歳時記 

                   saison de karo 



                                 算術のしのび泣けり夏   西東三鬼


                            螳ソ鬘鯉シ托シ狙convert_20150821002223



                    夏休みの日は、

                    電車通りにある善光寺さまの縁日にあたっていた。

                    父は留守で、僕は母と見物に出かけた。

                    境内には夜店が行列していた。


                                 縁日1


                    鈴のついたオマモリ袋や、新発明のダイコンおろし器はつまらなかったが、

                    ブリキ製のシャープペンシルに気をひかれた。

               
         宿題3


                                      縁日2                                          
                                      

                    のシンが普通の文具店で売っているのとは違った仕掛けで出てくる。

                    いつまでも見ようとする僕を母は引っ張ったが、

                    あきらめにくかった。


                                     螳ソ鬘鯉シ論convert_20150821011749


                    「あんなのがあるとをぬるとき便利なんだがなあ。」

                    効果はあった。

                    しかし、母はまだ手をフトコロの財布までもって行くのをためらっていた。

                    「宿になってるんだよ。」

                    母は僕を見た。もう少しだ。

                    「ウンと出てるんだ。夏休みの宿がこんなにあるんだ。」

                                                            安岡章太郎 『宿題』


                                         宿題12



              宿題6


                                                 宿題2

                    七月二十一日の日付けから真っ白のままの宿題帳を見て、

                    はじめて母はとした。

                    しかも、そのあとから九冊も白紙の帳面が出てくるので、

                    いっぺんに観に取りつかれた。

                    き出した母を見て、僕はどうしていいかわからなかった。


                           宿題4     
                                                             

                             「お前もになさい。あたしもぬから。」

                             しかし、母は、管を持ってこいと云ったくせに、

                             僕が台所へそれを取りに行こうとすると、

                             いきなり僕を引きずって机の前につきすわらせ、

                             自分もを持って帳面にしがみついた。


                                                  宿題5


                     宿題1



                            腕が重い棒みたいになって指からがころがり落ちそうになるころ、

                       僕は宿題のやり方がだんだんわかってきた。

                            算術は答えだけ書くことにした。

                       ツルカメ算は、問題を読まないでも、十匹、三匹と書けば、それですんだ。

                  僕がはやさで片づけはじめると、

                            母は競争心を感じた。

   
                                         宿題13


                    「ノ主ナル海産物ヲ挙ゲヨ・・・。」と云う問いにぶつかって、

                            かんしゃくを起こしながら、 「コンブ、まぐろ、かつお・・。」などと、

                        きな字で書きはじめるのだった。
                                  


                              螳ソ鬘鯉シ托シ農convert_20150821034638



                                        宿題が終わったのは七時で、

                             あんまり早くできすぎてもな答案が気になるところだった。

                                                               『宿題』



               宿題10

                         
                                                   宿題1

                       
スポンサーサイト
 


              Chat du mois   の猫

                                 Chat août  
           


                     短夜や猫のに目覚めおり  佐川義成


                                         imagesNW330F0H.jpg


                縺ュ縺薙>縺ウ縺搾シ托シ托シ狙convert_20150730235537
                                     


            庭は漆のような闇にかえっていた。

            は再び寝床へはいったが、やはり具合よく寝付かれない。

            ふと幸子は、だれかが微かないびきをかいているのに気付いて、

            なおよく耳を澄ますと、それはであるらしかった。


                                                          谷崎潤一郎 

                                       
                   sun996 - コピー



            彼女はその細い、仄かないびきを、

                       こんなにも可愛いいびきがあろうかと、
 
                                  感心しながら聞いていたが、

                                      その時寝ていると思ったが、

                               「ちゃん、起きてるのん?」と、静かに寝姿を崩さずに云った。
                         
                         「ふん、・・・・あたし、ちょっとも寝られへんねんわ。」

                                  「うちかて、寝られへん。」

                  「、さっきから起きてたのん?」

                     
                                                ねこいびき7


                             「ふん、・・・うち、場所が変わると寝られへん。」
             
            「ちゃんはよう寝てるわな。いびきかいてるわ。」


                                                      ねこいびき6


               ねこいびき11


                          縺ュ縺薙>縺ウ縺搾シ胆convert_20150731001411
                          
                                     

