆を好きになってくれればなおうれしい。
『野菊の墓』
シャガール 『ダフニスとクロエ』
忘れられない会話。 でも、ふたりのその後は痛ましい。
数年後、政夫が帰郷したとき、もう彼女はこの世にいませんでした。 また涙。
野菊のみ墓石にふれてゐたりけり 中田剛
大事な人のお墓か、それとも誰とも知れぬ人の。
ままごとのやうな仏壇菊日和 池谷秀子
色とりどりの菊を供えてあげて。
あけび句でも登場、 池谷秀子さんの新著 『ジュークボックスよりタンゴ』。
ジュークボックスからは野菊もあふれそうです!
僕は香を上げ花を上げ水を注いでから、
墓の前にうずくまって心ゆくまで拝んだ。
見舞ってやりたかった。一目会いたかった。
僕も民さんに会いたかったもの、民さんだって僕に会いたかったに違いない。
民さんは嫁に住っても僕の心に変わりはないと、せめて僕の口から一言いって・・・。
『野菊の墓』
ルドン オフィーリア
有る程の菊投げ入れよ棺の中 夏目漱石
漱石が悼んだのも、彼の初恋の人でした。
nabesyo
昔読んだ時は、人目があるからあんまり仲良くしちゃダメ、というお母さんや親戚縁者、
なんとイジワルな、と思ったものですが、
久しぶりに読むと、みんなやさしく涙もろい村人たちでした。
最近カロもまるくなりました。
竹久夢二
野菊摘むことを忘れてみまかれり 柿本多映
野菊を摘む・・・小さかった頃に何回か。 また摘んでみたい。
摘み足してみても淋しき野菊かな 黒川悦子
一輪でも淋しい。 百輪はもっと淋しい。
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映画の百恵ちゃんの寂しそうな横顔を思い出しました。
野菊とまではいきませんが、アザミとかヘビ苺とかドクダミみたいとかは言われた事あります。
アザミは棘だらけで
ヘビ苺はネーミングが
ドクダミはしぶとくて臭い
これが理由みたいでした。
逞しいと言って欲しかったなぁ(爆笑)
わたしは昔のモノクロ映画で。
ヒロインがいつもうつむいていて可愛かった。
追伸 わたしはなぜか昔の人みたいだとよく言われます。
すでに昔の人だからでしょうか・・・。 カロ