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カロ歳時記 風呂敷の変幻自在雪起し 末永理恵子
カロ歳時記
saison de karo 131
風呂敷の変幻自在雪起し 末永理恵子

from dog training the blessing of animal companions
雪起しは、冬季、北陸や東北の日本海側で、大気が不安定になるために起る雷雨。


ふろしきを持つ人が少なくなった。
ときたま、デパートで不意の買い物をあれこれした時など、
ふろしきが役に立つ。
取り出して包みはじめると、若い店員さんが、あわてて紙袋をくれたりする。
それを制すると、珍し気に手元をのぞきこむ。
「ふろしき」 増田れい子

もうずっと昔・・・。
買い物先でふろしきを取り出すと、
間髪入れずに受け取って、
きりりと結んでくれるひとがいた。
上手なひとのは、結び目がはなやかで、そのうえ、ほどけにくかった。


ふろしき包みがほどかれるのを、
かたずをのんで見つめた頃があった。
とりわけ、母が町に出て買い物をして帰った夕方は、
いったい何が現れるか。

約束のセルロイドの筆箱は、あるか。
ゴムまりは。別珍の足袋は。
母はゆっくりと包みをほどいた。


いま思い出すと、母は自分のものを買わなかった。
たまに、白い人絹の半襟がひとかけ混ざる程度だった。


客が来て、かかえてきたふろしき包みがほどかれるのを、
遠目でのぞくのも、わくわくしたものだった。
菓子折りのことが多かった。



もなか、カステラ、栗まんじゅう。
時には、赤飯やぼたもちのこともあった。

ある時は、長い耳をした兎まで包まれてきた。
ふろしき包みは幸福を運んでくれる、すばらしい布であった。
「ふろしき」

自分のものは買わない母・・・・作者増田れい子さんのお母さんは住井すゑ。
長編小説 『橋のない川』を書き継ぎ、人間の平等を社会へ問い続けた作家です。

住井すゑ
風呂敷は日常の小さな品ですが、母としての彼女のあたたかい広がりは、
あらゆる子供たちの存在を包み込んでくれるようです。
社会性とは大きなテーマを声高に叫ぶことばかりではなく、
一枚の切実な布にも包まれているものでしょう。
カロ

結婚する時に作ってもらった風呂敷。150センチ四方。
使わないのでたたみ皴くっきり。大事です。

みなさん、よい御年を・・・・。いつもありがとう。 カロ

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