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          歳時記
                   saison de karo 

                           
                                    の宇宙模型の吐息かな  折笠美秋   

                あじさいおりがさ2
       

                                (1934~90)は昭和を生きた俳人。

               新聞社に勤務、としての多忙な生活のなかから強い主張のある句作と俳論を展開しました。
             
                           ところが、全身麻痺をともなう難病にれます。

               夫人の手厚い看護のもと、呼吸、発声も困難になりながら、作句はけられました。


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                  や夜は海から帰ってくる 
                               桃は
                                                 兆す天の一枚扉かな
                                                          桃は


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                             死にごろとなりの木に桃登る     美秋
                                      桃は
                 

                     クレー (2)
                                             クレー                                                                                         

                の折笠作品は、都会的、実験的なものが多かったのですが、

                  病がくなってからは、むしろ苦しい心情を率直に吐露するかたちに移行してゆきます。

               殊に的に彼を支える妻を詠んだ句は、技巧も方法も越えて感動的。


                                            あじさいゆり

                   百合咲く頃逢いたるよ いまも百合の
               白いの中で、詠み手が思うのは白百合のような妻のこと。

 
                                                     あき (2)
                  あめ7

    
                           大雨をは来つ さらに豪雨ならむ
                       雨中を病床の夫の元へ一途にやってきた。はげしく美しく。

                                       かさ (2)
 

                                                      濡れて来し美しや稲光
                                                健康であったの恋歌のよう。

                あじさい 伊東深水
                                       ちょっぴりエロスも。 伊東深水

                                              あじさい前本利彦 胡蝶蘭 onwardcojp
                                                           前本利彦  onward

             抱きおこされて妻の蘭の花    美秋
                      看病の妻は香り高いにたとえられて。

                   の墓抱き起されしとき見たり  石田波郷
                                
                おなじフレーズ〈きおこされ〉が使われていますが、波郷のしさに比べ、

                     美秋句は、妻のい香りに満ちています。

                            ご夫婦の結びつきの強さ、さが思われますね。

                    、ほとんど自力で動けなくなってからも、美秋は言葉をい続けました。


                                         あじさい夜
 
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                                  竹久夢二

                                          後悔あるまじと説くよ どこでいてきた
                                       こんな独白もは受け入れてくれる。
                  

                         海の最後はに止まりけり
                                 海も蝶も、そのだけが詠まれています。 

                              三岸好太郎 1934
                                                        三岸好太郎  
               
            白桃やするというむこと
                               境地は優しくかです。                                                         
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                       と居て銀河がまで降りて来る
                の動きを妻が読み取った句はしいうつくしさ。
                             
                   
                                           の宇宙模型の吐息かな

                      あじさいおりがさ6
                                        

                           の句は、深刻な病状があきらかになり始めたころの作。 
    
                       われてゆく身体機能を自覚する作者にとって、

              のあじさいはのない命の証、宇宙と等価の存在だったのですね。


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      イタリアの名匠ルキノ・ヴィスコンティの作品『ヴェニスにす』は、あじさいが的な映画でした。

          高名な作曲家アッシェンバッハは、夏に訪れたのホテルで、同宿の少年タジオにぼれ。

                       20世紀はじめの古いの中、

                  主人公は、少年にをかけることもできず、懊悩します。


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                                                              ヴィスコンティ 『ヴェニスに死す』   
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                                                          『ヴェニスに死す』 
                            
                         舞台となる古いホテルのには、

                            あじさいの花がようにけられていました。

              原作はの中編小説。 主人公は小説家となっています。

                            少年に翻弄される老芸術家。

       スクリーンの中、あじさいは、人生をわせ死をみちびく美と、その脆さの背景に、かに咲いていました。


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                                                    『ヴェニスに死す』

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            トーマス・マン(1875~1955) 『トニオ・クレーゲル』『魔の山』など、ヨーロッパ文芸の中興の祖といわれるえらい方。 
                          ナチズムとの闘い、亡命と、辛酸の人生でした。 苦悩が顕れていますね。

               

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                                                              ダ・ヴィンチ 
           
