歳時記

                saison de karo 


                              帯をしめ流を思ひをり  飯島晴子
                                   

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                    の音がきびしくなった。

                    聡子の中で、炉の戸が開かれたように火勢が増して、

                    ふしぎなが立ち上がって、双の手は清顕のを押さえた。

                    その唇は清顕の唇から離れなかった。

                                                             三島由紀夫 『春の雪』


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               清顕はどうやって女のを解くものか知らなかった。

               ・・・お太鼓がに逆らった。


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               そこをやみくもに解こうとすると、聡子のがうしろへ向かってきて、

               清顕のの動きに強く抗しようとしながら、
 
               微妙に助けた。


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               二人の指はのまわりで煩瑣に絡み合い、

               やがて帯留めが解かれると、

               は低い滝音を走らせて急激に前へ弾けた。

               聡子は一言も、言葉に出していけないとは言わなかった。


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              ふたりは畳に横たわって、のはげしい音のよみがえった天井へ目を向けていた。

              彼等の胸のときめきはなかなかまらず、

              何かがわったことさえ認めたがらない昂揚のうちにいた。

                                                             『春の雪』  

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                              核心部分は思うところあっていたしました。

                                 もっと・・・の方は本編をどうぞ。   カロ


 
                                      180639715_624_v1434316258_convert_20150623003157.jpg
                                     
               
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          歳時記

               saison de karo 119


                                   は死者にみじかし柿の花    藺草慶子 

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               「の花が好きなひとは、に死ぬっていうけれども、本当かしら。」

                      今日もおさまは、私の畑仕事をじっと見ていらして、ふいとそんな事をおっしゃった。

                                                      太宰治 『


              私はっておナスに水をやっていた。 


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                       間もない頃、没落貴族の母娘、「お母様」と「私」は、伊豆の山荘で

                                             ままごとのような生活を営んでいる。
                                  
                                       滅びゆく階級を負ったの会話・・・。  


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                    「私はの花が好きなんだけれども、ここのお庭には、一本もないのね。」
           
                           おさまは、また、しずかにおっしゃる。

                                                    
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                          「が、たくさんあるじゃないの。」

                            私は、わざと、つっけんどんな口調で言った。

                         「あれは、きらいなの。の花は、たいてい好きだけど、あれは、おきゃんすぎて。」


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                                    img_13 (2)

                                       

                         「私ならがいいな。だけど、あれは四季咲きだから、

                 薔薇の好きなひとは、
                         
                      に死んで、に死んで、に死んで、に死んで、

                                       四度も死に直さなければいけないの?」

                             二人、った。
                                                      
                          ・托シ撰シ舌€€・托シ狙convert_20140628214641 
                                                              

                        「ちょっと休まない? したいことがあるの・・・・。

                           叔父さまからおたよりがあってね。・・・・・

                      ・・・もう、私たちのお金がなんにもなくなってしまったんだって。」

     「貧乏になって、お金がなくなったら、私たちのを売ったらいいじゃないの。

                        このおも売ってしまったらいいじゃないの。」   
                                                        
                                                              『


                                                
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                                   帽子1   
                                                        
                                             
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                                                            の花
                                                                                                                        
  


        歳時記

                saison de karo 118


                             夏山の大きなを抱きに行く   片岡資郎


                   山10


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                        の広い縁を目深に下げた一人のの中から出て、

                                 山道を歩いて行った。                                   

                             
                           人気のないは、なんともいえないけさだった。


                          やがて、絶え間ない音楽と入り乱れた声が、のように響いてきた。

                       小さな急な坂を越すと、そこはの町のであった。

                                                         ヘルマン・ヘッセ   『』   


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                                          無数の屋台でがわめきながら商品を売っていた。
                                       

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                                 ソ^セージ


                    たちは金メッキのラッパを吹き、

                  肉屋は煮えたつおおきなからほやほやのソーセージをすくいあげた。
                                                       
                      森から来た男はそれをながめた。

                           彼はどこにも立ち止まらなかった。

                              
                              コッヘム
                                                           

                 中心のに出た。

                      突然、彼は近くで何かが目のくらむほどるくきらめくのを見た。

                            まるでがその一点に集中されたようであった。


                                  山9

            やま


                      それは露店にかかっている大きなだった。

                  そこには、大きいのや小さいのや、卵型のや、吊るしや、手もあった。

                 男は、求めるものを見つけたように、立ち止まった。


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                     を覗き込んでいたたちのひとりが言った。

