saison de karo 50

ガーベラの太陽王ルイ十四世 平井照敏


ガーベラ4




    ロバと王様とわたし

                     あしたはみんな死ぬ

五月2


     ロバは飢えて


                 王様は退屈で



五月5



100パーセント7





              わたしは恋で・・・


五月4



五月1


            時は五月  


                       ジャック・プレヴェール 『五月』

       

                                    
ガーベラ2


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saison de karo 49

遠霞ココアは舌に浸み渡る
   横光利一

かすみ3


春kokoa1

横光利一は甘党でした。

好物はお汁粉。

お医者さんにとめられてもやめられなかったとか。

おしるこ



腸に春滴るや粥の味 夏目漱石

春okayu4

夏目漱石は胃弱でした。好んで食べたのはアイスクリーム。

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飯になった時、奥さんはそばにすわっている下女を次へ立たせて、自分で給仕の役をつとめた。

これが表立たない客に対する先生の家のしきたりらしかった。

始めの一二回は私も窮屈を感じたが、度数の重なるにつけ、茶碗を奥さんの前へ出すのが、なんでもなくなった。

「お茶?ご飯?ずいぶんよく食べるのね。」

奥さんのほうでも思い切って遠慮のない事を言うことがあった。

「もうおしまい。あなた近ごろたいへん小食になったのね。」

「小食になったんじゃありません。暑いんで食われないんです。」

奥さんは下女を呼んで食卓を片づけさせたあとへ、改めてアイスクリームと水菓子を運ばせた。

「これは宅でこしらえたのよ。」

用のない奥さんには手製のアイスクリームを客にふるまうだけの余裕があると見えた。

私はそれを二杯かえてもらった。

                              夏目漱石 『こころ』




漱石のお友達、子規はずっと病気でしたが、食欲はとっても旺盛。

春揚げパン
子規のお気に入りはねじり揚げパン。


某日

曇時々照ル

朝飯 ヌク飯三椀 佃煮 梅干 

   牛乳五勺紅茶入 ネジパン形菓子パン一ツ(一ツ一銭)

午飯 イモ粥三椀 松魚ノサシミ 芋 梨一ツ 林檎一ツ 煎餅三枚

間食 枝豆 牛乳五勺紅茶入 ネジパン形菓子一ツ

夕飯 飯一椀半 鰻ノ蒲焼七串 酢牡蠣 キヤべツ 梨一ツ 林檎一切


                                正岡子規 『仰臥漫録』


病気のわりによく食べますネ。・・・・「松魚」はカツオです。



子規2

子規画 いちばん後ろは南瓜かしら・・・。

子規1

松山 子規堂内部

レトロな採光 良い感じ。




日本の春の名残や豆腐汁 正岡子規 

春豆腐汁1

汁もの良いですね。やっぱり朝夕寒い日もあるしね。・・・・カロ

春ココアケーキ

ココアむしケーキ  利一も漱石も子規も喜びそう。

    
saison de karo 48

かの少女きんぽうげ科と思ふなり 中尾壽美子

きんぽうげ2



あなたには好みの女の子のタイプがあるかもしれない。

100パーセント3



例えば足首の細い女の子がいいだとか、やはり目の大きい女の子だなとか、

絶対に指の綺麗な女の子だとか・・・。


100パーセント4



よくわからないけれどゆっくり時間をかけて食事をする女の子にひかれるとか、そんな感じだ。


100パーセント9




「昨日100パーセントの女の子と道ですれちがったんだ」と僕は誰かに言う。



100パーセント1


「ふうん」と彼は答える。「美人だったのかい?」
「いや、そんなわけじゃないんだ」

「じゃあ、好みのタイプだったんだな」
「それが思い出せないんだ 目がどんな形をしていたとか、胸が大きいか小さいかとか、まるで何も覚えていないんだよ」
「変なものだな」
「変なものだよ」

きんぽうげ




「それで・・・」彼は退屈そうに言った。「何かしたのかい、声をかけるとか、あとをついていくとかさ」
「何もしない」と僕は言った。

「ただすれ違っただけさ」


100パーセント5


村上春樹 
『4月の晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて』


この句は

かの少女毛莨科と思ふなり 中尾壽美子

               として発表されたものです。毛莨はきんぽうげです。 カロ

100パーセント6


saison de karo 47

てのひらの上で土筆は苦しめり 上月章

つくし

つくし尽くし・・・つくしフルコース

つくし7

つくしの酢の物


今年の春も、夏美からツクシ摘みに行こうと誘いがかかった。
もうスーパーで軍手やビニール袋も買い揃えたので、次の土日くらいはどうだろうと張り切っていた。
メンバーはいつもの顔ぶれ。



