カロ歳時記

        saison de karo 103



                噴水の町少年ばかりで森に入る 和田悟朗


                              鹿05



              。人それぞれとよく言うが、

              まったくその通りだ。

              たとえば私が「」と言えば、

              それを聞いた人はそれぞれ個人的なでとらえるだろうし、

              それは私のするものとは全然違っているだろう。

              私は私のの話をしよう。

              ・・・・陽光のもとで白く光っていたは、目をとじてもなお、

              のなかに光っている。


                                              スティーヴン・キング 『スタンド・バイ・ミー』


                        鹿7



  そのが一滴もふらなかった。

                      新学期の始業の前、最後の曜日もそうだった。

                                         やがてになるというのときだった。

                                                 私たちは私たちだけでそのを目指した。


                        鹿02


        「次のがいつ来るか、誰か知ってるか。」

         はかなり粗雑なものだった。

             6×4インチの長く狭い木の台に、レールが敷いてあるだけだ。

             そこからが見える。

                 もしが来たなら、木の台にぶら下がってを避けることができるかも知れないが、

                     

                         猛スピードで走る列車のあおりに吹き飛ばされて、

                     下の浅瀬の底にある岩にぶつかり、んでしまうことになるだろう。




             鹿03


 
            「号線の橋がある。」私は言った。

                   テディが叫んだ。

            「を渡るってことは、こっち岸をマイル歩いて、
   
                   次に向こう岸をまたマイル歩くってことなんだぞ。

             日暮れまでかかっちまわあ。

                   を渡れば十分で同じ場所に着けるんだからな。」

           「けど、もしが来たら、どこにも逃げるとこがないじゃないか。」

                   バーンはテディを見ずに言った。穏やかな流れの早いを見ている。


                              たんぽぽ1


              

              「そんなことないさ。」
 
                 テディは憤然としている。
  
                  そして、ひょいとのへりからぶらさがると、

                  レールの間の木の支柱につかまった。

              だが、50フィート下を流れるの真上で、

                  上をが通過していくのを待って、

                       それと同じ格好でいなけらばならない・・・。



             「お前、台もつながったが来ても、ぶらさがっているつもりか?」

                  クリスはテディに聞いた。
         
                    「おまえチキン(腰ぬけ)か?」

                              テディはどなった。


                                                   鹿01


                  私たちは一列になってを進んだ。

                    先頭がクリスで、次にテディ、そして、バーン、しんがりはわたしだった。


                      私は立ち止まり、しばらくを眺めた。

                        枕木のが見えてきた。

                          前を見ると、もう少しでバーンに追いつきそうだと分かった。

                              クリスとテディは渡りきろうとしていた。


                  噴水1



                                      噴水2
                               
                        
      
      あのとき、私はその場にしゃがみ、に手を押しあてた。

      は手の中で鈍く単調な音をたてていた。

      私はんだ。 

      「だ。」私は駆けだした。

      バーンは私が冗談を言っているのではないと分かった。

      彼も必死で走りだした。


      の音が格段に大きくなり、エンジンの音が深まって規則正しく聞こえてくる。




         鹿04



      

      は警笛を鳴らした。

      「はやくれ、バーン。は・や・く・・・」

      突然、を長く、ものすごい音で響かせ、空気を何百という破片に引き裂いた。


                             !!!

    
      私たちはんだ。

      

      バーンは川べりの砂地に倒れ、私も彼のすぐ後からなだれ込んだ。

      私はで耳をおおい、熱い地面に顔を押しつけて、金属と金属がかみ合う鋭い音と、

      が通過していくのを待った。
  




                           鹿00


      
                             私は顔をあげた。

                          バーンはまだふるえながらつっぷしている。

                    ・・・・・・・・・クリスが言った。

              「みんな、むってのはどうだい?おれの他に飲みたいやつは?」

                      私たちは全員みたいだった。

                                                      『スタンド・バイ・ミー』

     

                                                          鹿0001

                                              

                            噴水5
    
                                
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                                       ねこ 夏痩せ00
                          



                                 『』      谷川俊太郎


                
                        な妻はきながら
            
                                からだのでフロイトと不倫している
               
                                          がありさえすればそれだけでいい
                 
                                               そう思ったのは高校の卒業式ののこと


                                           炎天1                                                    


             炎天2

                              あ、くて動けん・・・。

                         
                                            ねこ 夏痩せ3


                                                  なつやせ2 

                                     

                        あれから何度商店街をしたことか
                  
                               当時のが今のを見くびっている
                    
                                       なんて観念は役立たずと知ってから
                       
                                                  口数が多くなり体もえた

                                         
                                                            
                                                                ねこ夏バテ6

                         、つい・・・・。

                                        

                                   がこぼれるのはまだしみがあるから?
                     
                  それとも家族が出払ったこのけさのせい?
                     
