カロ歳時記
saison de karo 107
もう追うて行かれぬ金の林檎かな 柳川晋

娘は、オーブンから出したばかりのアップルパイを一切れ
わたしにくれた。




まだほんのり湯気が立っている。
パイの皮には、
砂糖と香料・・・・・・シナモンが焼き込まれている。



明るい朝の10時、
娘は台所でサングラスをかけて、
わたしがパイをフォークで切って口へ運び、
ふうっと吹くのを見ている。


台所、冬である。


わたしはパイをフォークでさしながら自分に言い聞かせる。

何も聞かない方がいい。


娘はあの男を愛していると言うのだ。
それでいいではないか。
それでいいではないか・・・・・。
娘とアップルパイ レイモンド・カーヴァー


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