FC2ブログ
 
       歳時記
             saison de karo 


                                 さに気づく雛かな  寺澤慶信

              ひな00                                                   

                                       ikimoto.jpg                                      

               紀の国屋と申したわたしの家は、親代々諸大名のお金御用を勤めておりました。

                    もわたしのではございますが、

             女雛のの瓔珞にも珊瑚がはいっておりますとか・・・。

                        なかなかにできておりました。

                                                       ひな1
                                      ひな02
                    201602220002281c8_convert_20170816204132 (2)


                            それさえ売ろうと申すのでございますから、

                    、十二代紀の国屋伊兵衛は、どのくらい手元が苦しかったか・・・。

                                                  芥川龍之介  『


                              ひな04                                                                      

          小説『』は、明治維新後、生活のためにられてゆく雛人形とれの物語。

               昔、女性の人生が現在よりもられたものであったころ、

                     雛人形は、をいくらか過ぎたらに仕舞うもの、言われていました。

              長く飾っておくことは良縁からざかることにつながるとされたのです。 !古いですネ。

          やかな人形を仕舞うことはしく、少女たちは、人形とのれを惜しむのですが、

                はいつのまにか過ぎ、少女と人形はします。

              それに引きかえ、 『』の別れは、もう手に取ることのできないの別離でした。


               ひな07
            
              を手放す日は近づいてまいりました。

                   いったん手放すとまった雛を手放さずにすもうとは思いません。

                     ただ、人手に渡す前に、もうよく見ておきたい。

                        が、生来一徹な父は、わたしにせがまれても、

                         一度手付をとったとなりゃあ、にあろうが人様のものだ。

                            人様のはいじるもんじゃない。

                               ねえ、お父さん、後生一生のおいだから。
            
                          

                      父はいきなりわたしをりつけました。

                                                                『

                      ひな06
                                                 ひな03 (2) - コピー

         そのも皆休んだのは十一時過ぎでございます。           

               雛はになれば、遠いところへ行ってしまう。

                 そう思えば、つぶった目のなかにも、自然とがたまってきます。

                  みんなの寝ているうちに、一人で出してみようか。

                        それとも、あのなかの一つだけ、何処か外へしてしまおうか。

                            それからどのくらいたちましたか、

                        眠りがさめてみますと、

                  薄暗い行燈をした土蔵に、か、

                     の起きているらしい物音がこえるのでございます。


                                                   pictame (2)
                                                                 pictame
                           DSC07672 (2)
                                        colors france.com                                                          

                      わたしの枕元には、寝巻のが一人、こちらへをむけながら、

                           座っているのでございます。 父の前には、の雛が、

                      お節句いらい見なかった雛が、べ立ててあるのです。

                                 縺イ縺ェ・農convert_20160222183351

                           tatibana_sakura (2)                      
                                       象牙のを構えた男雛、 冠の瓔珞をれた女雛、

                            右近の、左近の・・・・高坏を捧げた官女、

                                         さい蒔絵の鏡台や箪笥、貝殻尽くしの雛屏風・・・。

                                 縺イ縺ェ・廟convert_20160221221757
                                                             tatibana_sakura.jpg

                  ひな05

                           たとえにしても、別段しいとは思いません。

                      しかし、わたしはあのけにり雛を眺めている、年とった父を見かけました。

                            ・・・わたしとすこしも変わらない父を、

                           しい、そのくせな父を見たのでございますから。

                                                                    『』  
    
                                 20160222190946fd5 (2)


                  ヒロインのに気をとられ、、

                     わたしは長い間、のことば、「しく、おごそかな」に気がつきませんでした。

                        時世のに翻弄され、娘の雛人形さえ売り渡さねばならない父は、

                         れの、ひっそりと雛を飾ります。

                           『』は、少女と人形の別れであると共に、

                            男性が、自らの属したと別れる物語でもありました。
                                                                   カロ


               ひな003   
                                                   わたしのおばあちゃんのものです。

                       では・・・男性による雛の句を。  

                                           
                    手にうけてよりかるし雛あられ  久保田万太郎 
                                 よりかるい雛菓子は、多分愛する人がに乗せてくれたもの。
       
                                                 ひな1

                  
                       雛の軸少女と老女寝て   原裕
                             この句には長い時間がれていますね。 それともほんのか。
                                        
                                ひな08

              ひな01 - コピー


                            恐ろしきことをたくらみ真夜の雛   行方克巳                                  

             雛壇にしありにけり  長井寛

                                              馬場あき子さんの短歌を思い出します。
          五十代それぞれもしくくさみしく事くわだてよ    あき子 


                             ひな002
  
                                                                           
              来て開けてゐる雛の店   鈴木鷹夫
                                         魅力的な御店主!

