歳時記

             saison de karo  


                 行く春のが少しやわらかい   下条冬二


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                                父の書斎の抽斗には時々しい食べ物があった。

                             父は朝六時半には起きて、朝食まで書斎にじこもって本を読んでいた。

                        書斎に入って一時間すると母がを入れて行く。

                             そんな時父はそれを母と二人だけで食べるらしかった。

                                              DSC02294_smallkurumi.jpg                                
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                                   それはのチョコレートだったり、チーズだったり、

                             ビスケットだったりした。

                                                           柏原兵三  『幼年時代』
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                         日曜日のなど母は父に特にたのんで、

                           父の書斎を退出する時、それらを分けてもらってきて、

                             私たちにお裾分けしてくれることがあった。

                              するとそれらは私たちに、の中にこんなおいしいものはないと思われるような

                                がするのだった。

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                        父の書斎に入ることは厳重にじられていたにも拘わらず、
                  
                               私たちは時々した。


                          caffarel (2)
                                                              caffarel


                  そんな時はず机の抽斗を開け、

                           どんなおししいものがわれているかを確かめたが、

                                         それを食べるはなかなか出なかった。


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                                  父の書斎に忍び込んだ時、

                        私はいつも父の大きな机の右のに置かれているの辞書を

                            そっと拡げて、グラビアの図版を眺めてしんだ。


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                                                    sogou museum


                            、私は図版を見て楽しむほかに、

                          この辞書の重大な利用価値を発見した。

                      この辞書に花びらをはさんだらすばらしいができるだろうと思いついたのである。

                   治郎兄さんが夏休みの宿題に押花をしたのを見てから、

              私は押花のに目覚めていた。     

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                  早速その思いつきをに移すことに決め、

                        庭に行って花びらの種類をできるだけたくさんめてきた。

                                  そしてそれらの花をウエブスターの辞書の中に種類ごとに分けて挟んだ。


                                 チーズ1                                                  
                        

                        ふと私は父の書斎机に、蔵うのを忘れたのかが蓋を開けたまま、

                        ナイフと共に置かれているのをした。
 
                        私はチーズが大好きだった。

                                                繝√・繧コ・兩convert_20170410223246
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                        く切ってひときれ食べても

                        分りはしないだろうという考えが頭に浮かんだ。


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                               すでに四分の一位っているチーズにナイフを当てた。

                        しかし下まで届かないうちにナイフはチーズのをそいでしまっていた。

                   今度は思い切ってく切ることにした。

                        切り落としてみると、チーズのり方はかなり目立った。

                             しかしチーズはしかった。


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                        二日おいて私が父の書斎に忍び込んだ時は、

                            チーズはもう半分以下にっていた。

                               私が食べたことは見つからないで済んだのだ。

                            父がナイフを入れる時に、前回ナイフを入れた時よりっていることに気付けば、

                        当然私たち兄弟の誰かのだということが分る筈だったからである。

                            私はして一切れ切ってべた。

                                                       
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               私たち兄弟に時ならぬがかかった。

                   に言いなさい。

              お前たちのうちか、お父さんの留守中に書斎に入って、

                   お父さんが机の抽斗に蔵っておいたチーズを食べたろう。

                        虎雄、食べたか。 父は言った。
                         
                              。虎雄兄さんはさな声で承認してうつむいた。

                        治郎はどうだ。
 
                              はい、し食べました。

                        少しってどのくらいだ。 

                                 チーズ8
                                                    
                        一日おきに一切れ位です。

                        潔、お前は食べなかったろうな。

                        、食べました。

                        母がき出したいのをこらえているのが分った。

                                                                     『幼年時代』

                                 チーズ5
 
                                                      
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    歳時記
              saison de karo 

                             しき人しく老い桜餅   山口青邨


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            さくらもち6
                            Mark Rothko 
                           

                       はオイシイ。

                          その形状は、関東と関西では全くなっている。


                        さくらもち1kininaruneta
                                                  kininaruneta

                                  関東ではクレープの生地を二つ折りにしたような感じ。

                  関西ではつぶつぶ感のある丸餅のような感じである。

                            この違いのは、一体どのあたりなのだろうか。
  
                                    想像するとしい気分になる。
                  
                                                          金子敦 「桜餅」  


           ねこコンサート (2)


           さくら餅でも入つてないか   関根誠子

                           小判が入っているのは関東風?関西風?