            「ちゃんのいびき、のいびきみたいやわ。」

                         「ほんに、うちのがあんないびきかくわな。」
      
                                   「のんきやわ。明日見合いや云うのんに・・・。」


                                       ねこいびき9



            「ちゃんみたいに、何遍もしてたら、見合いも平気になるもんかしらん。」

                                                                        『』                                                                                             
                                     20150730235657ef2_convert_20150801042754.jpg                                 
              

                          谷崎潤一郎の長編小説『』は、

                       大阪の旧家の令嬢、雪子が数年にわたって繰り返す「お見合い」をひたすら追った物語。

                  戦前、古い家のこと、雪子姉さんの後でなければ、

               妹の妙子は、と結婚できません。

                        姉の幸子(谷崎の妻がモデル)も、

                                 ふたりの妹の行き先を思っては眠れない夜を過ごしますが・・・。

                         当の雪子はいびきをかいて


                                                  ねこいびき1 - コピー


                                        ねこいびき5               

                        
                                           ・代・縺薙>縺ウ縺浩convert_20150730231442


              、遠縁の素封家まで出向いていった今回のお見合いも、

                   あえなくご縁のないことになってしまうのでした。・・・ザンネン。                    
                                                                カロ


                                                ねこいびき10

                                                                                                                       


        歳時記 

              saison de karo  


                      プールから子供の連れ戻り 髙澤晶子 


                  プール2



           近くの大学のを借りて、子供に水泳を教えてくれる。

           今ならきがあるそうだけど、太郎を入れたらどうかしら。

           妻は私に相談した。

           「。ぜひ入れよう。」

                                            柏原兵三 『スイミング・プール』


                                             プール5


           その日の夕食に私はを二本も飲み、

           自分がどんなに小学校時代に水泳がみだったかということを話してした。

           「お父さんはな、水泳の選手だったんだぞ。」

           「?」と太郎は言う。

           「五年生の時には、神宮プールの大会に出場したくらいだからな。」

           「?」と妻がいて言った。


                プール8


           「本当だよ。東京の代表として、クロールの四百メートルに出て、一等になったんだからな。」

           ・・・ビールのいも手伝って、つい大きなことを言ってしまった。


                           プール6


           まず東京の大会というのは渋谷区の大会のだった。

           神宮プールというのは、富ヶ谷国民学校のプールというのが本当だった。 

           ・・・一等というのもだった。

           本当はの差で二等になってしまったのである。

                                                

                                                   繝励・繝ォ・誉convert_20150706070431

                        プール12
                   
          
              いつの間にか、子供はときどきプールのに手をかけて休みながらではあったが、

                  二十五メートルげるようになり、

                       やがて、ほとんどつかまらないでげるようになり、

                             次の夏には、四往復、つまり百メートルもげるようになった。


                                   プール1                                         


                         ある日、私はをかねて子供をプールに迎えに行った。

                    子供は一コースしたらしく、ビート板を使わず、クロールで泳いでいた。


                                              プール3


                帰り道、子供は自転車に乗り、

                   私はんで歩いた。

                「うまくなったな。」と言って私は子供を褒めてやった。


                               繝励・繝ォ・兩convert_20150706072835

                              
     
                   「僕が泳いでいたのを見た?」

                       「あ、見たよ。」

                        ・・・やがて、子供はふとが付いたように、
   
                            「お父さんは僕位の時どの位泳げた?」

                               「一年の時だな。」

                                  「違うよ。僕はもう二年だよ。」

                                     「そうだったな。」

                              「二年生の時はまだ水泳を習う前だから、ほとんど泳げないもだったな。

                                   精々犬かきで三メートル位だったろう。」

                                         「ふうん。」子供はそうに言った。


                   プール4

                                  繝励・繝ォ・托シ神convert_20150706073440


                   「僕はもうメートルも泳げるよ。」

              「そうだってな。すごく頑張ったもんだな。」

                  「うん。」と言って、子供は自転車のんで速度を増した。

             そして、私よりずっとへ出て一回りしたのち、また私の脇へ戻って、

                「お父さんは僕位の時どのくらい泳げた?」また同じ質問をした。


                                         20121007s003.jpg

              プール11



                                 「そうだなあ。精々犬かきで三メートル位だったな。」と、

                             私はなく同じような答をした。

                        しばらくして、子供はまた聞いた。

                   「お父さんは僕位の時どの位泳げた?」

               「・・」と答えかけて、

          「もういい加減にしろよ。お父さんをからかうんじゃない。」

                        「。もうやめるよ。」子供は無邪気な笑い声をたてた。

                                                                 『スイミング・プール』

                                繝励・繝ォ・托シ農convert_20150706075041