つくし10

つくしの卵とじ




福岡市内を抜けると山地へ入った。
山はどこも春の色に着替えてふわふわと浅緑の皮をかぶっている。
柔らかな絨毯の襞を滑って車は走った。
折重なるようにかぶってくる山がときどき真っ黒に焦げている。山焼きをしたのだ。
春風に焼きおむすびみたいな山がごろんごろんころがって、焦げ目の隙間から青い草が噴き出している。もうしばらくするとワラビやゼンマイが生えてくるのだ。
ワラビ、ゼンマイは採りはじめると欲が出てきりがなくなるので、一泊二日のドライブを兼ねた遊びには向かず、わたしたちにはせいぜいツクシが手頃だった。
通りはコブシの木が一斉に白い花を咲かせているが人通りはほとんどない。


こぶし

わたしたちの車だけがコブシ通りをゆっくり登っていった。この一瞬、ここにあるツクシは全部自分たちのものだ
というあさましい喜びが湧く。

「ツクシ、見えないわねえ。」
例年ならもうそこらじゅうツクシの集会がはじまっているところだ。
作物には裏年というのがあって、ツクシにも当てはまるが、それにしても一本も見当たらないのはどうしたことか・・・。


斜面の下のほうで夏美のかかんでいる姿が見えた。少しはツクシを見つけたのだろう。手にしたビニール袋へ入れている。登志子も雪子もたまに手を動かしている。なんとか明朝の味噌汁の実になるくらいのツクシが採れていた。

夕方、台所で夏美はヒレステーキを焼き、わたしはツクシの卵とじの代わりにほうれん草のごま和えを作った。雪子が蜆の味噌汁を作る。登志子は向うのテーブルで明日の朝の味噌汁に入れるわずかなツクシのハカマを取った。
ハカマを取ったツクシを洗って沸騰した湯の中に入れた。たちまちパッと鍋の中が濃い緑色に変わる。一握りに満たないのに毒薬のような凄い色である。

つくし4

 つくしのお寿司       つくし9つくし3

つくしのパスタ



その晩はツクシこそ食卓にでなかったが、みんな山の夜の静けさに身を投げ出すようにしてくつろいだ。

雪子が持ってきたワインをグラスに注いだ。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「何かあったの?・・・」
夏美はすすり泣いた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



翌朝。
朝食は夏美と雪子が作った。ツクシの味噌汁と眼玉焼きとサラダ、それに途中で買ってきた魚の干物を焼いたのがテーブルに乗った。
食事がすむと帰り仕度になる。
台所の片づけや掃除、布団カバーの洗濯などをすませないといけない。
私は庭の掃除をするためにサンダルを履いて外へ出た。

夜露に湿った草の上にふつふつと浮いて見えるものがある。

ツクシ
だった。
昨日は一本もなかった庭土にびっしりとまるで魔法をかけたようにニョキニョキと頭を出していた。ツクシたちは朝日の下に何か神々しいような針みたいな細い影を流している。

「ツクシの大軍よ!!」

みんな信じられないような顔をして外へ出てきた。

「外の通りはどうかしら。」

舗装路の端にもツクシの頭が並んでいた。

無人の家の玄関や軒下、窓の下の地面にも小さな頭が集まっている。

「何だか、私、拝みたくなってきたわ。」

「何を拝むの。」

「それがわからない。」


                      村田喜代子『土筆女』




つくし8

つくしの砂糖づけ

おなかいっぱい

つくし2
saison de karo 46

書を置いて開かずにあり春炬燵 高浜虚子

こたつ3


「何しとんねん、いま。」
西宮の長男の電話である。
うるさいったらない。

春寒、というのか、早春の宵は膝もうすらさむい。
私は暖房を弱にして、町着のオレンジ色のスーツを脱ぐ。
ついさっきまで、趣味のお花のグループと食事をして帰ってきたばかりである。
やわらかいシルクウールの室内着。
香りは、今夜はジャン・バトウのオードトワレよりも、京都の松栄堂の「芳輪」にしよう。
香炉にくゆらせて、私は和室の炬燵にはいり、その上で手習いをする。

こたつ 香炉1

今夜は

かすみたつ春の山辺は遠けれど吹きくる風は花の香ぞする  在原元方

『古今集』春の巻のうた。

こたつ うめ

漂うお香の良いにおいをかぎ、身にまとう室内着はパステルカラーのあまい水色。ボタンは銀のハート型。
一人ぐらしでも、春には春の服をまといたいではないか。


こたつ ボタン


こたつ ワンピース






『論語』のなかの私の好きなくだり。

「暮春には春服すでに成る。」

孔子の弟子たちが各々一国を指導する夢を語る。
ところが、ひとりの弟子ばかりは、

「私の夢は小さいのです。
春には春服をととのえて若者や童子たちもまじえて川のほとりを春風にふかれながら、 歌って帰りましょう。」と話す。

孔子はため息をもらし、言われた。

「私も同じだよ。」

こたつ なのはな


そこへ、
「何しとんねん、いま。」
五十七になる息子のうるさいことといったら・・・。
「いろいろ考えごとしてますのや。ひとくちでいわれへんし、いうても他人にわからん。」
「・・・・・・。」
            田辺聖子『姥勝手』


ねこ 寝正月3

ゲスト 炬燵ねこちゃん