の一冊
                 livre de karo


                                   一本の置いて来し  諏訪洋子

    諏訪さん11


                                       諏訪さん9
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                         句集『』 インパクトのある忘れられない題名ですね。

                                  その内容は、まるでの花吹雪!
                      
      
         諏訪さん12
       

                   紙ふぶきびた者から蝶になる                  洋子
              
                       これよりはよと髪を梳く

                          蜘蛛の糸は自在に不自由に

                            を漕ぐ行く方へ来し方へ

                               人に火にのあり野の遊び


                  集中から花びらがだすような、

                        紙片、蝶、鶴、紙、蜘蛛の糸、ふらここ、そして足跡と火。 言葉。   


                                           さくら2                                                          

                                 春愁のどこにも見あたらぬ    洋子

                          諏訪さん14  
             
             洋子さんがくださったお手紙に、

                  「先の休日は家族のためにごしました」と、書かれていました。

               と家事に手をつくし、身辺を整える・・・。

                     の中の洋子さんはいかにも、しとやかでおだやかな家庭人という感じがいたします。

                  、ある時の洋子句は、またある時は奔放です。


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                            ダ・ヴィンチ 女性の頭部 newimg
                                                                                 
                                              Leonardo-da-Vinci-Head-of-the-Virgin-Mary-Metropolitan-Museum-of-Art.jpg
                                                          ダ・ヴィンチ 『聖アンナのための素描』       
             椿芯は海鳴りかも知れぬ
                           じっとえているようで、内面はとても自由。

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                           春風にという字解き放つ
                             前句では内部に秘められていたが、こちらでは風のなかに・・。

 
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                        記憶の母は草書体              
                            楷書の母はきりっと、そして草書の母はやさしく。

          かなで書かねば風になれぬ
                           この二句も一対であることを感じさせます。
                                        さくらと秋桜は女性のを負っているよう。


                  コスモス

              
                                     山本丘人
                                                                 山本丘人   
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                        渡月橋の北詰に来て一休みした後、を拾って平安神宮へ向った。

                名木のが、今年はどんな風であろうか、もうくはないであろうかと気を揉みながら、

                           毎年廻廊の門をくぐるまでは胸をときめかすのであるが、

                 今年も同じような思いで門をくぐった彼女達は、ち夕空に広がっている紅の雲を仰ぎ見ると、

                                   皆が一様に、!と感嘆の声を放った。

                                                      谷崎潤一郎 『

                              
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                 彼女たちは、ああ、これでよかった、これで今年もこの花のに行き合わせたと思って、

              何がなしにとすると同時に、来年の春もまたこの花を見られますようにと願うのであるが、

     幸子一人は、来年自分がびこの花の下に立つ頃には、おそらく雪子は嫁に行っているのではあるまいかと思い、

   自分としてはしいけれども、雪子のためには、どうぞそうであってくれますようにとう。

                                                                   『細雪』
                                           諏訪さん3
                                            

           谷崎潤一郎の長編小説『』は、現代で言うストーリー。

             戦前、大阪船場で権勢を誇った商家にまれた姉妹のうち、まだ未婚の三女と末娘。 

                                             209e05ecf5dd8920098f8e9d4e6d98c4 (2)
                                                                  森本草介
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                                     高塚省吾

                雪子は人前ではものも言えないな女性ですが、こと結婚相手に関しては、

                  嫌なものはと、妥協なし。 一方の妙子はたくさんのボーフレンドに囲まれながら、

                          もう本命にめぐまれず・・。

                       のように妹たちを気遣う幸子のモデルは谷崎夫人の

             一本の桜に寄せるいは、深く、そしてです。


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                                          ラファエロ

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                          を背景に、まさに小説通り、実写『細雪』。 撮影は谷崎自身。
                    左から雪子のモデル重子、妙子のモデル信子、ふたりとも谷崎夫人松子の実の妹。
                           おかっぱ少女は松子夫人の最初の結婚の娘恵美子、右端は松子。
                                   谷崎は生きがいのようにこの四人をしました。


                                      満開6

                        たちは平安朝ののようですが、

                   写真が撮られたのは、太平洋戦争に突入するころ。 

            描かれたな上流生活は、時局に逆らうものとして、雑誌掲載を差し止められてしまいます。

                  発表のめどもたたないまま、谷崎はしい生活を壊す権威に抵抗するように、

            戦時下も、やがて「昭和の」と言われることになる作品を書き続けます。

                和でな文章は、無益な争いを憎み、文芸を守るに支えられて生まれました。

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                       鳥帰るの中のうすけむり    洋子
                                 後朝のことばは立ち上るのように消える。

                                              さくら2
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                                      ていねいにたたむ身をたたむ 
                                 身を、という文言に、
                       どこか谷崎風の王朝を感じるのはわたくしだけか?

