カロ歳時記

         saoson de karo97


                                    濹東の女思ひぬ花菖蒲     加藤三七子

                               永井5


                                                                            墨東奇譚6

  
                    
                               永井2



               郵便箱の立っている路地口の煙草屋で、

                  を買い、

                    のつりを待っていた時である。


                                                    永井荷風    『


            永井3



                         永井7


                     突然、「ってくるよ。」

                          と叫びながら、白い上っ張りを着た男が、

                               向こう側のおでん屋らしいのかげに駆け込むのを見た。
 

                                                濹東奇譚5



               吹き落ちるに、

               紙くずとごみがのように道の上を走って行く。


                                                      『


                               濹東奇譚4

                                     


           は多年の習慣で、を持たずに門を出ることは滅多にない。



                            永井4


                                                          永井荷風1

           先生おでかけ

                                                                         
                             その日も無論とだけは手にしていたから、さして驚きもせず、

                                   静かに広げるの下から、空と町のさまとを見ながら歩きかけると、

                             いきなり後方から、

                                 「、そこまで入れてってよ。」

                                  と言いさま、

                                    の下に真白な首を突っ込んだがある。



                                                                 濹東奇譚8

                          
               油の匂で結ったばかりと知られる大きな潰島田には長目に切った糸をかけている。

                      は今方通りがかりに硝子戸を開け放した女髪結いの店のあった事を思い出した。


                                         コピー~1
                                            


               吹き荒れるとに、結いたての髷にかけた糸の乱れるのが、

                   いたいたしく見えたので、を差し出して、

                 「俺は洋服だからかまわない。」


                         濹東綺譚2

 
                 「じゃ、よくって。すぐ、そこ。」

                         の柄につかまり、

                                  片手にの裾を思うさままくりあげた。


                                               『


                                              濹東綺譚7

永井8


              

                 『』は永井荷風の作品中、もっとも愛されているです。
                          
                     通り雨の中、ヒロインとの出会いの場。


                    荷風の描く女性はほとんどが、

                          当時の言葉でいう給、り子、そして婦・・・。



         
                         濹東綺譚3

                           荷風先生と浅草のり子のミナサン 

            

                  現代とは世相もモラルも違うは、

                     あまり読まれなくなりましたが・・・・。

                        その湿った筆致は全文細かいが降っているよう・・・・。

                           とののような恋は荷風の「も持たない」人生を、

                             ほんの一時通り過ぎ、

                                    しい物語のだけが残ります。

                                                                             カロ



                            墨東奇譚1


                                                                                                                              かふう
                   
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   Chat du mois 今月の


          月のねこ  chat mars


                    ちらちらと陽炎立ちぬ猫の塚    夏目漱石



                  ねこ老2

 
    
                   早稲田へ移ってから、が段々せてきた。

                   日が当たると縁側に寝ている。

                   味がかった色いを、ぼんやりひとところに落ちつけているのみである。

                   長い尻尾の毛が抜けてきた。

                                                            夏目漱石 『の墓』




                                            ねこ老5

                               
                                                   用キャットフード



                       おい、がどうかしたようだな、と言うと、

                           そうですね、やっぱり年をとったせいでしょうと、は至極である。

                               自分もそのままにしてっておいた。


                              ねこ老1
                           

                       ある、彼はの寝る夜具の裾に腹ばいになっていたが、

                         やがてうなり声をあげた。



                                        ねこの墓3

                                


                       はよく寝ている。

                          は針仕事に余念がなかった。



                 ねこ老4


                                   しばらくするとまたがうなった。

                                      は漸く針の手をやめた。

                                          は折々うなっていた。



                      ねこ老3




                       日は囲炉裏の縁に乗ったなり、一日うなっていた。

                       薬缶を取ったりするのが気味悪い様であった。
  
                       が、夜になるとのことは自分もも忘れてしまった。


                                  ねこの墓2                        


                              の死んだのは、まさにそのである。


                                   ねこ おちあい



                        は出入りの車夫を呼んで、四角なを買ってきて、

                         何か書いて遣ってくださいと言う。

                   自分はに「の墓」と書いて、に「この下に起るあらん」と認めた。




              しろつめくさ2

         
                                ねこ老8

   

         子供はの左右に硝子の瓶を二つ活けて、を挿した。

                          茶碗にを汲んで墓の前に置いた。


                          ねこ老7 清宮質文


                夕方、四つになるが、(自分はこの時書斎のから見ていた。)

                  たった一人の前へ来て、しばらく白木の棒を見ていたが、
 
                やがて手に持ったおもちゃの杓子を卸して

                  に供えた茶碗のをしゃくって飲んだ。



                              しろつめくさ1
                       

   
         には、きっと妻が一切れの鮭と、鰹節をかけた一杯の飯をの前に供える。

         ただ、この頃は、庭まで持って出ずに、

         大抵は茶の間の箪笥の上へ乗せて置くようである。

                                                        夏目漱石 『の墓』

   

                                   
 
  カロ歳時記
       saison de karo 96


                  母の日の少年東奔西走す   長谷部朝子


                              母3


                                          ロレータ・ラックス1


               ぼくはひとりでへ行った

                    り空にがひらひら飛んでいる

               それを見ているの子がいる

                          ぽつねんとに座って


                                                   谷川俊太郎 『に会う』

                                                    
                                                         母5


                                        蝶
                                                      
                                                                        
                                                  
                  という感情はいつどこで生まれたのか

                        口をきかないの子のとなりに座って

                                ぼくは番っているを見つめる

                                             この子はぼくのかもしれない


                  母4


                                            母6
  
                            

                                           鹿6
    
               
                 まだもたどったことのない道が

                                    へと消えてゆく


                                                    蝶2


                                          母2

                                          ロレ―タ


          かすかなの音だけが

                                   ぼくをこのにつなぎとめる


                                      2014 tyuugoku


                                                     
                          
                     になる日にも

                           ぼくはきっとここにいる

                                することをおぼえ

                                    ぬことにさえよろこびを感じて


                                          谷川俊太郎  『に会う』


                                    三岸好太郎 雲の上を飛ぶ蝶