saison de karo 8

傷口にひかり集める花の雨 五島高資

花散らし
スポンサーサイト
Goulue de karo カロ食彩 2

筍ご飯を炊こう。

春のシンボル、筍ご飯。

「うまい筍は根っこのところがトウフみたいに柔らかい。」 荒畑寒村


若竹




寒村先生の仰るような筍には、なかなかお目にかかれませんが・・・。

筍ご飯は、まず前日の「若竹煮」作りから始まる。二日連続筍の晩餐で春を愛でることにしましょう。
生の筍を買うなら小さめを。扱い易いし、早く火が通る。ざっと洗って根っこに包丁を深く一本入れ、固い皮をはずす。鍋に入れ、米糠か、ない時は、お米をひとつかみ入れて、ガーッと茹でる。大きさにもよりますが、まず30分。後で煮るから、ほどほどで・・・。冷めるまでそのまま。茹で筍なら、切って、一度ゆがきます。これをまず若竹にします。
筍は味が沁みにくい。だしとお砂糖で少し煮て、お酒、削りがつおをタップリ加える。お醤油は最後に。火は中火。
若芽は水でもどし、茎を取り除いて水からゆがく。笊にあげ、すぐにお鍋にもどし、だしと少しのお砂糖、お醤油で煮る。こちらにも削りがつおとお酒を。
カロの若竹は、筍、若芽を別々に煮ます。後から筍ご飯に転用するためには、筍が若芽に「まみれている」とやりにくいので。
お皿の上で、初めて出会った筍と若芽。かつおぶしの香り。木の芽を添えてもいいけれど、茹でたほうれん草を盛り合わせても質実な感じ。大きく切って煮た筍をレンジで焼いても美味しい。明日も明後日も使えるので、筍は沢山煮ておく。筍ご飯にする分は、根の方を多くとりのけておきましょう。

焼き筍


献立は、マルガリータ・ピツァやペペロンチ―ノ・スパゲティとも不思議にマッチ。あとは鳥ひき肉のそぼろを入れた出し巻き卵、デザートはいちご。

若竹の翌日、いよいよ本命の筍ご飯。お米は普通にとぐ。
筍はもう味がついているので簡単かんたん。切り方は自由。大きければ豪快、細かく切れば繊細。油あげ、椎茸、鶏肉、人参など、お醤油とお砂糖で煮る。切った筍を加えて、さっと煮たて、煮汁ごとお米に加えて炊く。うっすらお焦げが出来れば上出来。絹さやの塩ゆでをいっぱい振りかける。

たけのこご飯


今日は筍づくしで、筍入りのおみおつけ、筍の天ぷら(昨日の若竹をそのまま衣につけて揚げただけ。)あと一品は薄切り牛肉をサッとフライパンで焼き、大根おろしとお醤油をからめたものなど。


筍を掟のごとく届けもす  中村汀女
saison de karo 

白い雲をパンの神とし麦野ゆく 多田裕計

シャガール


そして、丁度その時であった。何の気もなしに頭へ手をやって、始めて触れたのがその角(つの)だった。まさかとは思ったのだが、たしかに瘤などではない、異様に尖ったふたつの隆起が、額のすぐ上に感じられた。同時に全身、とりわけ下半身のほうに音を立てるほどの勢いで、体毛の伸び出すのが判った。春の街なかで、何かとんでもない変身が起こりかけているらしい。髪も髭も、前から長く伸ばしているんだし、人眼に立つとは思えないけれど、タカシはあわてて行きずりのメンズウエアの店の前で立ち止まると、仄暗いウインドをのぞきこんだ。

・・・変身はどうやら完了したらしい。サチュロスというのか、それともフォーヌとかパンとか呼ばれる、山羊の蹄と角とを持った、あの毛むくじゃらな牧神に自分がなってしまったことを、まだ誰も気づいていないんだと思うと、ちょっぴり嬉しいような、それでいてひどくみじめなような、妙な気分だった。
・・・決闘・金狼・愛餐・幻日・袋小路・紫水晶・歪景鏡・贋法王・挽歌集・首天使・三角帆・宝石箱・帰休兵・火食鳥・花火師・水蛇類・送風塔・冷水瓶・聖木曜日・・・囚人名簿・二人椅子・耳付きの壺・放浪楽人・とらんぷ屋・埃及の舞姫・土耳古スリッパ・露西亜の四輪馬車・・・。
さっきから耳のなかで唸りをあげているのは、およそ脈絡もない言葉の羅列で、それがふらんす語やらロシア語やらのきれぎれな発音をともなって、次から次へと風のように掠めては去るのに、タカシはすっかり閉口していた。

・・・「目をつぶってろよ。いいか、よしって言うまで、あけちゃダメだぞ。」
コートを脱ぎ棄て、シャツを毟り取り、タカシは水浴びをする前のような手早さで、着ているものすべてをそこへ払い落した。靴下をとって、二つに割れた蹄を見たときは、ちょっと悲しい気がしたが、それよりも、この青空の下で、生まれながらの本当の姿に還れた喜びのほうが大きかった。

・・・「あたいも裸になっちゃおうかな。」「そうしろよ。ニンフはみんな裸だぜ。」
こういうわけで、T・・自然動物園には、新しく牧神とニンフの放し飼いになっている場所がある・・・・
       
                            中井英夫  『牧神の春』