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                                      河なかにがあるなり朧月
                                         河は身体、川は

                                                  IMG_0445 (3)
                          

               諏訪さん15
                   

                     春の海つなる  洋子

         この句を読んだとき、呼び起こされたのは、

                     花葡萄れる女の  安井浩司

                 殊に団塊の男性たちに絶大な支持層を持つ孤高の俳人のこの句に、

                     句は、嫋々と、しかし堂々と対峙する大きさを持っていますね。


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                      周囲のためにを惜しみなく使って生きながら、

              さんの言葉の中には、誰にも入っていけないな領域があるようです。

                      そこには、一本のが、に花びらを散らしています。


                                            土牛_醍醐
                                                                 奥村土牛 『醍醐』

                               一本の置いて来し  諏訪洋子


                     さくら  
                                                                                  
                                                 諏訪さん1 (2)


                               近づけばいたち、遠のけばしく、

                       諏訪洋子句集 『』は、

                 多面にかがやく女性のことばがりそそぐ一冊です。   カロ

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            歳時記
                    saison de karo 


                                       て封印となす春の雪   髙澤晶子                                 
                                       
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               わたしがもしにいなくなってしまったとしたら、清様、どうなさる?

                  聡子はからそんな風に、ことさら人をおどかす口ぶりをすることがあった。

                     ・・・聴き手をはじめから安心させる悪戯気などはみじんも顔にあらわさず、

                  大事中の大事を打ち明けるように、大まじめで、をこめて言うのである。

                       れているはずなのに、清顕も、ついこう訊かずにはいられない。


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                         いなくなるって、

                             申し上げられないわ、そのは。
                                                                        
                                                           三島由紀夫  『



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                                       春の雪6


                       紫の被布のを胸もとに合わせた聡子が、

                        俥へ上ってきたとき、幌を掲げて彼女を迎えいれた清顕は、

                       雪の幾片を襟元やにも留め、吹き込む雪と共に、

                   白くつややかな顔のを寄せてくる聡子を、

                        平板なのなかから何かが身を起こして、

                             急に自分へ襲いかかってきたように感じた。   


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                        雪2
                                            鏑木清方


                      ・・・お父さんとお母さんが、ゆうべ夜行でお発ちになったの。

                          一人になって、清さまにお目にかかりたくなって、

                              ゆうべ一晩中考えた末に、今朝のでしょう。


                                   春の雪1
                            

                            そうしたら、どうしても清さまとで、

                       この雪の中へ出て行きたくなって、まれてはじめて、

                           こんな我儘を申しました。

                             くださいましね。

                二人のを清顕の持ってきた濃緑の格子縞の、スコットランド製の膝掛が覆うていた。


                            春の雪2


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                                            ローランサン


                         一つのがとびこんで清顕のに宿った。

                             聡子がそれを認めて「」と言ったとき、

              聡子へ思わず顔を向けた清顕は、自分の瞼に伝わるたさに気づいた。

                              聡子が急に目をじた。


                                                   鶴川一郎
                                                                   鶴田一郎

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                                ルドン


                    清顕の胸ははげしいを打った。

                          膝掛の下で握っていた聡子のに、こころもち、かすかな力が加わった。

                     ・・・清顕は自然にを、聡子のの上へ載せることができた。


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                      聡子はを流していた。

                        清顕の頬にまで、それがわったことで、それと知られた。

                                                         『春の雪』


                             春の雪3
                  
                            
                                   あやとりのからく春の雪  渡邉樹音
                              くという言葉に、幼い遊び以上の何かが込められて。

 
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           、ことにその晩年の作中、恋人たちは、強い意志で動いているようでいて、

               は自己というものを持っていません。 

                   外側から彼等を操る不思議な意識、おそらくに導かれて、

                      と、その向こうの破滅へ向かってまっしぐら・・・。

                   『春の雪』のも、彼女は身ごもってのち仏門に入り、

                               彼はを落とします。

                           今年も思いがけないが降りました。

                             こんな日は、運命にって滅びてゆく恋人たちに思いをはせましょう。 💖

                                                                 カロ


             botanyuki (2)
                                                        上村松園                                                    

                  春雪のをもて死を惜しむ  細見綾子 
                             追悼句として詠まれたもののようですが、春の雪にはがこもるよう。


                                春の雪4 (2)


                      向き合うてさらにし春の雪   橋閒石
                                          雪はな恋人同士のように明るい。



                                ゆき3

                                             陌ケ・狙convert_20170104013833


                 の朝のことを思うにつけ、晴れ渡ったあくる日も、

                  わたしの胸の内には、仕合せな雪が降りつづいてやみません。

                    その雪の一片一片が清様のにつらなり、

                      わたしは清様をうために、

                     三百六十五日雪の降りつづける国に住みたいとうほどでございます。      聡子


                                                        三島由紀夫 『

                           諏訪さん4 (2)小


                  春の雪ふるうつくしい   種田山頭火
                                      〈〉という言葉もまた美しいですネ。


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          歳時記
              saison de karo  


