カロ歳時記

  saison de karo  90


                       立春や卵も立つと習いけり 中川智正



               遶区丼・廟convert_20140113211138

      




       は東京拘置所の一人部屋にいます。

       一人でいる理由は、私が死刑囚だからです。

       天井でカメラが二十四時間監視している部屋です。


       はずっと一人部屋にいるのですが、その間に東京拘置所では何年もかけた建て替えがありました。


 
       (1996年から2003年まで)私が収容されていた建物は上空から見ると、

       熊手の先もしくは歯のない櫛のような形状をしていたはずです。・・・

                                 中川智正 私をとりまく世界について 『ジャム・セッション』




                   立春12



                                              立春13

                                                    旧東京拘置所                          


                       
                                 立春02






       にある四つの棟に収容者が入っていました。

          取り調べ室のある棟から北に向かって順に

             新四舎、新三舎、新二舎、新一舎と呼ばれていました。

                これらの収容棟は石とコンクリートと木で出来ていて、「新」と付いてはいましたが、

                   かなり古いものでした。




                                立春10




            は新二舎の一階にいました。

       そこには、一人部屋ばかり50室ほどが東西にずらりと並んでいました。



                                                  立春04
                                      


                     からは中庭が見えました。そこには沢山の樹木が植えられていて、が咲きました。

                                   


                    立春9



        が見てもすぐわかるカラススズメ以外の鳥も何種類か来ていました。

                                                   

                                           
                                              立春0



                                                                                
                「ホーホケキョ」と鳴く声がするので、

                   私はウグイスが来ているのかと思っていました。

                      しかし、それは一人部屋に入っている収容者の口笛でした。




                 立春01






        もよく部屋の中にいました。

        せいぜい1センチくらいの大きさで、獲物が来るのを待って、来たら飛びかかり、

        それを糸でぐるぐる巻きにする種類のものです。

        冬には獲物がなくて、待ったままの姿勢で干からびて死んでいくものが沢山いました。


                            中川智正 私をとりまく世界について 『ジャム・セッション』




                          立春8






               すきま陽を求めて曲がる切り花よ

                 消えて光る素粒子のごとくあればよし

                   永き夜は深海となり鼓動聞く


                                                 中川智正 『ジャム・セッション』





                      福寿草




                                                 

            中川智正氏は死刑囚。

            オウム真理教の一連の事件に連座、死刑が確定しています。
   
            『ジャム・セッション』は俳人江里昭彦氏と中川氏

            さらにゲスト俳人の作品、文章をコラボさせた同人誌。

            2012年創刊以来4号が発行されました。


            江里氏は京都府職員として府立医大に勤務していた1980年代、

            同大学生であった中川氏と知り合っています。

                                                    カロ



                          
                  立春11





        その、中川智正氏は医学生としてしょっちゅう学生課に出入りしていた。
 
        この年、彼は「学園の顔」であった。

        というのも、大学祭の実行委員長の重責を担っていたからである。

        その他大勢の一員だった彼が、私の印象に強く残る存在となったのは、この年である。

        まえまえから障害者のボランティア活動をしていた中川氏が、

        会期中、車椅子を押しながら、構内を巡っているのを目撃した職員もいる。


               江里昭彦 1986年について 『ジャム・セッション』創刊号 あとがき


            
              
                    立春7






               手元に「プレフェスティバル」というビラが残っている。

               十月二十五日、京都教育文化センターでもたれた催しだ。

               プログラムの冒頭に「委員長中川智正口琴独奏」とある。口琴はだろう。

               催しを見にゆかなかった私は中川氏の独奏を聴いていない。

               今日に至るまで、をあやつる彼の姿を見たことがない。


                                江里昭彦 1986年について 『ジャム・セッション』




                    プレーンオムレツ


  



           「読み」がどこまでも自由であると同じように、「書く」こと、そしてあらゆる表現も限りなく自由です。

           生まれたばかりの赤ん坊でも、老人でも、つきでも、人非人でも、犯罪者でも。

           わたしはそう思います。 カロ



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