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       歳時記
             saison de karo
          
                          もがりやあーい  上田五千石

                           風3

                先生が云いました。

                    みなさんのおが一人ふえました。

                       そこにいる高田三郎さんです。

         そのかたのお父さんは、こんど会社のご用で上のの入り口へ

                       おいでになっておられるのです。

                    みなさんは学校で勉強の時も、拾いやとりに行く時も、

                       高田さんをさそうようにしなければいけません。

             宮沢賢治  『の又三郎』
                                                               
                              風4
                  
          そのこどもは、ちゃんとひざにをおいて、腰掛に座っていました。

                 ぜんたいに、その形からが実におかしいのでした。
                            
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    へんてこなねずみいろのの上着を着て、

              をかぶって、

        い半ズボンをはいて、

     髪の毛は茶色でした。

   それに、い皮の半靴をはいていたのです。

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       次の、空はよく晴れて、川はさらさら鳴りました。

        一郎は嘉助と佐太郎と悦治をさそって、いっしょに三郎のうちのほうへ行きました。

         、みんな来たかい。

      三郎の呼ぶがしました。

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    又三郎はを見あげているのです。  

         ねずみ色の上着の上にのマントを着ているのです。

   それから光るガラスのをはいているのです。

 又三郎の肩には栗の木の影がく落ちています。

   又三郎の影は、またく草に落ちています。
 
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                 そしてどんどんが吹いているのです。

           又三郎は笑いもしなければ物も言いません。

     ただ小さなくちびるを強そうに結んだままって空を見ています。

          いきなり又三郎はひらっとびあがりました。          

                    風1

                 どっどど どどうど どどうど どう

           青いも吹きとばせ

                       鬚ィ・廟convert_20151027232045
                                                        
           すっぱいも吹きとばせ

                                  どっどど どどうど どどうど どう

                       どっどど どどうど どどうど どう

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                  風2
                    
         先生は云いました。

   高田さんは、きのう、お父さんといっしょに、もうへ行きました。

            日曜なので、皆さんにご挨拶するひまがなかったのです。

  むこうにはおさんもおられるのですから・・・。
                          
               宿直室のほうで、何かごとごと鳴る音がしました。 

             はまだ止まず、

  窓ガラスは雨つぶのためにりながら、

                   また、がたがた鳴りました。
                                                       
               『の又三郎』

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       は究極の小数者。 彼は他の人と違うことを恐れません。

       たちは、彼をまっすぐに受け入れます。 

      それがしいですね。  カロ
                                                                       
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       歳時記
               saison de karo

               の道たき馬に蹤いてゆく  柿本多映 

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      白い馬5
             
        昔あるところに貧しき百姓あり。はなくて美しきあり。

       また一匹のを養う。

        柳田国男   『物語』

                     遠野3

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     娘この馬をし、ついに馬と夫婦になれり。

      ある父はこのことを知りて、

    馬を連れだしての木に下げて殺したり。
                                                             
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       娘はこのことを知り、しみて桑の木の下に行き、

    死したる馬のにすがりて泣きいたりしを、

    父はこれを憎みて、斧をもって馬のを切り落せしに、

     たちまち娘はその首に乗りたるまま天にり去れり。

            『物語』
                                               
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        遠野1                   

       というは、このことより成りたる神なり。

          馬をつり下げたるの枝にてその神の像をつくる。

          もとにてつくりしは山口郷の大同にあり。これをとす。

                     遠野2

               また、のちにつくりしは山崎郷の在家権十郎なる家にありしが、

    その家、今は絶えてのゆくえを知らず。

           『物語』                   

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                   遠野4  

      、山間の農村では長男以外は妻帯できず、

           一生、厩舎ので寝起きし、労働力として生きた次男三男もありました。

     の恋はショッキングですが、

  婚姻をゆるされない人々の悲恋を幻想に託したなのかも知れません。

                                             カロ
                                                                                
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      歳時記
            saison de karo 

                 沁み透るとはにもブラームス  本橋仁

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                                ブラームス2 
                                                                                           ・・・。 いとど・・・とは、 かまどうまのことです。
                  
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                                                                                                            起きると、彼女はドアの下にが入っているのを見つけた。

                 十一月のみ切った空にふたたび太陽が姿をあらわして、

  部屋中をあたたかい光と影とでたしていた。

                                 サガン 『ブラームスはお好き』

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                    ブラームス4
                    フランソワーズ・サガン     

