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  歳時記
      saison de karo 

                    雪兎こゑのひときらひ  対中いずみ
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          ・・・。 うさぎ                                
      私はを飼っています。             usagi4 (2)
 
      私の家には犬や猫がいますから、 うさぎは別にして、げんかんにおいてあります。

      私は毎朝、学校へ行くときに、きっとそのうさぎをだいて、なでてやります。

      この前の木よう日のことでした。 げんかんに出てみましたら、

      うさぎのが、一つだけピンと立っていて、一つはよこにたおれていました。

      おや、おかしいな、そっちのも立てなさい。 といいましたけれども、

      うさぎはしらんかおしています。

      そんならわたしが立ててあげよう、といって、手で立ててやりましたが、

      手をはなすと、すぐまたぱたりとたおれてしまいました。

      私はねえちゃんに、

      「ねえちゃん、あのうさぎのを立てて下さい」といいましたので、

      ねえちゃんは、でうさぎのをつまんで、立てておやりになりました。

      しかし、 ねえちゃんが足をおはなしになると、

      そっちのは、またぱたりとたおれてしまいました。

      ねえちゃんは、「おかしなみみですね」とおっしゃって、おわらいになりました。
        
                         谷崎潤一郎  「
                             
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                                    竹久夢二 「佳き朝」     
 
         🐰 すことも夢のひとつに雪うさぎ 大井恒行
                         きれいな夢をみたい。じっと座って。
                                       
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 雪子は毎朝、悦子を起して朝飯の世話をしてやり、鞄の中を調べたうえで、学校へ送り出してやってから、

     もう一度寝床へ入って温まるのであるが・・・ 

   寝巻の上に羽二重のナイトガウンを羽織り、こはぜもかけずにをはいたまま玄関まで送ってでると、

      悦子がしきりに兎の一方のを持って立てようとしていた。

                 、やってみてえな。 

         雪子は悦子を遅刻させないために、早く手伝って立ててやろうと思ったけれども、

                    手をふれるのが何となく不気味だったので、

     足袋をはいているを上げて親指の股に耳の先をはさんでつまみあげた。

          が、足を放すと、すぐまたパタリと兎の横顔の上へその耳が垂れてくるのであった。

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                     スミマセン うさぎ
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                              白足袋はうさぎみたい。

     🐰 きうさぎ雪の山より出でて来て殺されたればを開き居り 斎藤史
             斎藤史は美しくて怖い歌の名手でした。 うさぎは死んで雪うさぎになったのか。

                           IMG_6425 (2)korekore
      
 悦子は学校でも綴り方はよくできるほうなので、この文章なども巧く書けていた。

    ・・・当惑したのは、この「で」の処置であった。

         彼女は「ねえちゃんもうさぎのみみをつまんで・・」から、

                   「たおれてしまいました」までを、次のように訂正した。

   「ねえちゃんもうさぎのをつまんで、立てておやりになりましたが、

           ねえちゃんがそのをおはなしになると、またぱたりとたおれてしまいました。」

                    「で」の代わりに「手で」とするのが、一番簡単であったけれども、

      実際あの時は足でしたのに違いないので、 子どもにを書かせてはならないと考えた結果、

               いくらか曖昧に取れるように、こう書き直したのであった・・・。

       miffy 絵本のなかまたちsyou         miffi-noおともだちダーン君syou
     おなじみミッフィーちゃん 耳はピンと。       おともだちダーンくん 耳は垂れて。

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                  🐰 雪うさぎ日差しに負けて倒る 谷 辿子
                            〈負けて〉という言葉がこの句のいのち!
              141syou (2)  ねえちゃん、何でここいかんのん。

              いややわ、悦ちゃんは。 足でした云うこと書かんかてええがな。

                 そんでも、足でしたやないの。

     ・・・そうかて、そんな恰好したこと、書けますかいな。 先生が読まはったら、

                  えらい行儀の悪い姉ちゃんや思やはるがな。     「細雪」

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                                      うさぎ二羽。 🐰 🐰

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               源氏物語にも匹敵すると評される長編小説「」。   

                戦時下、谷崎潤一郎は、美しい時代の夢のような物語を書き継ぎます。

     描かれるのは、昭和初期、古き良き頃の阪神間の旧家の四人の姉妹、鶴子、幸子、雪子、妙子の人生模様。           

 中でも印象的なのが、姉妹の中で一番かな人、三女のさん。足で兎の耳を立てようとした方ですね。 

  ちゃんは、直ぐ上の姉幸子さんの一人娘。 未婚の雪子さんはこの姪をとても可愛がっているのです。

      「」は、雪子さんが、五指に余る男性とお見合いしては、諸般の事情で破談になるいきさつが、

        詳細に語られるのストーリー。 
                  
             無口でおとなしい雪子さんですが、 実は・・。

                      わたし、! いやとなったらいや!

