カロ歳時記

      saison de karo 91



          雛の軸おぼろ少女と老女寝て 原裕



                           ひな4



                            ただぎにぐるもの。

                            かけたる舟。

                            のよはひ。

                               

                                              『枕草子』



                  っと言う間にぎるもの。
                                  
                                 船。齢。季。



                              ひな3

                                                  
                     時間経つのってホントに早いワ   





        うつくしきもの。二つ三つばかりなるちごの、急ぎて這ひ来る道に、いと小さきのありけるを

        目ざとに見つけて、いとをかしげなるにとらへて、大人などに見せたる、いとうつくし

        頭は足そぎなるちごの、目にのおほへるを、掻きはやらで、うち傾きて、物など見たるも、うつくし



                              


                 ひな7




        の調度、の浮葉のいと小さきを、池より取り上げたる。


        何も何も、さきものは皆うつくし


                                  


               ひな2




        かわいらしいもの。二、三才の子供の、急いで這ってくる途中、小さな塵を見つけ、に取って、

           大人に見せたりするのは、とってもかわいい。

              い子が、のあたりで切りそろえたが、目にかぶさるのを掻き上げもしないで、

                 首をかしげて、ものを見ているのも、かわいい



                          人形2



            雛のお道具、蓮の小さな葉を水面からすくいあげたもの、小さいものはみんなかわいい・・・。





                   ひな8




                   ひな5




               くるしげなるもの。

               泣きといふわざするちごの乳母。

               思ひ人二人もちて、こなたかなたふすべらるる

               わりなく物疑ひするに、いみじう思われたる

                                                     『枕草子』


                   享保雛6



                         つらそうなもの。

                         夜泣きするあかんぼうの乳母。

                         愛人がふたりいて、双方からやきもちをやかれる男。

                         い深い男に、心底思われた女。


                         ひな1




              ひな6

                          伝 納言  『枕草子絵巻』                   





                              ひな9


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  今月の    Chat du mois

         月のねこ  Chat fevrier




                      内のチヨが隣のタマを待つ夜かな 正岡子規


            千代とたま2
  




        湯ヶ島には、梶井基次郎も滞在していた。

        梶井は毎晩のように私のところに遊びに来ていた。


                                                             宇野千代 『生きて行く私』




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                          梶井基次郎の写真はなぜかみんな不鮮明




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                                             宇野千代 かっこいい 




                         千代とたま14

             タマさん・・・なあに・・チヨさん




        梶井はその頃、肺結核の第三期であったとのことであったが、

        骨太で、肩幅が広く、

        誰ひとり、梶井の真の病状を察しているものはなかった。



                     

                       千代とたま10

                    

 

            或る時、私は梶井のところで、珍しいものを見た。

            それは、巴里のウビガンの香水であった。                       



                   千代とたま1



            梶井がウビガンの香水を持っている、それがどんなに、

                   人の目にはあり得べきもないことのように思われたとしても、

                          私には、いかにも梶井が、持っているらしいもの、と思われた。



                          ひなたぼっこ




                        湯ヶ島から馬込へ帰っていた私のところに、

                                  梶井からハガキが来た。



                   千代とたま12



                         「四、五日中に、東京へ出る用事がありますから、

                          そのついでに、お宅へもお寄りします。」



                 千代とたま9



                         私はそのハガを手に持って、
 
                         「梶井さんが馬込へ来ます。」

                         と言って、ふれまわった。


                         「やっぱり、宇野千梶井基次郎は、

                         何かあったのだな。」

                         と噂されたとは、

                         私はにもしらなかった。


                                                宇野千代 『生きて行く私』




          千代とたま8




                  
          十七、八の頃であろうか、

          自分が神妙に裁板の前に座って仕事をしていると、

          ものさしだと思って何気なく取り上げようとした手先に、

          ヒヤリと冷たい湿っぽいものがふれて、

          私は思わずきゃっと飛びあがってしまったが、

          それはの鼻であった。

                                                 森田たま  『もめん随筆』




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          ものさしを置いたところへ 

          いつかがやってきて、そっと座っていたのであった。

          私はその時、針仕事をしながら、自分ひとりの物思いに耽っていた。

          が人の秘密を盗み見ていると思った。

          は憎らしい以上に怖ろしい。


                                            森田たま  『もめん随筆』




           千代とたま9



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                                                                                         morita
                                                                                                                       