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             六時にプレイエル・ホールでとてもいい音楽会があります。と、シモンは書いていた。

      はお好きですか? 昨日は失礼しました。

           ポールはんだ。

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                                 少年時代のブラームスはやさしい美形。

             彼女は二行目の、はお好きですか?に微笑んだのだ。

       それは、彼女が十七くらいの時、男の子たちが彼女にいたのと同じ種類の質問だった。

                  彼女はが好きだろうか。
                                                 
                    美術館 グウェン・ジョン 1876~1939 1924 convalescent病み上がり

 シモンに会うために行くのじゃなくて、を聴くために行くのだわ。 いいつぶしだわ。

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       六時、ポールはひとごみにまぎれて身動きができなかった。 シモンはって切符を差し出した。
 
     ポールは言った。 わたし、が好きかどうかわかりませんでしたの。

   ぼくの方は、あなたがいらしゃるかどうかわかりませんでした。 シモンは言った。

                         『ブラームスはお好き』

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         ポールとシモンの恋がに乗って始まります。

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              歳時記
                 saison de karo 
                                                                  
     変らざるもの何ならん薫る   小串輝子

       逋ス闖奇シ点convert_20150909164806                                                                                                  
     明治十九年十一月三日のであった。

   当時十七歳だった ・・・家の令嬢明子は、父親と一緒に、鹿の階段を上っていった。 
                                      
     明るい瓦斯の光に照らされた、幅の広い階段の両側には、

    大輪のの花が、三重の垣を作っていた。
                                
        階段の上の舞踏室からは、もう陽気な管弦楽の音が聞こえてきた。

   明子が正式な舞踏会に臨むのは、がはじめてであった。

                               芥川龍之介  『舞踏会』

                      白菊1
             
           舞踏室の中にも、いたるところにの花が美しく咲き乱れていた。  

           見知らぬ仏蘭西の海軍が、何処からか静かに歩み寄ってきた。

        そして丁寧に会釈をした。 いっしょにってはくださいませんか。

        明子は、その将校と、「美しく青きダニュウブ」のワルツを踊った。

     の日に焼けた、眼鼻立ちのあざやかな、濃い口髭のある男であった。

             明子は既に仏蘭西語とダンスの教育を受けていた。
                                                                                                   b0036764_21195697.jpg
         
            もっと続けて踊りましょうか? ノン、メルシ。 明子は息をはずませて答えた。

       仏蘭西の海軍将校は、明子と食卓のひとつへ行って、一緒にアイスクリームのをとった。

            いビロウドの衣装を着けたドイツ人らしい若い女が傍を通った時、明子はこう云った。

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    西の女の方はほんとうに御美しうございますこと。

          海軍将校は、この言葉を聞くと、思いの外真面目に首を振った。

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        の女の方も美しいです。殊にあなたなぞは・・。

              その儘すぐにの舞踏会へも出られます。

   そうしたら皆が驚くでしょう。 ワツトオのの中の御姫様のようですから。

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                 明子は、ワツトオを知らなかった。・・・・・

                         わたくしも巴里の舞踏会へ行ってみとうございますわ。

        舞踏会はみんな同じです。巴里ももここも・・・。
      
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            その時、明子と海軍将校とは云い合わせたように話を止めて、
 
      の針葉樹を圧している夜空の方へ眼をやった。

             其処には、丁度の花火が、蜘蛛手に闇を引きながら、

         将にえようとする所であった。
                     
                              20150713130503a72_convert_20150909183158.jpg

                                                                                
               仏蘭西の将校は、明子にを貸した儘、庭園の上の星月夜へ黙然と眼を注いでいた。

         御国の事を思つていらっしやるのでしょう。

             すると海軍将校はあいかはらずを含んだ眼で、

          かに明子の方へ降り返った。

              そうして、のように首を振ってみせた。

           でも、何か考えていらっしゃるようでございますわ。 何だか当てて御覧なさい。

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    私はの事を考えていたのです。我々のvieヴィのような花火の事を・・・。