                      
                                        さくらもち5ミチル日々
                                                            ミチル日々   


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                                       加山又造 
             

                          よりも先死ぬひ桜餅   高田風人子  

                                 さまもさまもお元気で・・・ネ。


                          さくらもち4koukisinn
                                               koukisin 



                         それから、巻いてあるを、食べる人と食べない人がある。

                                 食べる派、食べない派の割合は、一体どのくらいなのだろうか。

                         それを考えるのも楽しい。という訳で、

                                     は一個で二度オイシイ和菓子なのである。

                                                            金子敦  「桜餅」 


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                                  桜餅食べたる息をましけり  岡田耕治 

                           味もさることながら、桜餅には食べ物をした何かが潜んでいるようです。



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                        桜もちの話に立入らず   稲垣きくの  

                             だまって食べると・・・ついもう。 


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                                     Mark Rothko 


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                大風の障子しぬ桜餅   芥川龍之介   

                               外は、室内はさくらもち。   

                                                  さくらもち2
                              
 

      歳時記

              saison de karo 


                          のお辞儀は永遠に雪が降る   鳥居真里子


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                雪加山又造雪
                                      意匠  加山又造


             山は川は雪が降る  高野ムツオ

                                 のどこかにいる大きな誰かが地上を見下して。

                        
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                                                              広重 木曽路山川                               

                                             
                          恍惚のの手足雪降れり  高澤晶子

                                雪は身体のにも降り・・・。


                                ビーナス


                            
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                         置けば雪がふる  上田五千石

                                          鋸という言葉のが雪をふらせます。


                                          手鏡にを映す雪が降る  松本恭子 

                                  は雪に囲まれていっそうきわだって・・。                             


                                        uemura_syouen-kesyou_no_zu_1080x1920_convert_20170104235419.jpg
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                              heyaneko北海道美唄市東美唄
                                                           heyaneko       


                      廃校や雪のを雪が降り  関根誠子

                                       廃校にも、国宝にもしく・・・。


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                                       kyoto plaza hotel
                             
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                          折るやうしろの山に雪が降る  柿本多映

                                    に雪を連れてくるのは鶴。


                                 東山魁夷雪 
                                                                        東山魁夷


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                                     日本橋 小村雪岱


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                      よみればまはりに雪がふる  高屋窓秋  

                                  雪の中のいのちは像のよう。                     


                                                          髮ェ逾槫ョョ縺ョ魑ゥ隨媽convert_20170105010040             
                                                                 佐々木澄一    
                           遖丞勧・狙convert_20170115203003

                                       です。 福助 

                                 でも、もうそろそろがきてほしいですネ。 カロ  

         
 
          歳時記

               saison de karo 


                           廻しあたりにものののなき  齋藤愼爾 

                                  0独楽
                   というものは独楽なのだ。

                         廻りだしてもなかなかが定まらない。

                               いたままどこへころがってゆくかわからない。

                                        何しろ一本足でっているのだから。


                                                             三島由紀夫 『独楽』                        


                                        少年



                      一人の男子高校生が、三時間の余も塀外に立っていると家政婦が言った。

                      ・・・紹介状がない人間にはわない、と私は言った。

                      家政婦はすでに少年にしているものとみえ、

                      少しでもってやってはどうか、と言った。

              
                                                迢ャ讌ス蜑咲伐譏瑚憶_convert_20161227001003
                                                                      前田昌良

                      それでは玄関の椅子に待たせておけ、

                      外出間際のだけ会うと伝えてくれ、と家政婦に言った。

                                 独楽2  
                   
                                                 
                              玄関へ出てみると、

                                    少年は椅子にと座っていて、尋常にお辞儀をした。

                        どこから来たか、と聞いた。少年はS市の名を言った。

                             はS市へ帰らねばならない、今日中にどうしても

                先生にいたいと思って来た、と言った。

                     
                  迢ャ讌ス螟ァ螻ア闖懊€・ュ神convert_20161223233732
                                          大山菜々子

                      ・・・何かの話できたのかい。

                      そうじゃありません。少年はと言った。
                                                       迢ャ讌ス・誉convert_20161224223426
                    