                                タジオは彼に向ってかけた。

             微笑を受け取った作家は、何か宿命的なのようにそれを抱いて、急いでそこを立ち去った。

                          きみはそんなふうにしてはいけない。

                    いいかね、にだって、そんなふうに微笑してみせるものではないのだよ。

                                                         トーマス・マン 『ヴェニスに死す』   

                               
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                                    クレー


                                あじさいはっぱ
                                                 なかなかにたくましいあじさいの葉


                          でも、は、美しくだけの花ではありません。

                    日当たりにめぐまれない庭のにも、よく育って根をはります。

          れた後も花びらは散らずにのこり、いつまでもを保とうとします。

                          やさしく柔軟な色の反面、あじさいは強く花なのです。  

                                     
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                                 紫陽花は梅雨にじて無きか  相生垣瓜人
                            には悔いているのかも。
                
          紫陽花がな呼吸してをりぬ   千坂美津恵
                      あじさいには〈きれい〉という言葉がいますね。


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                                               伊東若冲 紫陽花図


                                紫陽花やは何の色を咲く   正岡子規
                        あじさいの色はの色、どこまでも次の日を信じる色。

                 に似た花もあり  子規
                      長雨に色を変えて咲き継ぐあじさい。
                               俳人は病床から見ていました。

 
                                      ノルデ小
                                                                          ノルデ   
                                                   
                             あじさいおりがさ2 (2)

                                    の宇宙模型の吐息かな  折笠美秋  

                            長く咲いたもそろそろ花の終わりを迎えています。

                しおれかけたあじさいは青も紫も淡くにじみ、命を自らしんでいるよう。

                                 今年も過ごしにくい季節をってくれたあじさいに感謝。   カロ

 
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     歳時記
             saison de karo 


                                  や聞いてことばかり  篠田悌二郎 

                つゆたべこっち
                                                                 つやつやぴかぴか

 
                    の日のたべもの

                梅雨時は体調もれがち、食欲もちるというお話も聞きますが、

                        わたしにその傾向はなし。 

                ゼリー、白玉、蜜豆等々夏季のも、つれづれなる雨の日に作って食べると、

                        雨ふってかたまる(すみません)。 美味しく楽しい午後となりますね。


                      つゆたべ20


             や幸せさうに愚痴を言ふ  和気久良子
                           初夏の雨にはな甘さの蜜豆が合う。 蜜豆にはが合う?


                        つゆたべ10kore


                                        つゆたべ15小


            出不精となりてに親しめり  殿山莬絲子
                      新茶のよろこびは一人の、そしてのよろこび。

                                                
                                       純潔とは遠い一生  加茂前朱美
                                色美しい果実もるころ。       
                           く、また微かに甘い実はの味か。

                                               gulliverbrosつゆたべ
                                                                     gulliverbros


                 つゆたべ6                                     


                一籠買ほか買ふまいか  宇多喜代子 
                             幼いのようなことば。 


                                    に母の拇指たやすく没す  桂信子
                     熟れた無花果にはを越えた女性の感情と官能がこもります。
 

                 つゆたべ4

            
                                               つゆたべ25

                     
                    梅雨めくやぽろぽろこぼす  西川仁
                 しめった季節にホロっとした食感のメロンパンは心地よく
                      やお菓子が好物だったを思い出させる一句ですネ。

                   ずーっと病床にあった子規。  でもとってもでした。

               の食事                    

                    朝    粥三椀 佃煮 梅干 牛乳五勺 数個

                    昼    粥三椀 勝魚(かつお)のさしみ ふじ豆 佃煮 梅干 梨一つ

                    間食   牛乳五勺 数個
                                                                        『仰臥漫録』

                             合計パンくらい食べたのか?  この時のパンは、

                     パン、とうもろこしパン、あんパンなどだったそうです。


                            つゆたべ8
                                                     パンのスケッチ  『仰臥漫録』

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                      他に子規が好んだのははココア、ねじり、あめ。  結果的に歯が悪かったよう。


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                      ドロップ

                        
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                                  を受け、野菜はよく育って値ごろ感あり、 