                「ああ、私の色で、ひざにとどくほど長ければいいんだけれど・・・。」


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               はぎょっとした。鏡の中に、見知らぬが立っていたからだ。

                「お前さん、ほんとにそう願うのかい。」
                     
                  その時、 もう一人のが言った。

                          「わたしは国中で、いちばん身軽なり子になりたいの。」

                  よそのは帽子の縁を上げた。彼は微笑みながらこう言った。

          「それ、お前さんたち、もうしがったものを持っているよ。」  
                                                      
                     たちは急いでを見た。

                       最初の娘はひざまでとどくふさふさした色の巻毛を授かっていた。


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                  次の娘は、突然、赤い皮の靴をはいて、子鹿のようなの上に立っていた。

 
                            山6


               さあ、広場は大騒ぎになった。みんながい事を口にした。

                  それはすべて本当になった。                                       
               
                      を願った者、大きな宿屋をごと手にいれた者、を治した者、

                           い事がかなった同士は、町をそぞろ歩いた。

                          なくなった孫をもう一度このに抱きたい、と願ったおばあさんのところに、

                     い馬に乗ったが駆けてきた。


                                                  シャガール

                山1

                                                   

                  ついに、この町でいごとをしなかったのは、たったふたりきりになった。

                   それは、ふたりので、

                   街はずれの古い家の部屋で、

                 ひとりは部屋の真中に立ってを弾き、

                     もうひとりは部屋の隅に腰かけ、すっかりき入っていた。


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                  家主が戸をたたいてこう言った。
               
                「悪いことは云わない。早く広場へ行くんだ。」

                   ふたりのは窓の外が騒がしいのに気付いた。

                     ふたりは外へ出ていった。

                         鏡屋の前に見知らぬが立っていた。


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                   「君たちはい事を急がないんだね。 わたしはもう出かけるところだった。

                     しいものを言いたまえ。遠慮はいらないよ。」


                    ヴァイオリン弾きは眼を閉じて考えた。  
                                       
                「がひとつ欲しい。
                        
                  がいくら騒いでも、騒ぎがぼくのところまで届かないように、すばらしくけるのが・・・・。」


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               すると、彼は見事なヴァイオリンを手に持っていた。

                  彼はそれをあごに当てるとき始めた。

                  それを耳にした者は、みな立ち止まって、な目をした。

                   しかし、弾きは、みごとに弾くにつれ、目に見えないものに引き上げられ、

                    空中にえていった。


                                             vaiorinn



                 「では、は、何を願うかね?」  

                男は最後のに聞いた。

                  「あなたは、ぼくから弾きまで奪ってしまった。

                   ぼくは、聴くことと観ることのほか、人生に何のみもない。

                    そして、なものを考えていたいだけだ。

                       だから、ぼくはになりたい。

                        いただきがの上にそびえるほど高い山に。」


                                山5



                   すると、地下がとどろきはじめ、あらゆるものがれはじめた。

                          人々は、町の後ろに大きな山が、の中までもりあがるのを見た。


                     山2



                        彼らが新しいの岩々を見上げると、

                      そのずっと高いところを、あの見知らぬが、去ってゆくのが見えた。

                                                            『』   

                          

                                          無題


                                                                                      
                 
   

              歳時記

                        saison de karo  117



                               欺かぬ野ばらのが浮かびたる こうのこうき 


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                           きな国と、それよりはすこしさな国とが隣り合っていました。
                           
                           当座、その二つの国の間には、

                           なにごとも起こらずでありました。

                           ここは都から遠いであります。

                                                          小川未明 『』   


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                        そこには両方の国から、ただ一人ずつのが派遣されて、

                              国境を定めたを守っていました。


                                  
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                           大きな国の兵士はでありました。

                          そうして、小さな国の兵士はでありました。

                                                  
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                            始め、二人はろくろく物も言いませんでしたけれど、

                                いつしかしになってしまいました。

                                    他に話をする相手もなく退屈であったからであります。    

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                                   国境には、一株のがしげっていました。

                                                早くからみつばちが飛んで来ました。

                                                             1012b.jpg                                               
                                            
                              のどかな昼ごろ、二人は向かい合って将棋を差していました。

                                      
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                                             青年も老人も、いたっていい人でありました。

