歳時記

             saison de karo

          
                          もがりやあーい  上田五千石

                           風3


                先生が云いました。

                    みなさんのおが一人ふえました。

                       そこにいる高田三郎さんです。

                           そのかたのお父さんは、こんど会社のご用で上のの入り口へ

                       おいでになっておられるのです。

                    みなさんは学校で勉強の時も、拾いやとりに行く時も、

                       高田さんをさそうようにしなければいけません。

                                                      宮沢賢治  『の又三郎』
                            
                                   
                                     風4

                  
                            そのこどもは、ちゃんとひざにをおいて、腰掛に座っていました。

                            ぜんたいに、その形からが実におかしいのでした。

                            
                                       67759fbb1b62e6b21d6aae16dbb3d4b2.jpg


                       へんてこなねずみいろのの上着を着て、

                      をかぶって、

                  い半ズボンをはいて、

                       髪の毛は茶色でした。

                            それに、い皮の半靴をはいていたのです。


                     P1250822_convert_20151028185444.jpg



               次の、空はよく晴れて、川はさらさら鳴りました。

                     一郎は嘉助と佐太郎と悦治をさそって、いっしょに三郎のうちのほうへ行きました。

                           、みんな来たかい。

                                 三郎の呼ぶがしました。


                                   taneyama12.jpg
                                     

                 又三郎はを見あげているのです。  

                      ねずみ色の上着の上にのマントを着ているのです。

                             それから光るガラスのをはいているのです。

                      又三郎の肩には栗の木の影がく落ちています。

               又三郎の影は、またく草に落ちています。
 
                                  IMG_38771_convert_20151028002227.jpg


                       そしてどんどんが吹いているのです。

                     又三郎は笑いもしなければ物も言いません。

                       ただ小さなくちびるを強そうに結んだままって空を見ています。

                     いきなり又三郎はひらっとびあがりました。

                        ガラスのマントがぎらぎらりました。                


                            風1


                               どっどど どどうど どどうど どう

                       青いも吹きとばせ


                                                     鬚ィ・廟convert_20151027232045


                           karin026.jpg
                                                    

                       すっぱいも吹きとばせ

                                  どっどど どどうど どどうど どう

                       どっどど どどうど どどうど どう


                  螯也イセ・狙convert_20150919192142


                              風2

                    
                   先生は云いました。

                          高田さんは、きのう、お父さんといっしょに、もうへ行きました。

                   日曜なので、皆さんにご挨拶するひまがなかったのです。

                          むこうにはおさんもおられるのですから・・・。

                          
                   宿直室のほうで、何かごとごと鳴る音がしました。 

                           はまだ止まず、窓ガラスは雨つぶのためにりながら、

                   また、がたがた鳴りました。
                                                            『の又三郎』


                                                81b8eef3eb72c978c205fdd1480f9c33.jpg


              は究極の小数者。 彼は他の人と違うことを恐れません。

                   そして、たちは、彼をまっすぐに受け入れます。 それがしい・・・。
                                                                        カロ


                        Winter.jpg

                 
スポンサーサイト
 

       歳時記

               saison de karo



                           の道たき馬に蹤いてゆく  柿本多映 

                         逋ス縺・ヲャ・狙convert_20151016154050


          白い馬5


             
                    昔あるところに貧しき百姓あり。はなくて美しきあり。また一匹のを養う。

                                                             柳田国男   『物語』



                                  遠野3


                             201210152334504f0s_convert_20151024142252.jpg


                                             
                                                 20121015233021937s_convert_20151022135446.jpg
                                                                遠野市 伝承園                                                       

              娘この馬をし、ついに馬と夫婦になれり。

                    ある父はこのことを知りて、馬を連れだしての木に下げて殺したり。

                                                              

                           20121015233449a13s_convert_20151024142226.jpg
                                                  

                 娘はこのことを知り、しみて桑の木の下に行き、

                    死したる馬のにすがりて泣きいたりしを、

               父はこれを憎みて、斧をもって馬のを切り落せしに、

                    たちまち娘はその首に乗りたるまま天にり去れり。

                                                             『物語』
                                                 鬥ャ・狙convert_20151024201539
                                                
                                              驕驥趣シ廟convert_20151024151702
                         

            遠野1
                   

               というは、このことより成りたる神なり。

                  馬をつり下げたるの枝にてその神の像をつくる。

                     もとにてつくりしは山口郷の大同にあり。これをとす。


                                             遠野2


                        また、のちにつくりしは山崎郷の在家権十郎なる家にありしが、

                           その家、今は絶えてのゆくえを知らず。
                                                                『物語』                   