                     食材が傷みやすい季節、買った果物肉魚、

                新鮮なうちに食べてしまおうと、箸が進む。 これは単なる言い訳か。

                      、やはりこんな季節は、体に食べ物が良いですね。

                                       例えば、、お豆腐。

                         あめねこ3
 
                                       つゆたべ14小

 
                             豆腐屋ので夕餉にする  種田山頭火


      橋場の豆腐屋が、今朝とどけてくれた豆腐と油揚げを、く切って土鍋へ入れ、さな火鉢にかけた。

             彦次郎が何よりのの湯豆腐であった。 を台所のかまどへかけておいてから、

       彦次郎は湯豆腐と焼海苔で酒を飲み始めた。 梅雨のえに、湯豆腐はことにうまい。

                                                       池波正太郎  『の湯豆腐』


                                      つゆたべ12


            『梅雨の湯豆腐』の主人公彦次郎は、グルメな町人、殺し屋という設定。

                 で川べりの一軒家に住んでいます。 自炊が得意。

                     季節がもどったように冷える梅雨の、静かに一献。

               雨のが聞こえてきそうな場面です。 そして、ぐつぐつごはんの炊ける音も。

                     危険な稼業の常で主人公はを狙われてしまうのですが・・・。
               

                                   つゆたべ


               つゆたべ2016・6     

                   雨の日々よくなりにけり   鳥越すみ子  
                                        雨が降ると、梅酒がまってゆく。
                       
                
                           雨夜経てふかめし酒あり  沢田しげ子          
                                            ふかくなるのはお酒のばかりではありませんネ。   
           
         
                             つゆたべ3                     
                      何年前に仕込んだかもう忘れた梅の漬け。 つぶしてアイスクリームに混ぜて。


               つゆたべ9                             

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                黴し菓子たぶる見てだまりゐる  森川暁水  
                    は大正期のひと。 表具の職人さんでした。 奉公して修行、まさにの俳人です。
                つつましい暮らしの中、黴のきざしたお菓子も口にする奥さん。 お菓子は餅菓子か、お饅頭か・・・。
                    句に詠まれた妻は、いじらしく。 
                              
                            さみしい夜のもの食べるなど  種田山頭火
                     山頭火はで食べたのかな?

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                          って、しいものがいっぱいありますね~。


                                 つゆたべ18
                                

                   や聞いてことばかり  篠田悌二郎 
                       現世とはそんなもの。 せめて、白玉にお砂糖たっぷりかけて食べましょう。

                                               みなさんご自愛を。  カロ                                     

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                                        つゆたべ16
           
                        
 
       今月の  Chat du mois
                    Chat du juin  のねこ


                                      人になるもみえず梅雨の猫   橋閒石 

                つゆねこ0 

                                 雨紋                                 

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                          は窓際に立って外を眺めていた。

                     の真下、雨滴がしたたり落ちているテーブルの下に、が一匹うずくまっていた。

              にいって、あの猫をひろってくるわ。  ぼくがいこうか。  ベッドからが言った。

                               、あたしがひろってくる。  

             に、あの猫、雨に濡れないように、テーブルの下でちぢこまっているんですもの。

                 夫はベッドの端に重ねた枕に寄りかかって本をんでいた。  は階下へ降りていった。

                                                           ヘミングウェイ 『のなかの』                                      
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                    ヘミングウェイ  20代のパスポート

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                                                   Wedding1921 tichuma10
                                                     妻ハドリーとヘミングウェイ スカート丈可愛い。                              
                  つゆねこ17   


               アーネスト・(1899~1961)は生涯に4回結婚しています。

                 最初の結婚は22歳と若く、妻となったハドリーは母性的なで彼を支える女性でした。

                   しかし、生活の拠点を持たず、を先行させようとする夫と、

                      安定を望む妻との間には、しばしば、時にはが起きました。
                                                              あめねこ3
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                                                                   profotofrere


                           は公園に面していた。 大きなが生えていた。  
                 
            が立ち上がって一礼した。  イル・ピオーヴェ  今日はね。  彼女は言った。

                    シ、シ、、 ええ、奥様。 ブルット・テンポ  天気です。  

            彼女は入り口の扉を開けると、外を見まわした。 雨足が強くなっていた。


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                                              c4e42ef1108532b2d74ea1ae013376f6-589x800.jpg
                  でこうもり傘がひらいた。

