カロ歳時記

    saison de karo 94


                                    ひえびえと人を見ている桜かな   中村克子


                 桜満開5




      近頃はの木の下といえば人間がより集まってを飲んで喧嘩していますから、

         陽気でにぎやかだと思い込んでいますが、

            の花の下から人間を取り去ると怖ろしい景色になります・・・。


                                             坂口安吾  『の森の満開の下』



                          桜満開3


                         

                       、鈴鹿峠も旅人がの森の花の下を通らなければならないような道になっていました。

                    の季節になると、旅人はみんな森のの下で気が変になりました。




                 さくら2


                 やがての森は街道を外れて人の子一人通らない山の静寂へとり残されてしまいました。


                  満開 業平 中将
                          

                       


                      さくら


                                                 

      この山に一人のが住み始めましたが、

         このはずいぶんむごたらしい男で、街道へ出て情容赦なく着物をはぎ人の命も断ちましたが、

            こんな男でもの森の花の下へくるとやっぱり怖ろしくなって気が変になりました。




                  満開3


         の下では風がないのにゴウゴウが鳴っているような気がしました。

            そのくせ、がちっともなく、一つも物音がありません。

               自分の姿と足音ばかりで、それがひっそり冷たいそして動かないの中につつまれていました。

            
                       満開2
                


       始めはひとりだった女房がもう七人にもなり、

       八人目の女房を又、街道からの亭主の着物と一緒にさらってきました。

       の亭主は殺してきました。



                     満開1



           を恋いました。

            「お前が本当に強いなら、私をへ連れて行っておくれ。

              そして私にシンから楽しい思いを授けてくれることができるなら、お前は本当に強いなのさ。」

           「わけのないことだ。」

              へ行くことに決めました。

                ひとつだけ気にかかることは、まったくに関係のない別なことでした。

                   それはの森でした。


                         満開5



                      
         二日か三日の後に、の満開が訪れようとしていました。

           今年こそ、彼は決意していました。

              の森の盛りのまんなかで、身動きもせずジッと坐っていてみせる。

                  あと三日、彼は出発を急ぐに言いました。




                     増女


               女はをよせました。

               「じらさないでおくれ。が私をよんでいるのだよ。」
   
               「それでもがあるからね。」

               「お前がかえ、この山奥にした誰がいるのさ。」

               男はがつけなくなりました。


                                能面



                   「の花が咲くのだよ。」

                       「の花としたのかえ。」

                           「の森の下へ行って見なけらばならないからだよ。」

                               「なぜ、行ってみなければならないのよ。」

                   「が咲くからだよ。」


                                                                  桜満開1
                   

             男は、の花の下へ歩きこみました。

                       あたりはひっそりと、だんだんたくなるようでした。

                             彼はふと、女の手がたくなっているのに気が付きました。


                       般若


                      に不安になりました。

                         とっさに彼は分りました。

                     であることを。

                  突然どっという冷たいが花の下の四方の涯から吹き寄せていました。



                                               『の森の満開の下』


                                満開6

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