                   20121015233449a5es_convert_20151023003328.jpg                                       

                                   遠野4  



                、山間の農村では長男以外は妻帯できず、

                   一生、厩舎ので寝起きし、労働力として生きた次男三男・・・もありました。

                        の恋はショッキングですが、

                          婚姻をゆるされない人々の悲恋を幻想に託したなのかも知れません。

                                                                         カロ
                        
                                                             
                                                       逋ス縺・ヲャ・点convert_20151024202707
                            
                                                              
   

      歳時記

              saison de karo 


                                 沁み透るとはにもブラームス  本橋仁



                   14-52_convert_20150910194139.jpg
                                   ブラームス2                                                                                                                                                                                                 
                              ・・・。 いとど・・・とは、 かまどうまのことです。

                                 けれど、ここでは、ブラームスが、(とても)心に沁み透る、と

                                               詠ってもいるようですネ。  
                                                                      カロ


                                       DSC02949.jpg
                                                                                                                  
                 

                       起きると、彼女はドアの下にが入っているのを見つけた。

                              十一月のみ切った空にふたたび太陽が姿をあらわして、

                       部屋中をあたたかい光と影とでたしていた。

                                                    サガン 『ブラームスはお好き』


                               a0291941_11294054.jpg

                                                          ブラームス4

                                                      フランソワーズ・サガン     


                                     ブラームス10


     繝悶Λ繝シ繝繧ケ・托シ狙convert_20150909161209
                                                                   



                    六時にプレイエル・ホールでとてもいい音楽会があります。と、シモンは書いていた。

                        はお好きですか? 昨日は失礼しました。

                              ポールはんだ。


                                                 繝悶Λ繝シ繝繧ケ・托シ農convert_20150909161147
                                                    少年時代のブラームスはやさしい美形。



                      彼女は二行目の、はお好きですか?に微笑んだのだ。

                     それは、彼女が十七くらいの時、男の子たちが彼女にいたのと同じ種類の質問だった。

                            ・・・・彼女はが好きだろうか。
                                                 

                           美術館 グウェン・ジョン 1876~1939 1924 convalescent病み上がり


                       シモンに会うために行くのじゃなくて、

                   を聴くために行くのだわ。 いいつぶしだわ。

                                                    繝悶Λ繝シ繝繧ケ・托シ点convert_20150909160955
                                                               

                    六時、ポールはひとごみにまぎれて身動きができなかった。

                            シモンはって切符を差し出した。

 
                                ポールは言った。

                  わたし、が好きかどうかわかりませんでしたの。

                            ぼくの方は、あなたがいらしゃるかどうかわかりませんでした。

                                     シモンは言った。

                                                                『ブラームスはお好き』

                             f09aad86.jpg


            maxresdefault.jpg


                                                          ブラームス9


                     ポールとシモンの恋がに乗って始まります。

                       ?  がどこにもいないって?   今さっきまでいたんですが、

                           どこかに飛んでいったみたい・・・・。
                                                        カロ


                                                     ブラームス1
                                                                
                    
 

              歳時記
                       saison de karo 

                                                                   
 
                               変らざるもの何ならん薫る   小串輝子


                          逋ス闖奇シ点convert_20150909164806

                                                     
                           
             明治十九年十一月三日のであった。

                       当時十七歳だった ・・・家の令嬢明子は、父親と一緒に、鹿の階段を上っていった。 
                                      

            明るい瓦斯の光に照らされた、幅の広い階段の両側には、

                     大輪のの花が、三重の垣を作っていた。

                           菊は、うす、濃い色、一番前のが真っな花びらを流しているのであった。                      
                                
                階段の上の舞踏室からは、もう陽気な管弦楽の音が聞こえてきた。

                                明子が正式な舞踏会に臨むのは、がはじめてであった。

                                                               芥川龍之介  『舞踏会』


                                  白菊1
            

 
                 舞踏室の中にも、いたるところにの花が美しく咲き乱れていた。  

                       見知らぬ仏蘭西の海軍が、何処からか静かに歩み寄ってきた。

                                    そして丁寧に会釈をした。                         

                       「いっしょにってはくださいませんか。」・・・

                       明子は、その将校と、「美しく青きダニュウブ」のワルツを踊った。

                       の日に焼けた、眼鼻立ちのあざやかな、濃い口髭のある男であった。

                             明子は既に仏蘭西語とダンスの教育を受けていた。

                                                         