                           担当のメイドだった。 れるといけませんから。 イタリア語で言ってにっこり笑う。 

        メイドの差しかける傘にられながら、彼女は砂利道を進んでいって、 自分たちの部屋のの下まで来た。


                                  ねこざぶとん1
                                                            清宮質文
            あめねこ3 (2)
                         の姿は消えていた。 感に襲われた。 

                             メイドが言った。 かおなくしになられたんですか。

        猫がいたのよ。 が?  シ・イル・ガット。 ええ、猫が。 猫がですか? こののなかに猫が?

              、そうなの。このテーブルの下にね。 、ほしかったわ、あの猫。 あたし、子猫がほしかった。

                   行きましょう、。  中にもどりましょう。 お濡れになりますよ。
                    
                                                つゆねこ10

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                     ヘミングウェイ夫妻が滞在したイタリアの観光地パラッロ。 海上にそびえる古城 castello di rapallo

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            夫はベッドの上で本を読んでいた。 はつかまえたかい?  もういなかったわ。 

         彼女は化粧台の前に座った。 、髪を長くのばしてみるのもいいと思わない?

           彼は顔をあげて、少年のそれのように短く刈り上げられた彼女のを見た。

             ぼくはの感じが好きだけどな。 あたしはもううんざり。 男の子みたいな髪型はもうだわ。

                            すごくいいよ、のままで。 

                                            おの
                                                             小野隆生

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                                               モリゾー
                       
                  、髪を後ろにひっつめて、を結いたいわ。 鏡台の前に座って、髪を梳きたいわ。 

                       それから、がほしいわ。

             いい加減にして、何か本でも読んだら? 夫は言って、また本に目を落とした。

    かがドアをノックした。 アヴェンティ。 おはいり。 夫が言って、から顔をあげた。

                 戸口にはメイドが立っていた。 でっぷり太ったを腕にしっかり抱えて。

             失礼します。 この猫をにお届けするように支配人から申しつかりました。
                                                     
                                                             『のなかの


                                          つゆ5 (2)
                     つゆねこ8 (2)

                               つゆねこ19

     
                  雨のなかのは、奔放な夫との関係に疲れた妻が望む新たな愛情の対象でした。
            
                               やがてふたりには息子がします。                    

                          しかし、結婚は数年で。 ハドリーと息子は彼のもとをってゆきました。

           男性的な文体を確立したヘミングウェイは『老人と海』など名作をと執筆、ノーベル文学賞を得ます。

     名声とやかな女性関係の一方、依存症に悩んだ作家が終生愛したのはとお、そしてでした。


         matome naver
                           晩年のヘミングウェイと猫とお酒
 
                               ねこ少女5


                                      roaring twentieskilladj
                                                                  鋭い目線の愛猫と。 killadj


              あめねこ (2)   
                                                                                       
                  拾ひたるよりの仔猫の  高浜虚子
                            てられる前、われた後、猫にも人にも物語。


                                   つゆねこ9小   
                  

                猫にまもなく梅雨が訪れる  佐々木洋子
                              音と音が重なると、いつか猫の鳴き声に。

               つゆ6小

                            音を連れ恋猫のもどりけり  永瀬十梧
                                    拭いてもらってね。

                                 つゆねこ6
                                       ドライヤーも済みました。

            
                   の形に眠り梅雨の猫  村越縁
                                  眠る猫は神秘の。 

                                  ねこじゃらし5

                          つゆねこ18


                   の猫で手を拭く翁かな  攝津幸彦
                              猫はきっと

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                                                           トウモロコシどうぞ。
                                                                                 
                  つゆ4

                                                          
            若き日のの休日を横切った一匹の猫。 梅雨がくると読者は思い出します。            

                                     あめねこ4 (2)


                             人になるもみえず梅雨の猫   橋閒石 
                                           は気配あるのでは?
                                      
                                                      つゆねこ11
                                                              にゃ