                         っ おじちゃんそこのは踏まないで    藤嶋務  


               ryukyusirosumire 琉球列島のスミレ
                                                                 ryukyusirosumire

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                                 ! 気をつけてネ。

                        岡鹿之助三色すみれ
                                  岡鹿之助 『三色すみれ』  

             の花の砂糖づけをたべると
                     
                       私たちはにもどる
                          
                               だれのものでもなかった

                                                      江國香織 『すみれのの砂糖づけ』


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              に、すみれと少女は通い合ってピッタリ。 そこへいくと、       
         
                         っ おじちゃんそこのは踏まないで    藤嶋務  
      
                おじさんとすみれ、なかなかのむずかしい人種?と可憐な花を結んで楽しい一句です。  

                     ようやく春のしが感じられる今日この頃、 

                           の関係性について考察いたしましょう。  


                        岡鹿之助遊蝶花
                                                               岡鹿之助 『遊蝶花』
  

             鹿(1898~1978)は、独自のしずけさが漂う風景や静物を描き続けた洋画家。 

                  画家はを愛しました。様々な色と形、群生のうつくしさ、春に先駆けて咲く潔さ。

                       花の命を画架につなぎとめようとするようなかな情熱に支えられて

                            すみれはこの世ならぬで画面からあふれています。

                
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                                                      岡鹿之助 『青い背景の菫』 

                            岡鹿之助1924
                                 岡鹿之助 20代の自画像 すでにちょっとおじさんっぽい。 ここにもすみれ?

            岡鹿之助捧げもの
                      岡鹿之助 『捧げもの』 すみれは宗教的。
                                                                                                    
                                      冬すみれ4
                                                                                                                           
                          にありし菫の花のいつか  松本たかし
                            な人、時間、信念。 それとも菫はやっぱりすみれか。
                 おじさんは、自分がすみれにふさわしくないことを自覚しているようです。 なんかない。


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           おじさん全開。 おじさんといえば
           
      とは、呑んでいるときは呑み足りず、呑み終えたときは必ず呑みすぎているである。
                                                             内田樹  『おじさん的思考』  


                                      よっぱらい                                             
                                   おじさん酔っ払い 『星の王子さま』の登場人物さん。
                              彼は小さなに一人で住み、日夜お酒を呑んで暮らしています。

                       
                   ☆彡2小
                            ビール2

                                   王子さま  してるの?
 
                                   呑み助   酒んでるよ。

                        王子さま  、呑んでるの?

                        呑み助    れたいからさ。

                                  王子さま  忘れるって、を?

                                  呑み助   はずかしいのをれるんだよ。

                        王子さま  はずかしいって、が?

                        呑み助   酒をむのが、はずかしいんだよ。
                                                       サンテグジュペリ 『星の王子さま』


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                 お酒を呑んでしくいつぶれるためには、人は健康でなければならない。
                                                         内田樹 『おじさん的思考』 

                            みごとなおじさん的ですね。   


                       美 no61褐色と青 1953 マーク・ロスコ1903-70

                                         10885585_10152977806001810_1012616886728301513_n.jpg                   


                     瀕死の古きアジアのなど   赤尾兜子
                                   1960年代をした前衛俳句の代表的な作品。
                  計算しつくされた言葉のマッチングと思ってきましたが、
                       もしかすると、死に瀕するまでしたときの句かも・・・。

                              菫 公爵夫妻とこどもたち
                              ゴヤ 侯爵夫妻とこどもたち スミレ風寒色イメージの絵を選んでみました。

           わたしは家族を描いたが好きだ。 それはわたしが家族を持たない年配のだからだ。
                                                   ルキノ・ヴィスコンティ  『家族の肖像』

                   この辺りになると、おじさんはシビアで悲しい。  


                                  すみれ3
               
                                   
                  がかたづけている春の土   五藤高資
                     おじさんによってかたづけられるもの。 ごみ、古本、古手紙、の土。
                                         

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                        イタタ、 かたづけ頑張りすぎた・・。 

                                               
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       菫ほどなさき人にれたし  夏目漱石
                     小さき人とは、坊ちゃんか三四郎。ということは、本当はきい人か。


                     岡鹿之助献花
                                            岡鹿之助 『花籠』 ここではすみれはわき役。


                     わたくしにも気付かぬ  長井寛
                            誰が誰のことをっているのでしょう。 すみれが人を? 人がすみれを?


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                                                     岡鹿之助 『ばら色の背景の菫』
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                       おじさんも昔は少年だった・・・。


               少年にの咲けるの場所   鷹羽狩行
                               すみれとひみつ。 ふかーいつながりが。


                                                   岡鹿之助三色すみれ小
                         
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                                     yahoo


                          ドイツのお菓子をいただいた時、上にの花の砂糖づけがのっていました。

                        ブランデーの香りがしました。 の匂いもすこし。

                          お味は、ちょっとかった。

                     おじさんのさかも・・・。

                                                              カロ   

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