                 森田たま なかなかキレイ

                                           


           千代とたま6

             どっちがチヨ


                             千代とたま7
                                   

                                     どっちがタマ

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カロ歳時記

  saison de karo  90


                       立春や卵も立つと習いけり 中川智正



               遶区丼・廟convert_20140113211138

      




       は東京拘置所の一人部屋にいます。

       一人でいる理由は、私が死刑囚だからです。

       天井でカメラが二十四時間監視している部屋です。


       はずっと一人部屋にいるのですが、その間に東京拘置所では何年もかけた建て替えがありました。


 
       (1996年から2003年まで)私が収容されていた建物は上空から見ると、

       熊手の先もしくは歯のない櫛のような形状をしていたはずです。・・・

                                 中川智正 私をとりまく世界について 『ジャム・セッション』




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                                              立春13

                                                    旧東京拘置所                          


                       
                                 立春02






       にある四つの棟に収容者が入っていました。

          取り調べ室のある棟から北に向かって順に

             新四舎、新三舎、新二舎、新一舎と呼ばれていました。

                これらの収容棟は石とコンクリートと木で出来ていて、「新」と付いてはいましたが、

                   かなり古いものでした。




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            は新二舎の一階にいました。

       そこには、一人部屋ばかり50室ほどが東西にずらりと並んでいました。



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                     からは中庭が見えました。そこには沢山の樹木が植えられていて、が咲きました。

                                   


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        が見てもすぐわかるカラススズメ以外の鳥も何種類か来ていました。

                                                   

                                           
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                「ホーホケキョ」と鳴く声がするので、

                   私はウグイスが来ているのかと思っていました。

                      しかし、それは一人部屋に入っている収容者の口笛でした。




                 立春01






        もよく部屋の中にいました。

        せいぜい1センチくらいの大きさで、獲物が来るのを待って、来たら飛びかかり、

        それを糸でぐるぐる巻きにする種類のものです。

        冬には獲物がなくて、待ったままの姿勢で干からびて死んでいくものが沢山いました。


                            中川智正 私をとりまく世界について 『ジャム・セッション』




                          立春8






               すきま陽を求めて曲がる切り花よ

                 消えて光る素粒子のごとくあればよし

                   永き夜は深海となり鼓動聞く


                                                 中川智正 『ジャム・セッション』





                      福寿草




                                                 

            中川智正氏は死刑囚。

            オウム真理教の一連の事件に連座、死刑が確定しています。
   
            『ジャム・セッション』は俳人江里昭彦氏と中川氏

            さらにゲスト俳人の作品、文章をコラボさせた同人誌。

            2012年創刊以来4号が発行されました。


            江里氏は京都府職員として府立医大に勤務していた1980年代、

            同大学生であった中川氏と知り合っています。

                                                    カロ



                          
                  立春11





        その、中川智正氏は医学生としてしょっちゅう学生課に出入りしていた。
 
        この年、彼は「学園の顔」であった。

        というのも、大学祭の実行委員長の重責を担っていたからである。

        その他大勢の一員だった彼が、私の印象に強く残る存在となったのは、この年である。

        まえまえから障害者のボランティア活動をしていた中川氏が、

        会期中、車椅子を押しながら、構内を巡っているのを目撃した職員もいる。


               江里昭彦 1986年について 『ジャム・セッション』創刊号 あとがき


            
              
                    立春7






               手元に「プレフェスティバル」というビラが残っている。

               十月二十五日、京都教育文化センターでもたれた催しだ。

               プログラムの冒頭に「委員長中川智正口琴独奏」とある。口琴はだろう。

               催しを見にゆかなかった私は中川氏の独奏を聴いていない。

               今日に至るまで、をあやつる彼の姿を見たことがない。


                                江里昭彦 1986年について 『ジャム・セッション』




                    プレーンオムレツ


  



           「読み」がどこまでも自由であると同じように、「書く」こと、そしてあらゆる表現も限りなく自由です。

           生まれたばかりの赤ん坊でも、老人でも、つきでも、人非人でも、犯罪者でも。

           わたしはそう思います。 カロ



                                       立春03