      お相手の声がきすぎたのか? お見合いはなかなかまとまりません。

               なんだか彼女、うさぎみたいですね。

                    結末は・・・「細雪」をお読みください。 ちなみに結構いです。

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                              対中いずみ 「自句自解ベスト100」

        雪兎こゑのひときらひ  対中いずみ
                 対中いずみ 「自句自解ベスト100」より 
                    静かにささやくようないずみさんの自解です。    

 さん、ありがとうございました。

            きな句をもうひとつ

             わからなくなりのやうに立つ いずみ
                     水仙の不思議な魅力を言い当てたことば。 
                        雪子さんは雪うさぎ、いずみさんは水仙ですネ。

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                               うさぎも春を待って。 ピョン。 
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 歳時記
    saison de karo                      
                         天に満ちてより他になき 辺見京子
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   飛び交う鶴。 川端康成のノーベル賞賞状です。 小説「千羽鶴」のイメージ。   
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             ・・・お茶席は、この路の奥でしょうか。

                  はあ。

                  のちりめんにの千羽鶴の風呂敷を持った令嬢は美しかった。

            ここまではいて来たを千羽鶴の風呂敷に包みながら、

                      令嬢は菊治を先に通そうと、行儀よく立っていた。

                                川端康成 『

                折鶴ginsenotemo

        川端康成著『』の冒頭、主人公の男性がある女性と出会う場面です。
                        IMG_6347 (2)

                 さしあげてください。  

       の風呂敷の令嬢が立って行った。 癖がなく素直な手前である。

                 令嬢のまわりにさい千羽鶴が立ち舞っていそうに思えた。

     黒織部の茶碗で、正面の白ぐすりのところに、やはり黒でが描いてあった。 

                           『』   

                      人音を鶴もしたふてかな 加賀千代女   
                                  鶴も春を待って。
                   
千利休の弟子古田織部が考案したという
         わらび文様の黒織部  千利休の高弟古田織部が考案したといわれる奔放なかたち。
                         並んだわらびは、鶴の首みたい。 出光美術館   
                   bird_tsuru_5709.png  

   美しき羽根を使ひて 大串章   凍てしき時流れけり 福田蓼汀  
                   美しいという言葉は鶴のために。    
         117545m (2)
                 
              は一月にふさわしい鳥。 端麗で高貴な印象です。 

     でも、小説が始まってすぐ、千羽鶴の風呂敷は、少しれた少女の足袋を包んでいます。

        けがれなきものも、いずれは汚れる。 文豪はそう言いたかったのでしょうか。

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             加藤唐九郎作 志野茶碗  川端コレクション

       川端康成は美術品の蒐集で知られていました。  加藤唐九郎の志野茶碗もそのひとつです。 

                           い肌は女性的ですね。
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    闇の夜に鳴くなる鶴の外のみに聞きつつかあらむふとはなしに 笠女郎
             夜鳴く鶴の声を遠く聞くように、あなたのことは人づてに聞くしかありません。 
                             
                加山又造 千羽鶴 (2)
                                   加山又造 「千羽鶴」
              
               枕にのせる首ひとつ 三宅やよい
          枕に乗るのは鶴の首か、それとも女性のい首か。
                 の光との闇、両方が感じられます。
                                     
      crane-2_convert_20170116002650.jpg
                      天に鶴ちて鶴より他になき 辺見京子
                       
       曜変天目茶碗
                               油滴天目茶碗  静嘉堂文庫美術館

                大名の茶席にふさわしいのように広大なかたち。 

          空を無数の鶴が飛び回っています。
                                                                 
            あすよりは春菜摘まむとしめし野に昨日も今日も雪はふりつつ 山辺赤人 俵屋宗達絵 本阿弥光悦書
                                俵屋宗達絵 本阿弥光悦書 「発つ鶴図」

                     鶴1 (2)
                        
                  また来て凍鶴の前に立つ  吉岡禅寺洞
                          鶴も凍て、人も凍て。 
              natunohi (4)
                            
     青天のどこかれて鶴鳴けり 福永耕二
                           鶴の声は、夭折の俳人の声。
       
                         turusyou.jpg               
             と寒さ。 きびしい年明けですね。 みなさんお元気で。

                      今年も美しいもの、心惹かれるものをいたいと思います。  カロ

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