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    カロ歳時記 
              saison de karo 

           月光に透けて心の見えざるか    文挟夫佐恵
                                   
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           ローラ、ローラ.      なあに、お母さん。

              お皿なんか放っといて、こっちへ、いらしゃい。

      ローラ、ここへきて、さ、おさまにい事をするの。

      おさま・・・おさま?
                                                
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       可愛いおさま、のおみたい。さ、ローラ、

        こっち向けて、の肩ごしに、いごとをするの!

         さ、早く! 早く、おいしなさい。

     何を、おいするの、お母さん。

  を!

    テネシー・ウィリアムズ 『の動物園』
           
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     お母さん、ローラは、他のとはずいぶん違ってるんですよ。

     わかってますとも、他のと違ってるところが、あの子の良いところだと思ってます。

           いいとばかりは、映らないでしょう。はじめて会う人の目には、ね。

      屋も、度がはずれてますよ。

 自分ひとりだけのに閉じこもったきりでしょう。だから、

          他人に言わせると、多少、わり者だってことになるんです。

       いけません! そんな言葉。わり者だなんて。

     事実は事実として認めるんです。ローラはわり者ですよ。

       ちっぽけなの動物たちのに、生きてるんです。

        せいぜい、古ぼけたレコードをかけるくらいが関の山、何にも他にしやしない。
                                
   遑晏ュ舌・・狙convert_20140922000519                                      
             
     小説家志望のトムはの三人暮らし。

     部の名門だった家は事業の失敗、父の出奔で破産、

       トムは倉庫に勤め、一家はびたアパートに逼塞している。

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         ローラになんとか結婚相手を見つけたい母アマンダ。

       ところが、ローラは人前でしゃべることも出来ないな娘。

      古いレコードをかけては、の小さな動物たちを磨いて暮らす。

          倉庫に勤めている人で、かお姉さんのおになってくれる人、いない?

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               トムが連れてきたのは仕事仲間のジム。

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     わたし、の蒐集をしてますわ。

       可愛いの製品、たいていは装飾品なんですけれど。

    製の、小さな動物が多いんですの。とっても可愛いちっぽけな動物。

    だなんて、うちの母はそう呼んでますの。

           ご覧になります? これ、もう十三才になりますの。

  気をつけて。 をするとこわれますよ。

       お上手ですわ。

       りの方へ近付けてやってください。

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       ねえ、いったい、こいつ、なんて動物?

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      額に、が一本生えてましょう?

         ・・・? 

       でもなんて動物、もう現代には、いないんでしょう?

      そりゃあ、いませんわ。

                   ガラスの動物園2

       ローラ、いいですか、僕にあなたのようながあったら、
                     
    トムと同じように、自分の友達を呼んできて、紹介すると思いますよ。

         僕の場合、僕の立場としては、いわば、赤札がついているんです。

    ベティーってなんですけど、

          あなたと同じで、やさしくて、おとなしくて、・・・僕たち、うまが合うんです。

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                 ジムは帰っていった・・・・。


        あの人がしてるなんて、一言も云わなかったね。あんた。          

           母さん おどろいたなあ、ちっとも知らなかった。

     倉庫でいちばんの親友だって話じゃなかったの。 倉庫ってのは、仕事をするところですよ。

     倉庫にかぎらないんでしょ。あんたって人は、どこへ行ったって、
                 
   の世界に住んでるんだから・・・。

        何処へ行くの? あんた、何処へ行くの?

     映画へ行くんですよ。 行ってらっしゃい。わたしたちのことは何にも考えることはないんだから。

    夫に捨てられた親、内気で失業した
     
           そんなものは、どうだっていいんだから。

    行ったらいいさ。行きなさい、の世界へ!

