saison de karo 5

空鬱々さくらは白く走るかな 赤尾兜子

俯く桜


六歳の秀頼は人形のように愛らしかった。
茶々は秀頼が満開の桜の下を自分のほうへ駆けてくるのを見た。しんとした一瞬であった。秀頼と自分の距離が次第に縮まるのを、気の遠くなるような思いで見守っていた。そして、この時、茶々は何故かふと、この幸福は、長く続くことはないであろうと思った。何物かが、この幸福を壊しにやって来るような気がした。茶々は、秀頼の小さい身体を受け取るために、物哀しい感動に身を震わせながら立ちあがった。 

     醍醐の花見    井上靖 『淀どの日記』 

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