                          ひな8 (2) 
                                ハーイ 鍵開けまーす
                    
                                                ひな001
                             

                 雛あらばあらばと思ひけり  正岡子規
                               夭折の大人と評され続ける子規。 えば妻も子もいないのですね。  


                                ひな9
                                                                
                                                         
         読んでみれば、男性の詠む雛も・・・。     カロ
                    

                                                             ひな03 (3) - コピー
スポンサーサイト
 
        の一冊
                livre de karo                


                  れし日も白梅けてゐたりしか  吉村毬子


                           梅5

            梅scontent小
                           俳人の季節にれました。

                       今年、吉村さんはその日をえることはありませんでした。

                     昨年7月に逝去。 療養中でした。

                        数年前、吉村さんが著作を送ってくれて以来、

                           わたしと彼女はの書簡のやり取りを続けてきました。

                        好きな作品がかさなり、彼女のなことばは、

                           わたしをはげましてくれました。                  カロ


               梅11
                                                      吉村毬子 『手毬唄』
           

                     の梅 と真水に還る  吉村毬子

                                        まだ五十代。 こんなに早く・・・。 惜語は尽きません。


                                     梅2        


                       虚空にての二月十五日           毬子
                           
                            のものらに抱かれ流し雛

                                     指切りのかなや鳥雲や

                                                  
               梅yokohamano


                               の中で土のを聴いてゐた   毬子

                          鳥や雲をして雲になる

                水鳥のる手毬唄  


                               二月9
           

                    感覚的で緩みのない言葉、句はうつくしく、ふかく、そして、どこか淋しかった。


             梅10



             梅のに梅の花咲くをまことに知るはたはやすからず   岡本かの子


                熱海から武蔵野へ帰って来てから二月の末にが降った。

           雪はただいのよ。 熱海のとおんなじに白いのよ、けど積るとそれが白いままにるのよ。
 
       白いいろ、白いものはただ。 白ばら、白百合、白壁、白鳥。 紅いものには紅百合、紅ばら、紅珊瑚・・・。

                                                                   岡本かの子 『明暗』

 
                 ピアノ5


              の短編小説「」で、雪や梅の白、ばらの紅を語る妻。 彼女の夫は目が見えません。

                     外界の色を伝える妻へ、夫はしい表情を向けます。

                                           la naige en poems2 

                は視力をはさんで異なる世界に在ることに悩みますが、

                     やがて、互いを互いのままにけ入れ、

                           妻の信頼は、夫の音楽の才能を開かせます。

               
                    梅3小

             の樹にの花咲くをまことに知るはたはやすからず     かの子


                       とは運命のことか。
                      
                     の花がの花である〈ことわり〉を知ることは、

                 自他が認め合い、することへつながってゆくのでしょう。                
                                                                           カロ               

                                  6b77fe13f7060f9069160fff70d5b1ec.jpg
                                                                       尾形光琳        

                            neko_008_07_sn.jpg

                                  
               へ、女性俳人たちの、そしての句も・・・。
                             
                    梅1
                                    吉村さんと同年代の女流が、最近送ってくださったポストカード。 福田平八郎画


                        つめたき石に腰かけて  池谷秀子 
          。 たい。 端正な音韻と切れ。 女性の献身とプライドが句に両存しています。

                                                                               
                              梅7
                   

                             白梅のかゞよひふかくこゝろ   桂信子
                  春にんじて咲く梅。 的な詠み手であった信子が感じ取った明るい予兆のなかの



            夕空のるばかり梅咲けり  金田咲子
                                 え入るとは、なんとかでしいフレーズでしょう。


                              ume022001-thumbnail2.jpg

                                        2010071921240111e (2)