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      ぼくはの世界へは行きませんでした。

  もっとはるかにいところへ行ったのです。

 何がいって、のへだたりほどいものはないんですから・・・・。

   『の動物園』

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   今月の    Chat du mois
              のねこ Chat septembre


                    秋めくと猫に眉毛を描く女    飯田綾子

      縺ュ縺薙€€逵会シ神convert_20140720151203

           薄いのワンピースを着たと、

          のリボンの飾りがついたわら帽をかぶった叔母は、

          車の後部座席に正坐して、何かれ物はないかと話し合っていた。

              宮本輝  『
               
               ねこ 眉あ                                           

                     ねこ 秋2

        ねこ 眉6

               「もうええわ。らんもんがあったら、向こうで買うたらええねんやさかい

    で夏を過ごすことになったのは、  私が前の年に結核にかかったからだった。
                 
              「ごはんごしらえをする者がおらんと、生活でけへんがな。

        せっかく行くんやから、とめさんもてあげよか。
              
          はそう言うと、すぐに叔母に電話をかけた。叔母は亡くなったの妹だ。

                   一人暮らしの叔母は大喜びで誘いに応じた。

         車の中で、と叔母は昔の話ばかりしていた。

       運転席でふたりの話を聞きながら、 今まで誰にも話さなかった事柄を、

    が何の屈託もなく口にしているのを

          に感じていた。

 は私が高校生のころ、自殺を図ったことがあった。

                                  ねこ 眉8

  「おちゃんはをつくっておらんようになってしまうし、

      商売はあかんようになるし、毎日借金取りは来るし、

    ええい、もうんでしもたれと思てん」

                     ねこ 秋1
                                                                 
            「東難波で降りたら、バス停の前に食堂があって、

    そや、ぬ前に何かおいしい物を食べとこ、

          うな丼を注文して、お酒も一本たのんだんや」

     は両手で口を押さえて笑った。

     「を飲んだ瞬間、どんなことを考えた?」

     「何にも考えへんかった。しばらく横になっているうちにってしもた」

               ねこ 眉04

    私たちが借りた家は、を百メートルばかり行ったところにあった。

       鬱蒼とした木々に囲まれたの平屋だった。

  は持ってきた荷物の整理を始めたが、

       突然っと声をあげて私を見た。

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         「を忘れてきてしもた」

        「?」

              ねこ 眉1

     「どないしよう、あれがないとるねん・・・

           駅の近くに品店はないやろか

                今から買いにいくから、車に乗せてえな」

         私とはまた車で駅前まで行った。

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        ちょうど駅の前に屋があり、化粧品メーカーの小さな看板に灯が入っていた。

            食堂や洋品店らしきものが見えていたが、

    にかすんで人の姿は見えなかった。

                 が寝る前にを塗るようになったのは、ここ一、二年のことだった。

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       頭髪は黒くめていたが・・・・・

  寝床にはいる時、布団の上にして、

     念入りにを塗るのである。

      その訳を聴いても、はただ照れくさそうにうだけで、何もえなかった。

      宮本輝 『

                      ねこ 眉い
                                                                                    
 
    カロ歳時記 
          saison de karo 104                 

                    月光に半紙を折ればナイフめく 九牛なみ

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     その、一枝は連絡船で下ノ関に着いた。

            田舎の町まで行く汽車の出るまでには、まだ時間がある。

    と町を歩いていると、金物屋があった。
                       
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            そのほんの一町ほどの町中に、なぜ金物屋があったのか。

  田舎の町では見られないしい電灯の光の中で、
                      
    いろいろな刃物が列んでいるのを見ると、

                  一枝はさっとその店へ這入っていったのであった。

       宇野千代  『或る一人のの話』

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      があった。があった。ナイフがあった。
               
  庖丁があった。きちんとよく整頓して列べてあった。

      「を下さい。」

                店番の老爺は何の躊躇もなく、紙に包んでそれを一枝に渡した。
               
        小刀のような鞘の短い短刀であった。

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          一枝はいま、自分が何をしたのか考えても見なかった。

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         いま、何かしていても、次の瞬間には何をするか分からない、

      そういうなっかしいがいる。

    そのは良いでも悪いでもない。
                                                  
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      ただをするのか人にも分からないが、自分にも分からない、一枝はそういうであった。
 
         『或る一人のの話』
                                
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                                    宇野千代
              
                     ブラッサイ

            1945~2013

                            語学家   句作は静謐 思索的。

             月光に音あらばこのさざれ波      なみ

         ナイフ