                      私は時計を見て・・・何しろ時間がない。じゃ、こうしよう。のしたい質問がいくつかあったら、

                      その中で一番ききたい質問を一つだけしてごらん。

                      でも答えてあげるから。

                      少年はなおっていた。

                                              独楽0 (2)
                                                               阿修羅

                      質問は何もないのか。と私はややもてあましながら、

                      もう一度時計を見た。

                      

                      じゃ、一番ききたいことを一つだけ聞いたらどうだ。

                      少年は黙っていた。にやや力が入ったかと見る間に、

                      ・・・一番ききたいことはね、・・・先生はいつぬんですか。

                      この質問は私の肺腑をした。


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                                                                 三島由紀夫 十代                                                                      

       私が何か滑稽なしどろもどろのをしたことは言うまでもない。

                   ・・・時間が来たので、私は少年を促して帰らせ、自分は約束の外出先へいそいだ。

                              しかし少年の質問のは私に刺さったままで、やがてが化膿をした。


                                           迢ャ讌ス蟒サ縺励す繝」繝ォ繝€繝ウ_convert_20161224214058
                                                               シャルダン 独楽廻し


                             少年はただ単に、大人をからかって、おどかしてやろう、というから、

                      悪戯心でそんな質問をしたのかもしれない。

               が、私は経験上、少年期というものがどんなものであるかを多少っている。

                      少年というものはなのだ。

                  
                          独楽1 少年の日々 前田昌良
                                                    前田昌良  

                    
                  ・・・大人と違うところは、とにかくっているということである。

                        ることによってようやく立上れるということである。

                             らない独楽は死んだ独楽だ。

                                   ぶざまに寝ているのがいやなら、どうしてもらなければならない。


                                迢ャ讌ス・農convert_20161223233242
                                                        安徳天皇遊独楽図


                      しかし独楽は巧く行けば、む。

                      独楽がんだときほど、物事がろしい正確さに達するときはない。

                      いずれまた惰力を失っていてんで、

                      回転を止めることはわかっているが、
 
                      んでいるあいだの独楽には、何か不気味な能力がわっている。

                      ・・・それはもはや独楽ではなくて、

                      何か透明なに似たものになっている。
                                    迢ャ讌ス・棒convert_20161224223308
                               あのをしたとき、少年はたしかにそこにいたのだが、

                           多分少年の独楽はんでいたから、

                      少年はそこにいなかったことも確かだった。

                今した質問を、次の瞬間にはれてしまっていたかもしれない。


                                                                『独楽』


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                                                       前田昌良 

                                                           独楽5 (2)
      
 

        歳時記

               saison de karo 


                        初夢のさめてえのなき  町野けい子


                 初夢 眠れるミューズ ブランクーシ
                                                     ブランクーシ 眠れるミューズ


                 はつゆめのせめてはのよかりけり  久保田万太郎

                                        そしてとよければいいな。


                                初夢 Wyethヘルガ
                                                                    ワイエス 夢


                          初夢やも拾はずにもせず    夏目漱石                          

                                     詠者がこのおでなければ、のオジサン句?


                   蛻晏、「縲€繝斐き繧ス_convert_20161223005505
                                     ピカソ 眠る女   


                      初夢のなくて紅とくかな  三橋鷹女

                           は指。たぶん小指。


                                      4cd266090fc7f3b5b263b6245d9dc3d7_convert_20170102020153.jpg
                                                        土門拳                                   


                                  初夢や深くして人の  谷さやん

                                          みの中で、目をひらいて眠っているようです。


                                                蛻晏、「縲€hiroshi_kondo_the_others_convert_20161229021101
                                                              Hiroshi kondo The others 

                    
                  眠り姫バーン・ジョーンズ
                                                   ジョーンズ 眠り姫           
                                 
                      
                          初夢のいくらかしてをりぬ   中原道夫

                                         眠ったら、夢は銀色に。
                            
 
                                         00s逕溯ェ不1648-51_convert_20161229022722
                                                             ラ・トゥール 幼子                                                              

                 初夢 モーリス・ドニ
                                       ドニ 眠る少女

                                                               
                              初夢のばかり残りけり   文挟夫佐惠

                     。うたかたでも残れば・・・。 


                                      mother-and-child-detail-from-the-three-ages-of-woman-c-1905-gustave-klimt1.jpg
                                                                 クリムト                                               
                                           

                                                           年 よい夢を・・・。