                                           b0036764_21195697.jpg

         
                      「もっと続けて踊りましょうか?」

                            「ノン、メルシ。」 明子は息をはずませて答えた。

             仏蘭西の海軍将校は、明子と食卓のひとつへ行って、一緒にアイスクリームのをとった。

                        いビロウドの衣装を着けたドイツ人らしい若い女が傍を通った時、

                                   明子はこう云った。


                  d0057463_2258377_convert_20150802015816.jpg


                                  
                                  「西の女の方はほんとうに御美しうございますこと。」

             海軍将校は、この言葉を聞くと、思いの外真面目に首を振った。


                                                     geisha_m.jpg


                   「の女の方も美しいです。殊にあなたなぞは・・・。

                       その儘すぐにの舞踏会へも出られます。

                   そうしたら皆が驚くでしょう。 ワツトオのの中の御姫様のようですから。」


                             1961176.jpg



                    c31b6fcd_convert_20150630050150.jpg
                                                          

                            明子は、ワツトオを知らなかった。・・・・・

                         「わたくしも巴里の舞踏会へ行ってみとうございますわ。」

                     「舞踏会はみんな同じです。巴里ももここも・・・。」

      
                                      photo24_convert_20150909160857.jpg

                              
                                                      白菊8
                                                                                 

                           その時、明子と海軍将校とは云い合わせたように話を止めて、
 
                              の針葉樹を圧している夜空の方へ眼をやった。

                           其処には、丁度の花火が、蜘蛛手に闇を引きながら、

                               将にえようとする所であった。
                     
                                                              20150713130503a72_convert_20150909183158.jpg

                                                                                    
                    仏蘭西の将校は、明子にを貸した儘、庭園の上の星月夜へ黙然と眼を注いでいた。

                         「御国の事を思つていらっしやるのでしょう。」

                            すると海軍将校はあいかはらずを含んだ眼で、

                                 かに明子の方へ降り返った。

                                  そうして、のように首を振ってみせた。

                             「でも、何か考えていらっしゃるようでございますわ。」

                        「何だか当てて御覧なさい。」



                            morisot_ball00_convert_20150802005014.jpg

                          
             「私はの事を考えていたのです。

                            我々のvieヴィのような花火の事を・・・。」


                         花火2



                           大正七年の秋であった。

                  明子は一面識のある小説家と、

                             偶然汽車の中で一緒になった。


                                     白菊9


                 青年はその時網棚の上に、知人へ贈るべき菊の花束を載せておいた。

                          すると、当年の明子、今のH夫人は、

                     の花を見る度に思い出す話があると云って、

                   詳しく彼に、鹿の舞踏会の思い出を話して聞かせた。              


                         話が終った時、青年は何気なく、夫人にこう質問した。

                              「はその仏蘭西の海軍将校のをご存知ではございませんか。」

                        夫人は思いがけないをした。

                           「存じておりますとも。Julian Viaud と仰る方でございました。」

                        「では、Loti だったのですね。

                    あの『お夫人』を書いたピエル・ロティだったのでございますね。」

                      青年は愉快なを感じていた。

                  H夫人は、そうに青年の顔を見ながら、

                      何度もこうつぶやくばかりであった。

                           「、ロティと仰るかたではございませんよ。

                                 ジュリアン・ヴィオと仰る方でございますよ・・・。」
               

                                                           『舞踏会』


                                         闃ア轣ォ・狙convert_20150703045525
                                                                  
          
 

          歳時記

                  saison de karo 



                           月光をんで発光体となる   山崎青史


                                154863979_624_v1442486590_convert_20150919151521.jpg

                                 
           
