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カロ歳時記 流れ弾に当りしごとし父の日は 大畑等
カロ歳時記
saison de karo 163
流れ弾に当りしごとし父の日は 大畑等


future
六月の父の日が過ぎた頃、わが携帯に もしもし、もしもし と若い女性の声。
たまにある間違い電話と思いしが、 あの、父の日って何していましたか?
わたし由香です。 えッ? 頭の中が真っ白になるとはこのことか。
由香いくつになったの? おとうさんの半分。
由香のトシはいつも数えていたから知ってはいたけどね。
國井克彦 「六月物語」


三十年前三歳でわかれた娘と喋っている現実に実感がない。
・・・昔不可解な行動に走る父親ありき。
その最大の犠牲者が由香であったと、父はそれを一日も自覚しない日はなかったのです。
由香元気だったの? うん。 三十年を一言で元気だったかと訊くのもいい加減な姿勢である。
わたし月刊誌の記者してるの。 へぇ? 血は争えないというべきか。

・・・携帯電話は電話代が高いからこちらからかけようか? と父のような思いやりを示す。
いいの、ボーナス出たから。それより父の日って何していたんですか?
何も。 何もしてもらえないの? うん。
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私は三十年の重みを感じて沈黙した。
ばかな実の父を許してください、と心の中でつぶやいていた。
火宅の人なんだから、仕方ない。お父さん、胸に迫る詩を残してください。


わたし《夕ぐれの町》が大好き。夕ぐれの町にフクちゃんが現れるなんてステキ。
・・・まさか詩が好きという子に育つとは。


池袋でお父さんの詩集買ったの、由香。


渋谷はハチ公、池袋の待ち合わせスポットは東口のフクロウ石像・・・カロ注

ゲストハチ公さん
・・・由香、詩集なら買わなくてもあげるのに。
ちょうだい、サインして。月曜日に会いたい。
いいよ。顔わかるかな? 親子だからわかるよ。
・・・由香とは矢継ぎ早やに二度デートした。

asoview

鈴木京香を思わせる美しい顔立ち。自慢の娘と言いたいところだが、
わたくしにはその資格はない。
おとうさん泣いてるの? 明るくいかなくちゃ。ビール飲もッ。
そうだね。ところで食べ物で何か嫌いなものあるの? ない。
とくに好きなものは?
おさしみ。 やっぱり父娘だね。 ビールも好きなんじゃないの? 当たり。
美しいわが子とビール飲んで、さしみを食べて、しゃぶしゃぶも食べちゃって、
詩は新川和江さんが好きとか、新藤涼子さんもいいよなんて親子で喋って、
こんなしあわせがわたくしにもたらされるとは・・・。

おとうさん、わたしもう二度と会わないからね。
酔っぱらいであきれたんだね。
ううん、とっても楽しかった。 わたしはおとうさんに育ててもらわなかった。
わたしのまわりの人たちがわたしを育ててくれたの。おとうさんにひと目会えればよかったの。
住んでる星がちがうみたいな感じ。だから会ってはいけないの。

livedoorblog
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・・・そういうことか。よくわかるよ。
こちらの星ではわたしだけが応援しているからね。
ありがとう。
六月の東京夜の風優し・・・。
「六月物語」

2017年の父の日は6月18日。

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