カロ歳時記
saison de karo 180
あっ おじちゃんそこのすみれは踏まないで 藤嶋務

ryukyusirosumire

おっと! 気をつけてネ。

岡鹿之助 『三色すみれ』
すみれの花の砂糖づけをたべると
私たちは少女にもどる
だれのものでもなかったあたし
江國香織 『すみれの花の砂糖づけ』

capitplo
まことに、すみれと少女は通い合ってピッタリ。 そこへいくと、
あっ おじちゃんそこのすみれは踏まないで 藤嶋務
おじさんとすみれ、なかなか共存のむずかしい人種?と可憐な花を結んで楽しい一句です。
ようやく春の兆しが感じられる今日この頃、
すみれとおじさんの関係性について考察いたしましょう。

岡鹿之助 『遊蝶花』
岡鹿之助(1898~1978)は、独自のしずけさが漂う風景や静物を描き続けた洋画家。
画家はすみれを愛しました。様々な色と形、群生のうつくしさ、春に先駆けて咲く潔さ。
花の命を画架につなぎとめようとするような静かな情熱に支えられて
すみれはこの世ならぬ風情で画面からあふれています。

岡鹿之助 『青い背景の菫』

岡鹿之助 20代の自画像 すでにちょっとおじさんっぽい。 ここにもすみれ?

岡鹿之助 『捧げもの』 すみれは宗教的。
手にありし菫の花のいつか失し 松本たかし
大切な人、時間、信念。 それとも菫はやっぱりすみれか。
おじさんは、自分がすみれにふさわしくないことを自覚しているようです。 なんか切ない。

sodatekata
おじさん思考全開。 おじさんといえばお酒。
酒とは、呑んでいるときは呑み足りず、呑み終えたときは必ず呑みすぎている飲料である。
内田樹 『おじさん的思考』

典型的おじさん酔っ払い 『星の王子さま』の登場人物呑み助さん。
彼は小さな星に一人で住み、日夜お酒を呑んで暮らしています。


王子さま なにしてるの?
呑み助 酒呑んでるよ。
王子さま なぜ、呑んでるの?
呑み助 忘れたいからさ。
王子さま 忘れるって、なにを?
呑み助 はずかしいのを忘れるんだよ。
王子さま はずかしいって、なにが?
呑み助 酒を呑むのが、はずかしいんだよ。
サンテグジュペリ 『星の王子さま』

お酒を呑んで楽しく酔いつぶれるためには、人は健康でなければならない。
内田樹 『おじさん的思考』
みごとなおじさん的逆説ですね。


瀕死の白鳥古きアジアの菫など 赤尾兜子
1960年代を席巻した前衛俳句の代表的な作品。
計算しつくされた言葉のマッチングと思ってきましたが、
もしかすると、死に瀕するまで深酒したときの句かも・・・。

ゴヤ 侯爵夫妻とこどもたち スミレ風寒色イメージの絵を選んでみました。
わたしは家族を描いた絵が好きだ。 それはわたしが家族を持たない年配の男だからだ。
ルキノ・ヴィスコンティ 『家族の肖像』
この辺りになると、おじさん語録はシビアで悲しい。

おじさんがかたづけている春の土 五藤高資
おじさんによってかたづけられるもの。 不燃ごみ、古本、古手紙、春の土。

イタタ、 かたづけ頑張りすぎた・・。

菫ほどな小さき人に生れたし 夏目漱石
小さき人とは、たぶん坊ちゃんか三四郎。ということは、本当は大きい人か。

岡鹿之助 『花籠』 ここではすみれはわき役。
わたくしに誰も気付かぬすみれ草 長井寛
誰が誰のことを詠っているのでしょう。 すみれが人を? 人がすみれを?

岡鹿之助 『ばら色の背景の菫』

おじさんも昔は少年だった・・・。
少年にすみれの咲ける秘密の場所 鷹羽狩行
すみれとひみつ。 きっとふかーいつながりが。


yahoo
ドイツのお菓子をいただいた時、上にすみれの花の砂糖づけがのっていました。
ブランデーの香りがしました。 野の匂いもすこし。
お味は、ちょっと苦かった。
おじさんの苦さかも・・・。
カロ

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