                  花火2

            大正七年の秋であった。 明子は一面識のある小説家と、

               偶然汽車の中で一緒になった。

                           白菊9

            青年はその時網棚の上に、知人へ贈るべき菊の花束を載せておいた。

   すると、当年の明子、今のH夫人は、の花を見る度に思い出す話があると云って、

        詳しく彼に、鹿の舞踏会の思い出を話して聞かせた。              

           話が終った時、青年は何気なく、夫人にこう質問した。

          はその仏蘭西の海軍将校のをご存知ではございませんか。

       夫人は思いがけないをした。

         存じておりますとも。Julian Viaud と仰る方でございました。

        では、Loti だったのですね。

     あの『お夫人』を書いたピエル・ロティだったのでございますね。

        青年は愉快なを感じていた。

         H夫人は、そうに青年の顔を見ながら、

       何度もこうつぶやくばかりであった。

     、ロティと仰るかたではございませんよ。ジュリアン・ヴィオと仰る方でございますよ・・・。
               
                                   『舞踏会』

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          歳時記
                  saison de karo 

            月光をんで発光体となる   山崎青史

              154863979_624_v1442486590_convert_20150919151521.jpg                                
           
  ある晩のこと、 ドクトルがぐっすり寝入っていると、誰かがと窓をたたきました。

         ドクトルは窓を開けて言いました。 かな。

      チャペック 『いながいドクトルの話』

            妖精1
                                                                         
      来て、来て、けてちょうだい。 そこにいるのは誰かね。

  わたし、の声よ。  いま、行きますよ。

    ドクトルはいそいで服を着、家の前に立ちました。すると、 あたしの後ろについてきて・・・。

  々しい、見えない声がすすり泣くように言いました。 

            月はき、その光は夜空に凍り付いているようでした。 
  
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        よ、ドクトル、こっちよ。

      ドクトルは長い間道を歩き、やがて谷間の辺にでました。

          そこにいるのは誰だね。どこかむのかね。

       すると、地面の上の明るいものが、声で言うのです。

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  わたしはの精のルサカなの。姉妹たちと踊っていたら、につまずいたのね、きっと。

      もう、立ち上がることもできませんの。 足がとても、とてもいの・・・。

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      そうかい、お嬢さん。ドクトルは言いました。 たぶん、骨折、つまりの骨が折れたのだろうね。

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    それで、あんたはこの谷で週末になるとダンスしているたちのひとりというわけだね。

     たちをダンスの輪にひっぱりこんでは、

 息がえるまで躍らせるという・・・。

         それが悪いことだって、あんたにはわかっているかな?

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     、ドクトル。 妖精はうめきました。

   あたしの足が、どんなにいか、わかってらっしゃるのかしら。 わからないものかね。骨折はいものだ。

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     ドクトルはもうも骨折の治療をしたことがありました。でも、

        今度は違いました。だって、妖精の体は光でできているんですからね。

     の糸で包帯をしようとすると、

       ルサカは体をふるわせて、 、そんなナワみたいなもので・・・。

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      折れた足をの花びらで固定しようとすれば、

        まるで固いを押し付けられているみたいだワ、と泣き出す始末。

     そこで、ドクトルは、カゲロウの羽の上のの光をつまみ取って添え木をつくり、

         月の光のつくる虹が七色に分かれた、そのいちばんい光の筋で結んでやりました。

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     さあ、お嬢さん、足の折れたところがくっつくまで、かにしていなければいけませんよ。

       でもね、どうして君たちはこんな処にくすぶっているのかな。

    以前ここにいた妖精たちは、みんなもっといいをさがして、

    出て行ったというのに。  に? 妖精は聞きました。

          映画に出てるんだよ。映画の中で踊りを踊るんだ。

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                   ディズニーピクチュアフィギュアより                                    
           映画の中で踊っている連中のりときたら、たいそうなものさ。ドレスに化粧品。

           あんたの着ているような流行おくれの服なんか、着ちゃいないよ。

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            失礼ね。あたしの服はの光でできているのよ。

             いまじゃ、ドレスのは変わったからね。

 さあ、もう夜がけるよ。映画のことは考えてごらん。

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            それから、ドクトルは妖精の姿を見ていません。

       には、ほかのいたずらものたちもいなくなりました。

           きっと、映画に出るようになったんでしょうね。

             妖精2

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        ドクトルはそっとをつむって言いました。

     よく注意してみてごらんなさい。  映画館では光を消して、にしないとなにもみえませんね。
 
           スクリーンの中の人に、ることはできないでしょう?

        体がでできているからなんです。

          『いながいドクトルの話』

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