                                                 img_151204_01.jpg    

                                                      
             乳房はか白梅か   栗林千津
                                     も欲望もことばも、闇の中で白くえています。 

                     
                        夜は白梅の香を放つ  山﨑百花 
                                           白梅のは、天女の手から生まれてくるよう。


                                                 a2c58a8d4a13c60a952b5a42bfe095e4.jpg
                                                                      土門拳
                      梅4


                                の人となる一本の見て  手塚美佐
                                               野に立つ梅は・・・きっとちゃん。



             blog-list-160112-001.jpg
                                                      尾形光琳 『紅白梅図屏風』


               紅梅の咲き白梅を   野澤節子 
             紅梅と白梅は並んでいてもいのですね。 作者もこの屏風を思い浮かべていたのでは?
                            

                     梅8

                                          梅9 (2)
               

                  白梅の一枝のれて変る   工藤たみ江
                           女性のエポックメーキングなが世界を変えることみたい。


                              梅6
                                                     白梅のつぼみは萼の紅とともに。

 
                         れし日も白梅けてゐたりしか  吉村毬子
                           吉村さんのことばは、いつもわたしとです。

                                                                            
                                             梅12

                                    梅scontentsyo

 
     の一冊
               Livre de karo


                           の少年の白くなる   西躰かずよし

                海3
                                                                西躰かずよし 『窓の海光』


            西さん(1972~)のうつくしい句集『』には、

                 がありません。 


                                    私のん中にが降っている  かずよし 


                            バター3小
                                                   冬 2018 yokohama

                                                        
        所属誌ホームページの欄には、こんな風に書かれているだけです。

          京都府に生まれる。それから、なことがあった。

         朝、コーヒーを飲み、夜、グールドの弾くを聴いた。最近、めのように句を作るようになった。 
                      
                                                                      西躰かずよし 


             街やさしくなる弾く   かずよし


                            ラウラル・デュフィ1877~1953小
                                                            デュフィ     
                                 

                    わたしたちは、だけに頼って西躰さんに近づいていかなければなりません。

                        、本当はそれがあたりまえのことですよね。       
                          

                                             s-l300.jpg
                                                          マチス ニースの窓

                         に置けば     かずよし        

                          俳人はです。わたしも黙って書き写すことにしたいと思います。  カロ    
                         

                Mary Morgan Mortan
                                                      Mary Morgan Mortan                       

                  いに行く父子                      かずよし         

                                     の高架あるのまち


                            ravello-ceramic-lemon-plate.jpg


                                           二月3

                       IMG_0442_(2)_convert_20170601225103.jpg

           
                     のあかるいのいろ                  かずよし

                                無理の出来ないを見に行く  
                                                            
                           鉄格子に燃やす

                  もない手のひらがになる


                        二月2
                                                           yokohama


                      一日八回のに馴れる     かずよし

                          なタオルをもらう

                               一日のパンをに分ける

                      明日することをさがす

                             洗面器にを入れる

 
             時雨 naniyokisetsu (2)

                            小クレー 花ひらく木をめぐる抽象 1925
                                               クレー                                        
            
                            な折り紙でつくる               かずよし
                                                       
                                    までの廊下が

               もない部屋にがみえる 

      
                          海2
                                                            西躰かずよし 『窓の海光』


                                         Jeff-Hoare-A-sea-symphony-1866036.jpg
                                                                    jeff Hoare               
                   空0l (2)
                   
 
                        西躰さんの句体は五七五を守る定型をれたかたち、いわゆる自由律です。

                       でも、彼には、自分自身で決めて守っている詞のがあるようです。

                  それは、えば、

                           むずかしい言葉を使わないこと。

                         なるべくない言葉で句を作ること。

                       をつかないこと。

                    誰もつけないこと。

                自分を、、誰かをめるために作ること。

                              わたしも、められました。 ありがとう。
                                                             カロ

                            海0
                                         西躰かずよし 『窓の海光』


                                      二月1
                                                                        yokohama
                    
              
               4二月
                  この冬出会ったスタイリッシュな女性。 お顔を出しても良いとのこと。 ありがとうございます。カロ yokohama    

                                           海4 (2)
                                                愛らしいリップ、パールイヤリング、ばら色の頬。お元気で!


                  二月5
                                                        yokohama
                                    

                           冬の終わり     西躰かずよし 


               バター4
                               yokohama   

                                   海5