歳時記

                saison de karo 118


                             夏山の大きなを抱きに行く   片岡資郎


                   山10


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                        の広い縁を目深に下げた一人のの中から出て、

                                 山道を歩いて行った。                                   

                             
                           人気のないは、なんともいえないけさだった。


                          やがて、絶え間ない音楽と入り乱れた声が、のように響いてきた。

                       小さな急な坂を越すと、そこはの町のであった。

                                                         ヘルマン・ヘッセ   『』   


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                                          無数の屋台でがわめきながら商品を売っていた。
                                       

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                                 ソ^セージ


                    たちは金メッキのラッパを吹き、

                  肉屋は煮えたつおおきなからほやほやのソーセージをすくいあげた。
                                                       
                      森から来た男はそれをながめた。

                           彼はどこにも立ち止まらなかった。

                              
                              コッヘム
                                                           

                 中心のに出た。

                      突然、彼は近くで何かが目のくらむほどるくきらめくのを見た。

                            まるでがその一点に集中されたようであった。


                                  山9

            やま


                      それは露店にかかっている大きなだった。

                  そこには、大きいのや小さいのや、卵型のや、吊るしや、手もあった。

                 男は、求めるものを見つけたように、立ち止まった。


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                     を覗き込んでいたたちのひとりが言った。

                「ああ、私の色で、ひざにとどくほど長ければいいんだけれど・・・。」


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               はぎょっとした。鏡の中に、見知らぬが立っていたからだ。

                「お前さん、ほんとにそう願うのかい。」
                     
                  その時、 もう一人のが言った。

                          「わたしは国中で、いちばん身軽なり子になりたいの。」

                  よそのは帽子の縁を上げた。彼は微笑みながらこう言った。

          「それ、お前さんたち、もうしがったものを持っているよ。」  
                                                      
                     たちは急いでを見た。

                       最初の娘はひざまでとどくふさふさした色の巻毛を授かっていた。


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                  次の娘は、突然、赤い皮の靴をはいて、子鹿のようなの上に立っていた。

 
                            山6


               さあ、広場は大騒ぎになった。みんながい事を口にした。

                  それはすべて本当になった。                                       
               
                      を願った者、大きな宿屋をごと手にいれた者、を治した者、

                           い事がかなった同士は、町をそぞろ歩いた。

                          なくなった孫をもう一度このに抱きたい、と願ったおばあさんのところに、

                     い馬に乗ったが駆けてきた。


                                                  シャガール

                山1

                                                   

                  ついに、この町でいごとをしなかったのは、たったふたりきりになった。

                   それは、ふたりので、

                   街はずれの古い家の部屋で、

                 ひとりは部屋の真中に立ってを弾き、

                     もうひとりは部屋の隅に腰かけ、すっかりき入っていた。


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                  家主が戸をたたいてこう言った。
               
                「悪いことは云わない。早く広場へ行くんだ。」

                   ふたりのは窓の外が騒がしいのに気付いた。

                     ふたりは外へ出ていった。

                         鏡屋の前に見知らぬが立っていた。


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                   「君たちはい事を急がないんだね。 わたしはもう出かけるところだった。

                     しいものを言いたまえ。遠慮はいらないよ。」


                    ヴァイオリン弾きは眼を閉じて考えた。  
                                       
                「がひとつ欲しい。
                        
                  がいくら騒いでも、騒ぎがぼくのところまで届かないように、すばらしくけるのが・・・・。」


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               すると、彼は見事なヴァイオリンを手に持っていた。

                  彼はそれをあごに当てるとき始めた。

                  それを耳にした者は、みな立ち止まって、な目をした。

                   しかし、弾きは、みごとに弾くにつれ、目に見えないものに引き上げられ、

                    空中にえていった。


                                             vaiorinn



                 「では、は、何を願うかね?」  

                男は最後のに聞いた。

                  「あなたは、ぼくから弾きまで奪ってしまった。

                   ぼくは、聴くことと観ることのほか、人生に何のみもない。

                    そして、なものを考えていたいだけだ。

                       だから、ぼくはになりたい。

                        いただきがの上にそびえるほど高い山に。」


                                山5



                   すると、地下がとどろきはじめ、あらゆるものがれはじめた。

                          人々は、町の後ろに大きな山が、の中までもりあがるのを見た。


                     山2



                        彼らが新しいの岩々を見上げると、

                      そのずっと高いところを、あの見知らぬが、去ってゆくのが見えた。

                                                            『』   

                          

                                          無題


                                                                                      
                 
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             今月の  Chat du mois