                                       はこずえの上で鳴いていました。

                              いばらの花からは、よいりを送ってきました。


                                       野ばら5

                                                               DSC_1764_convert_20150408170906.jpg


                    はやはりその国にもあったのです。
 
                         寒くなると、老人はの方を恋しがりました。

                              「早くひまをもらいたいものだ。」 老人は云いました。 


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                    「あなたがおりになれば、知らぬ人が代わりに来るでしょう。

                            どうか、もうしばらくいてください。そのうちにが来ます。」 青年は云いました。

                               野ばら2

                         やがてが来ました。その頃、二つの国は何かの利益問題からを始めました。

                               二人はの間柄になったのです。

                         それは、いかにも不思議なことに思われました。


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                            「さあ、お前さんとわたしは今日からどうしになったのだ。

                        わたしはこんなに老いぼれていても少佐だから、

                    私の首をもってゆけば、あなたは出世できる・・・。」 老人は云いました。
                                                    

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                                                 はあきれた顔をして、

                                           「何を云われますか。

                                     どうしてあなたとわたしがどうしでしょう。

                             わたしのは、ほかになければなりません。・・・」


                                    青年は云い残して、ってしまいました。

                                                   野ばら11

                                        はただ一人取り残されました。
 
                             の花が咲いて、みつばちが群がっています。

                        老人は青年の身をじていました。

                                        野ばら9

                                                野ばら01

                        
                              ある日のこと、そこをが通りました。
 
                          老人は戦争についてたずねました。

                    旅人は、小さな国が負けて、その国のは皆殺しになって、

                          戦争はわったことを告げました。

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                        老人は、それならも死んだのではないかと思いました。

                         そんなことを気にかけながら、石碑の礎に腰をかけて、うつむいていますと、                         


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                         かなたから、おおぜいの人の来る気配がしました。


                      見ると、の軍隊でありました。

                    馬に乗ってそれをするのは、かのでありました。


                                         野ばら1

                                           


               野ばら4


               やがて、老人の前を通るときに、青年はをして、のにおいをかいだのであります。

                  か云おうとすると、老人は目が覚めました・・・。

                                                      『
                    
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      歳時記
 
           saison de karo 116


                                 春深くエゴン・シーレのかな  飯島晴子


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                                        エゴン・シーレ 歳の自画像 1912


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                                 座る 1911


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                                                              1911
                                                                
                         
                   ざめた少女たちは、

                     ぼくに、彼女らのい足とい靴下止めを見せ、

                       い指で語った。

                       ぼくは、ぼくの彩色したを思った。

                                                      エゴン・シーレ  1910年の日記

                                                                
                                         
                         1911 カラフルな布

                                    な布の少女 1911  


                                 戦う男 1913

                                 戦う 1913 

                                                   

              もはや、肉体は、古典的な美の規範や欲望の対象として描かれるのではなく、

       な欲望の在り方にたえず晒されているというな意識の容器にほかならないものとなっている。

                    水沢勉  『エゴン・シーレ を駆け抜けた鬼才』
                        

                                                        ワリー・ノイツィルの肖像 1912

                                           ワリー・ノイツェルの肖像  1912
 

                                     烏瓜のある自画像1912

                      ほおずきのある自画像 1912


                          「の芸術」というものはない。あるのはただひとつの芸術だ。

                                                       1909年の日記


                                      1911ノイレングバッハの芸術家の家

                            恋人ワリーと暮らしたノイレングバッハの家の室内 1911


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                               ゴッホ アルルの部屋 1989


 ふたりの自画像 1915

                                    ふたりの 1915   



                            とり
            
                    能ふるかぎりのさまざまな顔をしてみぬ

                           き飽きし時

                                         石川啄木  『一握の』  黒井千次によるアレンジ



                    石川啄木 1886~1912

                              石川啄木 詩人 病死 1886~1912

                                                               
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                                      エゴン・シーレ 画家 スペイン風邪で死亡  1990~1918  


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                                  ゴッホ 画家 自殺 1853~1990                                 


               がロア181132

               ガロア  数学者 決闘にて死亡 1811~32


                                               無題

                                       ディーン アクター  事故死  1931~1955



                聖セバスティアヌスとしての自画像

                               セバスティアヌスとしての自画像  1917
                                

 
                 
                             ぼくは死をす。生をすように。  エゴン・シーレ  1910年の日記
                                
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