                                         の市場のあの喧騒がもう聞こえない
                     
                         だらけのの目で今の自分を見てみたい

 
                                   ねこ 眉

                                          さんだいぶキゲン悪いニャ                                      

                                                                                                           ねこ 夏痩せ4
                                           
                                      これは
                                                                        

            
                          ねこ 水2

                              くてわからん・・・だ、駄目じゃニャ・・・・。

 
                   ねこ 夏痩せ2


                                                 ねこ 夏痩せ0
                    


                       せから始まる考えがどこかにあるはずなのに
                      
                                   の奥に溜まり続ける日々の燃えないゴミ
                      
                                            は台所の独房でを切り刻み
                      
                                                 中絶した子供がに来るのを待っている


                                                          谷川俊太郎   『 』    


                                 ねこ 夏痩せ

                                                     サンどう出るかニャ・・・・

                             
                                                       
                       なつやせ1         


                                                ねこ 夏痩せ3

                                    ・・・・・・・・・・・・・


                 ねこ枕5

                                  お見舞いニャン                                    
                                                      
 
   カロ歳時記 

        saison de karo102



                           無欲なるとき靜かなり白日傘 小笠原照美 

                                                                   日傘1
                                           

                    
                        

                        人気のない乾いた道に午後のが真上から照りつけていた。

                        周子はを持ってでなかったことを悔いながらハンカチで顔の汗をふいた。

                        がなかった。

                        周子は、川向うの道を灰色のをさして歩いている老婦人をみた。

                        川辺家の未亡人だった。

                        瀟洒なのワンピースを着ていハイヒールをはいていた。

                                                         立原正秋 『の午後』


                日傘13




                                            日傘 12

                          

                        夫人は右手にの滴る風呂敷包みをさげていた。

                        包みが角ばっているのでだろうと思った。

                                                 060121_tra006.jpg



                        あそこのを買いにでるなんて、どうしたのだろう。

                        周子は数年前に一年間だけ夫人から語を習った。


                                        日傘10


                        「、ご機嫌よう。」

                           「ああ、周子さん、どこのおり?」

                               「歯医者さんに行ってきましたの。」

                                  「お若いのに歯がね・・・。」

                                       「それお持ちしましょう。」

                        
                                                 老婦人は包みを周子に渡した。


                                           夏草3



                        「ずいぶんおいしませんでしたわね、まだ習いに来る方、大勢いらっしゃるんでしょう?」

                           「去年からおりしています。もう、の変化をすっかりれてしまいましてね。」

                        やがて、坂道の門の前まできた。

                           「あたし、ここでしますわ。」



                                          夏草2ミラー




                        「まあ、あがってひとやすみしていらっしゃい。

                           やしてありますよ。」

                        老婦人は玄関を上がり、ハイヒールを脱ぐと、食堂に入っていった。

                           周子は台所にまわり、包みを乾いたタイル張りの流しに置くと、冷蔵庫をさがした。

                        「冷蔵庫はこっちですからわたしがいれますよ。

                           ここへきておかけなさい。」

                        食堂に入るとそこはしていた。


                                             ha3.jpg


                        
                         周子は食堂のにかかっているをみあげた。

                         底のふかい皿に盛ったをかいた油絵で、部屋の暗がりの中で絵も沈んでいた。

                         老婦人がをいれたコップを盆にのせて入ってきた。


                                        日傘8


                         「さ、召し上がれ。」

                         たい液体がのどを伝ってはいった。

                         「おいしいわ。」

                         「おかわりをしなさい。そうそう、昨日焼いたお菓子があったわね。」


                               日傘9




                              日傘5


                         
                         老婦人はふたたび椅子を立つと、い陶器皿にケーキを盛ってはいってきた。

                         牛乳をたっぷり使ったケーキは、周子の口のなかでとけた。

                         
                              日傘11


                       日傘6


                   フランス語を習いに通ったとき、邸にはふたりのがいた。  

                      周子はふたりのその後のを聞こうとして、やめた。

                        そして、を二杯飲み、ケーキをふたつ食べてから、別れをつげた。

                            老婦人は勝手口まで送ってくれた。   


                                                  日傘 デュラン




                               周子はをでて坂道を歩きながら、

                            あるいは二人のは結婚したのだろうと考えた。

                          坂を下りると、ふたたびが照りつけた。


                            「あら、周子さん。」

                          と呼ばれて周子は顔をあげた。

                   の水玉模様を散らしたワンピースを着て、

                      を持った道子が立っていた。


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                      「ずいぶん長い歯医者ね。待っていても帰りそうもないから、
                             
                      いましてきたところよ。小母さま心配してらしたわ。」    

                      「あら、すみません。帰りに川辺のにお会いして、

                      そこでをごちそうになってきたの。」



                              夏草1




                      「川辺のって、あの語を教えていらしたお方?」

                      道子はを周子の上にさしながら訊いた。

                      「そうよ。」

                      「、なにかいじゃないの?」

                      「なにが。」

                      「だって、あら、このひと、きっとどうかしているわ。

                      あのお亡くなりになったのよ。

                      あそこのおは、いま売りに出ているのよ。

                      あら、いやだ、この人、顔がいわ。」

                                                      立原正秋 『の午後』  


                                       日傘2