                       ある晩のこと、 ドクトルがぐっすり寝入っていると、

                   誰かがと窓をたたきました。

               ドクトルは窓を開けて言いました。

                  かな。

                                                   チャペック 『いながいドクトルの話』


                    妖精1
                                                                           

                     来て、来て、けてちょうだい。
                           そこにいるのは誰かね。

                               わたし、の声よ。来て、早く。
                                    いま、行きますよ。

                                         ドクトルはいそいで服を着、家の前に立ちました。すると、

                                    あたしの後ろについてきて・・・。

                            々しい、見えない声がすすり泣くように言いました。

            月はき、その光は夜空に凍り付いているようでした。 
  

            d0066031_21521273_convert_20150920213202.jpg
                                                                

                                        繝峨け繝医Ν・狙convert_20150919030130


               
                よ、ドクトル、こっちよ。

                     ドクトルは長い間道を歩き、やがて谷間の辺にでました。

                          何かが光っていました。

                              そこにいるのは誰だね。どこかむのかね。

                    すると、地面の上の明るいものが、声で言うのです。


     20110118_1743879.jpg

                            Ophelia-OdilionRedon_convert_20111125211922_convert_20150920025524.jpg

                                                     
                                 わたしはの精のルサカなの。

                           姉妹たちと踊っていたら、につまずいたのね、きっと。

                    もう、立ち上がることもできませんの。

            足がとても、とてもいの・・・。


            繧キ繝阪ム繝ォ・托シ假シ呻シ呎怦譏弱°繧翫・霈ェ闊槭Μ繝・convert_20150919192101

            
                        そうかい、お嬢さん。ドクトルは言いました。

                   たぶん、骨折、つまりの骨が折れたのだろうね。


                                  ブレイク

                             

            それで、あんたはこの谷で週末になるとダンスしているたちのひとりというわけだね。

                 たちをダンスの輪にひっぱりこんでは、

                     息がえるまで躍らせるという・・・。

                  それが悪いことだって、あんたにはわかっているかな?


                                     061-b41bd-thumbnail2_convert_20150920234726.jpg


                 、ドクトル。

                   妖精はうめきました。

                あたしの足が、どんなにいか、わかってらっしゃるのかしら。

             わからないものかね。骨折はいものだ。


                                      妖精5



            ドクトルはもうも骨折の治療をしたことがありました。でも、

                    今度は違いました。だって、妖精の体は光でできているんですからね。

            の糸で包帯をしようとすると、

                   ルサカは体をふるわせて、 、そんなナワみたいなもので・・・。

                                         f0302628_1626404.jpg
                                                                               

            折れた足をの花びらで固定しようとすれば、

                     まるで固いを押し付けられているみたいだワ、と泣き出す始末。

                         そこで、ドクトルは、

                  カゲロウの羽の上のの光をつまみ取って添え木をつくり、

            月の光のつくる虹が七色に分かれた、そのいちばんい光の筋で結んでやりました。


                            _DSC6483_convert_20150920214259.jpg


                                                  ad00a423bb5fa72b891d99a57a012826.jpg

                                                 

            さあ、お嬢さん、足の折れたところがくっつくまで、かにしていなければいけませんよ。

                  でもね、どうして君たちはこんな処にくすぶっているのかな。

            以前ここにいた妖精たちは、みんなもっといいをさがして、

                  出て行ったというのに。
 
            に? 妖精は聞きました。

                  映画に出てるんだよ。映画の中で踊りを踊るんだ。
                             mede-udf111005L.jpg
                        ディズニーピクチュアフィギュアより                                    


                         映画の中で踊っている連中のりときたら、たいそうなものさ。ドレスに化粧品。

                               あんたの着ているような流行おくれの服なんか、着ちゃいないよ。


                                                         3b2404ee8dfdae2edbfa0c4e04358fbf-600x281.jpg
                             
                           失礼ね。あたしの服はの光でできているのよ。

                       いまじゃ、ドレスのは変わったからね。

                さあ、もう夜がけるよ。映画のことは考えてごらん。

                                   E0810124270_1080_960.jpg


                    それから、ドクトルは妖精の姿を見ていません。

            には、ほかのいたずらものたちもいなくなりました。

                             きっと、映画に出るようになったんでしょうね。


                    妖精2
                                          螯也イセ・点convert_20150920005359


               ドクトルはそっとをつむって言いました。

                           よく注意してみてごらんなさい。

                      映画館では光を消して、にしないとなにもみえませんね。
 
                  スクリーンの中の人に、ることはできないでしょう?

                               体がでできているからなんです。

                                                       『いながいドクトルの話』


                                             db649dc4cfb36cc49aab44adb54731c6_convert_20150920235215.jpg