カロ歳時記

  saison de karo88


             
                  剥製のつばさ広ごる冬銀河  松下カロ



                        スワン
 


     わたしは煙草にをつけると、黙っているのが気詰まりになってきた。

     「白鳥の剥製みた?」

     と、わたしは早口にしゃべりだした。

     「たぶん生きている白鳥よりも死んだ白鳥のほうが美しいのだと思うわ。

      魂がないということだけでも素敵でしょ。描きなさいよ。ね、剥製をモデルにして。

      白鳥の死ってタイトルはどこかにあったかしら。

      白鳥の湖はチャイコフスキー、白鳥の歌はシューベルト。
  
      パヴロワは瀕死の白鳥・・・」

     気障な言葉を、しかもとりとめもなく喋っているのをわたしは感じた。



                                        原田康子 『挽歌』





             白鳥5





       「わたしをモデルにして、

        死んだ白鳥と、白鳥の死骸をよろこんで抱いている不遜の娘との取り合わせ・・・っていうのはいいでしょ。

        いい思いつきよ。」



                                   leda2.jpg





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           「わたし一度ね、おじさんをみかけたことあるわ。 ジープに乗ってたのみたの。」

           「昔、トラックを運転してた。」

           「トラック?」

           「そうだよ。工兵隊って知ってるかい?隊の運転手が死んだあとに僕が運転した。」

           「戦争に行ったの?」





             アンコールワット3






                  「ぼくらの年では戦争に行かないやつのほうが少ないだろう。」

                  わたしはなにか愕いて、コップに唇をつけたまま彼をみつめた。

                  「どこに行ったの?」

                  「仏印マレエビルマ・・・」

                  桂木さんは笑いながらゆっくり言った。

                  わたしは、ふと、街が爆破されたの、の色を思い出した。

                  深紅、としか言いようのないの色。




                白鳥9





     死へのおびえと、そしてこの世の終末のような凄まじい美しさを滲ませていたの色を、

     あのような夜空を、いまわたしの眼の前にいる男は毎日みていたのだろうか。

     「かったでしょ。」

     「しいこともあったよ。」

     桂木さんはおかしそうにわたしをみた。






            アンコールワット1





   「どんな。」

   「そうだな。一番いい思い出はカンボジャにいたとき、こっそりアンコールワットをみにいったことだ。」

   「それ、なに。」

   「むかし、クメールという国があってね、そこの王様が建てた伽藍だ。古い東洋建築の代表的な建物さ。

                   日本人でアンコールワットをみたものはそういない筈だよ。」





        アンコールワット2



        「ぼくはマラリヤにやられたことがある。

         部隊はどんどん撤退中だったから、ひとりニッパハウスという掘立小屋に取り残されてしまった。

         ぼくのいる渓間に、土民の狙撃兵の撃つ銃の音が聞こえた。

         ぼくはとにかくぬな、と自分を戒め、

         争が終わったら、アパートや小さな住宅をたくさん建てねばならないと考えたりした。

         ぼくが場に置かれていることのむなしさをはっきりと感じたのはその時だった。」





         白鳥2




      それは西の方へ行く電車だった。

      わたしは車窓に流れてゆく平坦な街の家々の明りに旅情をおぼえながら、

      彼がわたしとの結婚を望んでいたことを、ぼんやり考えていた。

      わたしには、彼がわたしとの結婚を考えたのは、

      わたしがったとおり、恋からではなく、わたしへの思いやりからに違いないように思われた。

      むろん、これを機会に夫人との生活をりにしたい、という気持ちもあるだろう。

      どんな男だって、愛人のいるよりも、

      男を愛しているのほうを選ぶかも知れない。

      たとえ妻に断ちがたいものがあり、娘をはげしく恋していなくとも。


                                                       『挽歌』



            
              白鳥4




                                                  白鳥8


              カロちゃんどしたの? 自分の句なんかだしちゃってニャ 


                        たまにはいいじゃない。 カロ 


       
                               
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