                       月の猫   Chat mai  


                         雰囲気を感じたが膝を降り  須磨子  


                            ねこ手3
                                                                                                                 

               女の人の室である。             
               この女の人は平常可愛い猫を飼っていて、
               私が行くと、抱いていたから、いつもそいつを放して寄来すのであるが、
               いつも私はそれに辟易するのである。


                                               ねこ手7 (2)
                                        

               抱きあげて見ると、その仔猫には、いつもかな香料の匂いがしている。

                                                   梶井基次郎 『



                                      ねこ手15 (2)



                                 ねこ手9
                                                

                         ねこ手12                                                          
                               

              ある日、彼女は、の前で化粧していた
              私は新聞かなにかを見ながら、ちらちらその方を眺めていたのであるが、
              と驚きの小さな声をあげた。
              彼女は、なんと! 猫ので顔へ白粉を塗っているのである。



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              「それなんです? 顔をコスっているもの?」
              「これ?」
             彼女はとともに振り向いた。
             そしてそれを私の方へ抛って寄来した。
             取りあげて見ると、やはり猫のなのである。


                                         チュシャ1



             「いったい、これ、どうしたの!」
             訊ききながら私は、今日はいつものがいないことや、
             その前足がどうやらその猫のものらしいことを、のように了解した。
             「わかっているじゃないの。これはの前足よ。」 

                                                            『』 


                   ねこ手8 (2)



                                          ねこ手6
                                                                                      

                      おそろしい彼女・・・。実は主人公のだったのです。 カロ

                        

                                        ねこ手

                     かった!   ねこ            


                                                  ねこ手10
 
   

              歳時記

                        saison de karo  117



                               欺かぬ野ばらのが浮かびたる こうのこうき 


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                           きな国と、それよりはすこしさな国とが隣り合っていました。
                           
                           当座、その二つの国の間には、

                           なにごとも起こらずでありました。

                           ここは都から遠いであります。

                                                          小川未明 『』   


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                        そこには両方の国から、ただ一人ずつのが派遣されて、

                              国境を定めたを守っていました。


                                  
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                           大きな国の兵士はでありました。

                                  そうして、小さな国の兵士はでありました。
                                                  
                                             
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                            始め、二人はろくろく物も言いませんでしたけれど、

                                いつしかしになってしまいました。

                                    他に話をする相手もなく退屈であったからであります。    

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                                   国境には、一株のがしげっていました。

                                                早くからみつばちが飛んで来ました。

                                                             1012b.jpg                                               
                                            
                              のどかな昼ごろ、二人は向かい合って将棋を差していました。

                                      
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                                             青年も老人も、いたっていい人でありました。

                                       はこずえの上で鳴いていました。

                              いばらの花からは、よいりを送ってきました。


                                       野ばら5

                                                               DSC_1764_convert_20150408170906.jpg


                    はやはりその国にもあったのです。
 
                         寒くなると、老人はの方を恋しがりました。

                              「早くひまをもらいたいものだ。」 老人は云いました。 


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                    「あなたがおりになれば、知らぬ人が代わりに来るでしょう。

                            どうか、もうしばらくいてください。そのうちにが来ます。」 青年は云いました。

                               野ばら2

                         やがてが来ました。その頃、二つの国は何かの利益問題からを始めました。

                               二人はの間柄になったのです。

                         それは、いかにも不思議なことに思われました。


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                            「さあ、お前さんとわたしは今日からどうしになったのだ。

                        わたしはこんなに老いぼれていても少佐だから、

                    私の首をもってゆけば、あなたは出世できる・・・。」 老人は云いました。
                                                    

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                                                 はあきれた顔をして、

                                           「何を云われますか。

                                     どうしてあなたとわたしがどうしでしょう。

                             わたしのは、ほかになければなりません。・・・」


                                    青年は云い残して、ってしまいました。

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                                        はただ一人取り残されました。
 
                             の花が咲いて、みつばちが群がっています。

                        老人は青年の身をじていました。

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                              ある日のこと、そこをが通りました。
 
                          老人は戦争についてたずねました。

                    旅人は、小さな国が負けて、その国のは皆殺しになって、

                          戦争はわったことを告げました。

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                        老人は、それならも死んだのではないかと思いました。

                         そんなことを気にかけながら、石碑の礎に腰をかけて、うつむいていますと、                         


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                         かなたから、おおぜいの人の来る気配がしました。


                      見ると、の軍隊でありました。

                    馬に乗ってそれをするのは、かのでありました。


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               野ばら4


               やがて、老人の前を通るときに、青年はをして、のにおいをかいだのであります。

                  か云おうとすると、老人は目が覚めました・・・。

                                                      『
                    
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